CLIMAX TOGETHER
「山崎イイイイィィィィッッ!!」
会場に、鼓膜を割く叫びが響き渡った。
会場――それは、東京スカイツリーの地下に、秘密裏に建造された『闇闘技場』。
国民のほとんどはその存在を知らない。
そこは、一部の上流階級のみが知る施設。
表の世界では生きられない拳闘士が、日夜、己の命を懸けて鎬を削る闘技場なのだ。
そして…。
先の叫びは、この会場において頂点に君臨する『魔拳王』―加山轟―のもの。
では、その加山と対峙するのは…。
「…チッ!!」
まさに今この瞬間、加山と対峙せし相手―山崎柳震―は、瞬時に身を捻り、突き出されたその拳を躱す。
加山の拳は標的を失い、山崎の後ろの壁に突き刺さった。
爆発音とともに壁は割れ、その上部にまで亀裂は伝播する。
亀裂はさらに観客席にまで伝わり、十数名の観客が加山と山崎の死合場に雪崩れ落ちた。
数名は不自然な体勢で落ちたようで、一瞥した山崎にも、その観客が骨折したことが見て取れる。
…しかし、他の観客は勿論、骨折した観客たちも、対峙した加山と山崎を固唾を呑んで見守っている。
まるで、怪我したことさえ、どうでもいいかのように。
「まったく…異常だな」
ふと呟いた山崎のその言葉が聞こえたのか、加山は唇の端を歪め笑う。
「…みんな、見てェのさ。
『非日常』を。
『神拳王』と『魔拳王』のぶつかり合いを。
つまり…お前と俺の死合を、な」
その言葉を受けた山崎が観客席を見回す。
観客はみな目を剥き歓声を挙げ、思い思の声を上げる。
まるで、アドレナリン中毒者のように。
そんな観客たちを見据え、山崎はため息をついた。
「…まったく、異常だよ。観客も主催者も。そして…お前も」
「ヘッ、自分は異常じゃないってか?よく言うぜ」
嘲笑するように放言した後、加山は拳を腰に備え、深呼吸をし、山崎を見据える。
山崎は知っている。
これは…。
加山の最大の奥義『一撃絶命加山流空手』の構えだ。
なぜ、こんな状況になったのか。
なぜ、加山は自分を殺す気なのか。
…そして、なぜ、自分はここにいるのか。
その疑問を、今は考える暇はない。
山崎は構え、加山を見据えた。
そう、奥義に対抗するために。
「勘違いするなよ、加山。俺は、俺が異常じゃないなんて…言った覚えはないぞ」
……。
…。
―――その瞬間、加山は爆発した。
「ウギャア ヤマ崎マーン!!(悲鳴)」
『一撃絶命加山流空手』の負担に己の体が耐えられなかったのだ。
そして加山の爆発に会場の火器が引火した。
観客がそれを見て叫ぶ。
「ゲェーッ!!会場が爆発するーッ!!」
加山が起こした爆発は、会場と観客もろとも辺り一帯を吹き飛ばした。
―――――
会場の外、加山の自爆を察知して辛くも逃げ切った山崎が、タバコに火をつける。
いずれ通報により警察が駆けつけるだろう。
いやそれより前に野次馬が集まる。
それを避けるため、山崎は既に会場から遠く離れていた。
加山は戦闘中毒者の蔓延る闇闘技場を文字通り闇にしたのだ。
己が身で特攻して。
ありがとう加山!さようなら加山!
「まあ、どうせまたすぐ生き返るんだろうけど」
轟炎を上げる街を眺めてそう思いながら、山崎は夜の闇に紫煙を燻らすのだった。
[CLIMAX TOGETHER/BUCK-TICK]




