表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/273

act.18 紫電の射手


「憎き人間め、どこに消えおった……」


 我が子の(かたき)であるイグナールとモニカを探し求め、森の中を歩くヒューマン・スライム。水弾を5発程浮遊させ、臨戦態勢を整えている。


 ガサッ


「そこか! アクアボール!」


 茂みの揺れる音を素早く察知し、1発の水弾を放つ。茂みが弾け飛びその向こう側にモニカの姿が露わになる。彼女は体を震わせ、怯えているようだ。


「見つけたぞ。小癪な小娘め。どうした連れの男はいないのか?」

「い、いや! やめて、許して……イグナール、どうして来てくれないの!」

「はははっ、どうやら見捨てられたようだな! 心配するな、あの男にもきっちり償いをさせてやる」


 ヒューマン・スライムは右手を高らかに上げる。


「さぁ死ね。押しつぶせアクアボ――」

「今よ!」


 ヒューマン・スライムの左側の茂みが揺れ、イグナールが飛び出す。エンチャントも施されていない剣を振り、ヒューマンス・スライムの首を切り裂いた。しかしイグナールは初動に全てを掛けたのか、着地に失敗しヒューマン・スライムの足元に転がる。


「『我に眠りし力よ、我が意思に従え』『揺蕩う水よ、形を成し顕現せよ』」


 すかさずモニカは巨大な水弾を生成する。


「無駄だ!」


 完全に頭と胴を切り離したはずが、空中に浮く首は切断面から植物のツルのような触手を胴体へ伸ばし、繋がる。


「アクアボール!」


 完全に再生し、体勢を立て直すのを阻止するためモニカが巨大な水弾を飛ばす。しかし先程の二の舞、ヒューマン・スライムは片手で水弾を受け止め吸収し始める。


「愚かな奴らだ。これで万策尽きたか!」

「こっちが本命だ! 『我に眠りし力よ、我が意思に従え』」


 転がったままの体勢で右手をヒューマン・スライムへ向ける。バチバチと紫電をまき散らし、光を放つ。


「吹き、飛べ‼」


 果てしない空、虚空へ向けて極大のエネルギーが放たれる。雷鳴を轟かせ、行く道を全て無に帰す加減を知らぬ無慈悲の一撃。


 地から空へと降り注ぐ紫電は、進路上にあったヒューマン・スライムを蒸発させ、空の彼方へと消え去った。紫電の()ち手はその膨大な魔力を消費し、地に転がったまま青い空を見上げ微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ