滝田聡司の告白 28
あれから機材をまとめながら、徹とはいろんなことを話したなあ。
好きなバンドの話とか、曲についての話とか――あいつ自身がなんでベースをやろうと思ったのかとか、なにを考えながら弾いてるのかとか。
紘斗と知り合ったのはいつだったかとか、オレがヘルプに行く前の軽音部の話とか。
あと、一番盛り上がったのが、あのバンドの女性ベーシストがエロ……ゴホン! ま、まあ、それはともかく。
そんな、あいつ個人のことから、めちゃくちゃ下らないことまで、意外と普通に話したよ。
しゃべりまくる紘斗といつも一緒にいるせいか、無口だムッツリだと誤解されがちだけど、案外二人で話せばそうでもなかったな。
まあ、それもさっき言ったように、その後に本番が控えてたからだったかもしれないけど。あと、ムッツリじゃなくてオープンだってのも、残念ながら誤解じゃなかったけれど。
まあ、それはともかくとして――
なんというか、そういうの以外は、実はしっかりしたやつなのかもな、って話を聞いてて思ったな。
軽音部で使ってるシールド――ええっと、アンプとエレキベースとかをつなぐコードのことな。あれも、徹自身の手作りだっていうし。
なんでも、部費が少ないからああいうのはネットとかで調べて、節約の為に自分で作ったんだと。
作り方が分かれば誰でもできるみたいなことを、事も無げに言ってたけど……でもそれだって、一朝一夕でどうにかできるモンじゃないしなあ。
と、いうわけで。そういう面からも、あのマジくっだらねー話の面からしても、ああやっぱ、野郎同士っていうのは気兼ねなくていいな、って思ったんだ。
だって、吹奏楽部の面子にあのときの話の大半だった、馬鹿な方の話題を振ってみろよ。
全員から白い目で見られること確実……って、え? もうそんな風に見られてる?
あ、ええと……。
なんか、その……すみません。
……話を戻してもよろしいでしょうか?
……はい。
うん。
とまあ、そういうことがあったおかげで。
オレの気持ちは、また軽音部側にちょっと傾いたわけだ。
あんなに永田や豊浦のことがあったってのに、人の心ってのはやっぱ、わかんねーな。
どうしても目の前のことに捉えられて、迷っちまう。
そのときの気持ちはそのときになってみねーとわかんねーし、でもそのとき決断したことだって、後から考えたら違ったんじゃないかって思うことも、結構あるもんだし。
だからオレは、両方の本番を終えて、それでどっちにするか考えよう、ってこのとき思ったんだ。
いろんな人間関係や、それに伴った、超くっだらなくて楽しい話ができたとしても――やっぱいい気持ちでドラムが叩けなきゃ、楽器をやってる意味ないからな。
やっぱそこは、音楽系の部活としては譲れないところだろ。
それだったら仮に、どっちを選んだとしても――それはもう、オレ個人の趣味嗜好の範疇だと思ったんだ。
それなら吹奏楽部がいいとか軽音部がいとか、どっちがいいとか悪いとか優れてるとか――もうそういう話じゃないなって、そのとき思ったんだよ。
それが、篤人の言ってた、本当に『やりたいことやる』ってことだと思ったからさ。
楽器をやってるときくらい――そういうしがらみに囚われない、自由な選択ができればって思ったんだ。




