act.46 目的地参照
「まぁこれはマキナが現れて急遽入った件だしな。本来の目的だった研究者に会う事にしよう」
ここで情報を得られなかったのは正直悔しいが、手掛りがなくなったわけではない。ギルドで受付をしている女性カミラから紹介された研究者がいる。勿論、ここで得られる情報よりは正確さも信頼性も格段に落ちるだろうが、ないよりはいい。
「そうね。振り出しよりはマシよね」
「それじゃ他の場所を探索してバージスに戻ろう」
「その前に、お時間を頂いてよろしいでしょうか?」
目標を新たに部屋を出ようとするイグナールとモニカを制止するマキナ。どうしたんだとイグナールが彼女の振り向きつつ問う。
「はい、ここでは不可能ですが他の研究所でならば何か情報を見つけることが出来るかもしれません」
マキナが示唆しているのはここと同じ研究所がいくつもあると言うことだ。
「本当か⁉ こんな建物が他にもあるって言うのか?」
「はい、ただし私にも所在までは把握しておりません。それと、この研究所以上の設備はないかと思いますので経年による風化や誰かの手が入り荒らされている可能性もあります」
それでも希望には違いない。ならそれを追わない手はない。
「少なくてもいい、可能性があるなら探したい」
「畏まりました。他の研究所の所在を検索してみます」
彼女は再び、机にある複数の突起をカタカタとしだした。純粋な期待で聞こえるその音はなんとも小気味よい。
「検索が完了致しました。こちらをご覧ください」
マキナは体をこちらに向け告げる。手を机に向け、見てくれと案内を出す。そこには地図らしきものが描かれ、いくつもの点が明滅している。
「この点が研究所の場所を表しているのね?」
モニカの質問にはい、と短く答えるマキナ。モニカは自分のカバンから1巻きの羊皮紙を取り出し広げる。彼女が広げたのはイグナール達が使っている安価な地図である。安価であるが故に少し古い。
マキナが示した地図の方が広範囲を表しているが、大きな差異はないように見える。ただモニカの持つ地図はバージスから西の方角は、大きく魔界とだけ書かれ詳細がわからない。
「わかりやすくするため、拡大したします」
そう言ってマキナがカチカチと打ち鳴らすとこちらの持つ地図と同程度のものとなった。なんとも便利な魔法だと感心するイグナール。それとモニカの持つ地図を並べて確認をとることにした。




