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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第十章 ナチュラル レッド 4
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第一話 裏と表とⅠ

 もういい。これ以上、コイツ等の会話を聞いてるのは拷問に近い。胸が悪すぎる、VR箇体の中で寝てる俺の頭の血管が切れちまいそうだ。

 セキュリティシステムから撤退、電脳空間を俯瞰するイメージでぐるりと白い世界を"意識"した。

 高ぶった神経を宥めすかしてる最中に通信ノイズ。


『景虎。わしだ。』

 ルナのじいさんか。俺は今、無性に腹が立っててな、返事をすると噛み付くから黙ってる。


『ひとつ、お前に確認しておかねばならんのだ。覚悟のほどをな。

 "N"はその会員の中に有力政治家や国家元首を抱えている。そのために、刑事告発をしても無駄だと考えられている。我々、日本企業側としては、彼らに対応するに、抹殺をもって当たるしかないと考えているが、お前はどうだ。』

「願ったりだ。」

『あくまで法に従えなどと融通の利かぬことを言いだすかと思うていたが、話せるな、小僧。』


「連中は法の目を潜り抜けてしまうんだろう? だったら、こっちも法の目を掻い潜って始末を付けるしかない。合理的だと思うぜ、俺は。」

『そうか。ならば、景虎、まずはゲーム内に存在する伯爵の意識を破壊しろ。ルシフェルというキャラを殺すのだ。復活が叶わない状況で確実に仕留める手段をお前は持っている。そして、脱出の障害となっているフィールドボスを排除し、プレイヤー全員を脱出させろ。脱出用魔法陣に仕掛けを新たに加えてある、あれを通ることで乗っ取りを仕掛けようとしている外部リモートを遮断する。』


 この口ぶりだと、すでに連中の仕掛けた乗っ取りのシステムは解明済みって感じだな。

 さすがに日本企業は優秀だ。喧嘩売った相手が悪かったよ、あの連中は。


『景虎、いよいよ最終段階だ、ぬかりなくいってくれ。

こちらは、リモートの逆探知を行い、殺人ウイルスを送信する手はずが整っている。この人体オークションでプレイヤーを買い入れた何十人かのセレブが即死することになる。我々、日本企業からのメッセージだ、"手出しするとこうなる"とな。同時にネット界隈に今回の真相が一部改編された形で、流出される予定だ。それで奴等はおしまいだ。組織が立ち直ってくるまでにはセキュリティの穴は塞がれているだろう。』


 少なくとも、ゲームで遊んでいるだけで他人に肉体を乗っ取られるなんてことはなくなる。

 独自に機械を仕立てて、無理やり誰かを箇体に沈めるとかの非合法な手段は残されていくんだろうけど。


「じいさん、あんたは大丈夫かい? 奴らは逆恨みしてきそうだが。」

『逆恨みが怖くてヤクザなんぞやっとれるか。覚悟のある者が防波堤となり、暗い世界でせめぎ合っておるからこそ、表の世界は安心して暮らせる場所で在り続けられるのだ。そのカラクリを知った以上、お前ももう後戻りは出来ないと知れ。邪魔者は排除する、敵対する者もすべて。理由などは後から何とでも付けられる、どこまでも合理的に判断するまでよ。』


 企業体なんてのは、半分がヤクザだ。政治もそう。世界は互いに銃器を隠し持ちながら握手をして繋がっている。強欲なヤツは、いずれ誰かに背中から撃たれる。それが世界を支えるバランスなんだから。


「そうだ、じいさんトコの痴話喧嘩はどうなってる? そっちはいいのか?」

 ルナの実家のお家騒動はまるきり情報が入ってこない。勝手に片付けるから手出し無用とでも思ってるのかも知れないけど。


『今のところは始末を付けねばならんほどの悪さじゃねぇからな、この計画が頓挫すれば大人しくなるんじゃねぇかと踏んではいるんだが……、』

 予断は許さない、てところだろうな。それは。


 後見にまでのし上がった人物なら、間違いなく有能な人間だ。赦せない気持ちと実利とを秤にかけて、どっちを取るかで判断した結果ってことだろう。釘を刺す程度で収まるなら、波風は避けたいってのも、トップの判断としては正しいか。


 正義感は感情論だ。

 感情論で組織は動かせない。それは無責任や身勝手を産み、最悪の結末を呼び寄せる。そうと解かっても、なかなか割り切れないのが人間の感情ってモンだが……非合法の組織のトップを張るほどになれば、喩え身内が惨い仕打ちで殺されたとしても、まずは計算が巡るんだろうな。怒りとともに。


 じいさんの声は急にしんみりとした調子に代わった。


『瑠奈はなぁ、出来れば海藤んトコとは関係なしに育てたいと、それはわしもあいつも意見が一致しておったのだ。財閥の権力争いなんかに巻き込みたくはねぇ、とな。命まで狙われかねねぇんだ。自由な生き方をしてほしいってのは、しがらみの多いこの家業の者はよくよく思うことでな。』

「……そうかい。」


 父である帯刀氏にしても、このじいさんにしても、年老いてからの娘や孫ってのは、そりゃ若い頃に出来た子供なんかとは比べようもないくらいに可愛い存在だろう。表面上は平気そうな声で、内心はどれだけ心配してるかってことだ。


 じいさんだけじゃない、今も、外のリアルじゃそれぞれのプレイヤーの肉親たちが祈るような気持ちで居るんだ。脱出不能のデスゲーム、そこに巻き込まれた人間に関わるもっと多数の人々が、今もまんじりともせずに不安な日々を生きている。……あの、外道どものお蔭で。



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