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大きな靴下に瞬間移動!

「今日は何を買うの?」

 キョロキョロと目的の品を探していた私に、一緒に来てくれたクラスメイトで幼馴染みの美春みはるが訊いた。

 ここは学校からの帰り道にあるショッピングセンターの三階。

 生活雑貨や家電、寝具といったさまざまな商品が売られているフロアで、イベントコーナーには、クリスマスのオーナメントやプレゼント用の可愛い雑貨が陳列されていた。

「靴下」

「えっ? 洋服売り場は二階だよ」

「ううん。サンタさんにプレゼントを入れてもらう大きな靴下!」

「ツリーに飾るの?」

「そう! 大きなプレゼントを入れてほしいから!」

「……璃子りこって、まだ、サンタさん、信じてるんだ?」

「サンタさんはいるよ! 私、見たことあるもん!」

「……あっ、そう。でも、どんなプレゼントが欲しいの?」

「今年は、彼氏が欲しいかな」

「……できたら良いね」

「うん! ……あれっ、私が言ってること、おかしい?」

「い、いや、そういうこともないけど、璃子からその発言が出るとは思わなかった」

「そう? でも、私だってピチピチの女子高生なんだから、彼氏の一人や二人くらいいても良いよね?」

「いや、一人だけで良いと思うけど」

「あっ、そうか。それもそうだよね。うんうん、私には何人もの男を手玉に取って翻弄する魔性の女は似合わないよねえ」

「似合わないというより、璃子はなれないと思う」

「そんな~」

 私の本当にがっかりした顔に、美春は大声出して笑った。

「あははは。璃子の不思議ちゃんは、今も健在だね」

「そうかな~? 自分では普通だと思ってるんだけど」

「まあ、私は、昔から璃子のこと知ってるから面白いって思うけど、最近、知り合った人は引くと思うよ」

「うん。それは感じてる」

「あんたねえ……」

 呆れた顔を見せながらも、最後まで買い物につき合ってくれた美春と別れて、私は帰路に着いた。



 私は、いつまでも夢見がちな天然系とか、将来の不安なんて何も感じていない楽天家とか、いろいろ言われる。「電波」とか「いっちゃってる」って言われることもある。でも、私は、自分の感じたことや思ったことをストレートに口や行動に出しているだけで、人からどう思われようが気にしたことない。

 でも、こんな私にだって、悩みの一つや二つ、いえ、五つくらいはあるんだ!

 お母さんの御飯が美味しくないことでしょ!

 お小遣いが少ないことでしょ!

 髪が少し癖毛なことでしょ!

 後は……、そうそう、重大な問題がある! 思っていたより胸が成長しなかったこと! でも、これは遺伝だから仕方がない。

 いやいや、もっと重大な問題がある!

 それは恋をしてしまったことだ。

 相手は、私が所属しているオカルト研究会部長の松山先輩だ。

 あれっ、研究会だから部長じゃなくて会長だったかな?

 いや、そんなことはどうでも良くて、とにかく、松山先輩は、この春に入部した新入部員の私にもいろいろと面白い話を聞かせてくれたし、私が発案した町内のパワースポット探検も一緒に回ってくれた。こんな私の話も真剣に聞いてくれるし、先輩のオカルトに関する豊富な知識に基づいた話はいつも面白かった。

 いつの間にか、今まで感じたことのない「先輩ともっと話がしたい」という感情が生まれていることに気づいた。それが恋だということも何となく分かった。



 ぴゅ~と木枯らしが吹いて、枯れ葉が私の周りでダンスをした。「璃子! 頑張ってプレゼントを先輩に渡すんだ!」って励ましてくれているような気がした。

「佐倉! 佐倉ってば!」

「へっ」

 振り向けば、松山先輩がいた。

「もう、何度、呼び掛けても反応ないんだから!」

「すみません。眠ってた訳じゃないです」

「当たり前だ! 眠りながら歩いてたら危険すぎるだろ!」

「そうですよね」

 松山先輩が大きくため息を吐いた。

「まあ、通常運転と言えば、そうなんだろうけどさあ」

「はい」

 プレゼントは明日渡す予定だったのにどうしよう? 今、渡しちゃおうかな。

「ところで先輩、こんな所でどうしたんですか?」

「いや、家に帰ってるんだけど……。俺の家もこっちの方だって言ってなかったっけ?」

「そう言えば、聞いていたような気もします」

「やれやれ。俺も佐倉と話をしていると面白いから一緒に帰りたいんだけど、佐倉って部活が終わると、いつの間にかいなくなってるもんな」

「いつも考え事してて、気がついたら家に帰り着いていることが多いです」

「ほんと、佐倉の存在自体がオカルトだよ」

「そ、そうですかあ~、へへへ」

「褒めてないから」

 何か良い具合に先輩と話ができているから、やっぱり、今日、渡そう。

「先輩」

 私は、バッグの中から、さっき買ったプレゼントを出して、先輩に差し出した。

「ちょっと早いけど、メリークリスマスです」

「俺に?」

「はい」

「ありがとう。開けて良い?」

「はい」

 先輩が綺麗な包み紙を丁寧に剥がすと、中からクリスマスオーナメントの『大きな靴下』が出て来た。

「靴下?」

「はい。サンタさんにプレゼントを入れてもらう靴下です」

「……俺に今でもプレゼントをくれるサンタっているのかなあ?」

「いますよ! 私、見たことありますから!」

「そ、そうなんだ。じゃあ、今年は、サンタが俺の所にも来てくれるって信じてるよ」

「きっと来ます! だから、その靴下、ちゃんと飾っておいてくださいね!」

「う、うん」

「先輩は、どんなプレゼントが欲しいですか?」

「えっと、……秘密かな」

「そうなんですか? そう言われると知りたいです」

「い、いや、佐倉に言える訳ないよ。佐倉は何が欲しいんだ?」

「私は彼氏が欲しいです!」

「えっ?」

「彼氏ですよ、彼氏!」

「いや、一回、言えば分かるから」

「先輩! 私のサンタさんは、私に彼氏をくれると思いますか?」

「佐倉は誰か好きな人がいるのか?」

「はい」

「そうなんだ」

「私、イブの夜に、サンタさんに頼んで、その好きな人が飾っている『大きな靴下』の中に瞬間移動テレポートするつもりなんです。サンタさんなら瞬間移動テレポートなんて簡単にできますよね?」

 

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