表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/19

BEAST・前編

(注:この話はしょーもない爆破オチで終わります)


長野県にある小さな個人商店。

『百武-ももたけ-』と書かれたその店の前に、轟音を立てて大型のバイクが止まる。

店には不釣り合いな二輪を軒先に止め、二輪の主はフルフェイスのメットをかぶったまま、しばし看板を仰ぎ見る。


「久しぶりだな…ここに来るのも」


二輪の主―加山はメットを外しながら、誰に言うでもなくそう呟いた。


――――


「やあ、すまないね加山さん。こんな遠くまで」


席に座った加山に対し、老店主―モモタケ―は穏やかな微笑みを浮かべた。


「なんてことねえよ。相棒と一緒だったからな」


自分が乗ってきたバイクを親指で指しながら、加山は言う。


都内の棲家ヤサから長野県までは少々時間がかかったが、加山にとっては苦にもならない。

たとえ日本を稚内から鹿児島まで移動しようと、愛用のバイクと一緒なら加山は疲労を感じないだろう。


「で、モモタケさん。今回わざわざ俺を呼んだ用事ってのは、なんなんだよ」


店内の駄菓子を一つ口に放り込みながら、加山はモモタケに問うた。


『モモタケ』とは、日本の取引の元締めの一つである。

中でも表沙汰にできない取引の依頼に対して、それをやり遂げる強者を紹介する。

言わば、闇取引ブラックマーケットの仲介業のようなものだ。

モモタケと呼ばれるこの穏やかそうな老人の本名は、誰も知らない。

しかし、無数の闇のコネクションを持つことは間違いない。

山崎も加山も、とある縁からこのモモタケと知り合い、その紹介を請け負うことがあるというわけだ。


とはいえ、山崎も加山もフリーであり、自分たちの矜持もあることはもちろんモモタケも知っている。

プライドや報酬の高い二人に依頼するよりは、なんでも言う事を聞く自分の子飼いに任せた方がモモタケ自身も実入りがいい。

それを踏まえて今、加山に依頼しようとしているという事は、子飼いでは無理な仕事を頼もうとしているわけだ。


「知ってるとは思うけど、俺ァ繊細な仕事には向かないぜ」


駄菓子を二つ手に持ちながら、加山がうそぶく。


「そうでもないと思うけどね…ま、どのみち今回は違うよ」


お茶を淹れ加山の前に出しながら、モモタケは言葉を続ける。


「最近出没する、裏取引の業者ばかりを狙ってる『鬼』…。

 加山さんも知ってるだろ?」


加山はふと思い出す。そういえば、伝手からそんな話を聞いた。

闇取引ばかりを請け負っている強者ばかりが、ここ最近何者かに何人も殺されているのだとか。


誰もその犯人は知らない。

しかし、その神出鬼没さと強さから、いつしかその犯人を『鬼』と呼ぶようになったらしい。


「その話は知ってるが、会ったことはねえよ。

 モモタケさんの手下もやられたのかい」


「まあね。しかしそれは、アレが弱かっただけだよ…。

 加山さんは、会ってみたいかい?『鬼』に」


「鬼、か…まあ、会いたくねえってことはねえけどな」


その答えにモモタケは何も答えず、また優しい笑みを浮かべる。

ふと、会話が途切れる。

その後しばらくして、何かを察したように加山が問うた。


「…そういうことか。

『鬼』の居場所が分かったから、俺にやれってんだな?」


モモタケは優しい笑みを浮かべたままだ。

そしてそれが何を意味するのか、加山は知っている。


「…鬼退治か。いいね、悪かねえな」


そう呟くと、加山は残っている駄菓子を一気に口に放り込んだ。


[BEAST/BUCK-TICK]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ