act.23 戦闘人形
「それは……なんなんだ?」
「私の活動に必要なコアでございます」
「コア?」
聞いたことのない単語に困惑するイグナール。
「たぶん、わかりやすく言うと大きな魔石みたいなものかな。古代技術で作られたね。これだけでもマキナが人じゃないことはわかるでしょう?」
マキナがさっき言ったように、古代技術で作られた人形だとしよう。だが、バージス一帯に未開の遺跡などはなかったはずである。彼女の言う研究所はどこにあるのか、何故彼女は今頃目覚めたのか、何故俺を主人として呼ぶのか……
イグナールの中で無数とも思える疑問が湧きあがってくる。
「ああああもう! いきなりそんなこと言われてもわかんねーよ! 取りあえず今知りたいのは俺に何であんなことをしたかだ!」
イグナールが荒ぶる中、冷静にボタンを留め直し、エプロンを身に着けるマキナ。無表情を一切崩さず平然と答える。
「エネルギー補給のためでございます。本来はもうしばらく観察し判断を下すはずだったのですが、何分エネルギーの枯渇が迫っていましたので、マスター、イグナール様の雷属性の魔力を経口摂取させて頂きました」
「つまりマキナは今、イグナールの魔力で動いてるってことなのよ」
またもやモニカが補足してくれる。
「私たちオートマトンは、マスターから頂いた魔力をエネルギーに活動致します。ですので、イグナール様をマスターとして登録致しました」
「ちょっと待ってくれ、それだとモニカでもよかったってことか?」
一拍置いて冷静にマキナは答える。
「いいえ、魔王軍への強襲を目的として作られた私は戦闘能力に秀でる雷の魔法使い様と共に戦うこと目的とし製造、チューニングされております。故に、イグナール様の魔力でしか活動することが出来ません」
「そういうことか……わけがわからん言葉もあるけど、概ね理解できた」
マキナは雷の魔法使いの魔力でしか動けない、魔王と戦うための人形……
「それじゃ、マキナがいた時代には雷属性の魔法使いは珍しくなかったのか?」
今の時代では無属性を除くと炎、水、風、土の属性以外の魔法使いはいない。だが、マキナの話では雷の魔法使いが存在したとはっきりと言っている。
「申し訳ございません、そう言った情報は私のメモリーに存在致しません」
「そうか……」
この属性を知れる機会だと思ったのにとこぼし、落胆を露わにするイグナール。
「しかし、研究所でアーカイブを参照すれば何か手がかりを得られるかもしれません」




