act.30 潜入最先端の古代遺跡
イグナール一行は地下研究所の入り口をのぞき込む。入り口の先端は破壊されているが、金属製の梯子が掛かっていて問題なく降りられそうだ。底は明るく光っている。
「……イグナールお先にどうぞ」
あれだけ元気だったモニカはおとなしくなり、イグナールに道を譲る。
「なんだモニカ。もしかして怖いのか?」
「べ、別に怖くないけど! 何があるかわからないのに女の子を先に行かせるつもり?」
「俺は全然構わないが……見えるぞ?」
「な、なにがよ」
「パンツ」
「……最低!」
モニカが顏を朱に染めて丈の短いスカートを抑える。
見られたくないのに何故そこまで無防備なスカートを着用しているのか……いまいち理解出来ないイグナールだった。
「それでは私、モーニカ様、マスターで降りれば良いのではないでしょうか」
マキナの提案にそれよ! と賛成の意を示すモニカ。
「それでは私が先に様子を見て参りますのでしばらくお待ちください。長い間最低限のエネルギーで稼働しておりましたので換気機能の確認を致します」
そう言って穴の中へ吸い込まれるように降りるマキナ。しばらくしてから穴から風が吹き出しマキナの合図の声が聞こえた。その声にモニカが恐る恐る梯子につかまり降りて行く。ある程度の距離を保ってイグナールも続いた。
下に降りたイグナールとモニカは研究所内を見渡し、驚く。一面、丁寧に磨かれた金属面のように光沢があり輝く壁。太陽が届かない地下だと言うのに隅から隅まで照らし出された研究所。全て内装が彼らの想像とは大きく違っていた。
金属製の壁を触りながら感嘆を漏らすイグナ―ル。
マキナの言う研究所と同じものかわからないが、遺跡には朽ち果てたイメージを持っていた。
「地下だと言うからもっと薄暗くてジメジメしたのを想像してた……」
「ここは発見を免れ、低電力とはいえ稼働を続けておりましたので状態が良いのだと推測できます。それではこちらへ」
丁寧にイグナールの言葉に答えを返し、案内するマキナ。銀色に満たされた室内に彼女の黒いメイド服はやっぱり不釣り合いだ。そう思いながら素直に彼女の背中を追っていくイグナール。その後ろからきょろきょろと周りを見渡しながらモニカが続く。
代わり映えせず、目印らしきモノも存在しない廊下を黙々と歩くマキナの後を追う。これだけでもどれだけ巨大な施設かがわかる。
しばらくしてマキナが立ち止まる。
「こちらでございます」
彼女が示す先は壁から一段程の窪みがある。恐らく扉なのだろう。上を見上げると文字らしきものが書かれており、この先の部屋を示しているのだろう。
しかし、イグナールにはわからない文字である。となりでうんうんうなっているモニカの様子からも現代の人間が使用する文字でないことが窺い知れる。




