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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第五章 ウォー ゲーム
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第九話 姉と妹

 ついに、姉妹激突。


 魔法師のサクラは杖を使う。リラの両手持ち大剣を懸命に受け止める。状態的には回避扱い。運動能力に補正が掛かり、常人なら捌ききれない攻撃に対応出来るようになる。


 逆の補正も同様だ。つまり、ゲームの世界にリアルの運動神経は持ち越されない。


 そのせいで、リアル運動神経がいいとか、格闘技やってたようなヤツは、始めたばっかの時にそうとうイライラさせられるんだ。俺もそうだったが。


 個人差がやたらと出る部分だ。何かが憑いてるかのように、身体が思うように動かない。だから、回避率は懸命に上げたもんだ。俺は人の1,5倍反射神経が良かったから、その分、回避率を上げる必要が生じたんだ。リアルと同じに動く為にステータスを上げるっていうバカげた状態だ。


 VRじゃあ、運動神経のいいヤツはマイナスからのスタートが常となる。

 一般レベルを基準としてるから、それを越えてるヤツはマイナス補正で文句たらたらなんだ。


 それ以上に上げることで……常人が普通に回避率上げた状態ってのになって、その恩恵がようやく働き出す。

 咄嗟に、身体が勝手に動くってのが時々あったりする。それが補正の状態だ。ちなみに、頭の良さやらの補正は技術的に難しいらしいから、VRゲームじゃ頭良いヤツが圧倒的に有利だ。


 だから直接には、レベルの差、攻撃力や防御力の差が、勝敗を分ける。

 純粋にパワー以外で勝てる要素は一つだけ、戦闘組立て、つまり運動能力ではない技量ってことになる。戦術だ。


「くっ……!」

 サクラが苦痛の表情を浮かべた。受け止めたものの、攻撃力で魔法師が戦士を上回ることは少ない、そのまま押し切られる。最初の激突は、力任せに剣を振り抜いたリラが、サクラをなぎ倒す形で決着ケリが付く。


 もんどりうって、サクラは倒れこみ、そこへリラが追撃を仕掛けた。

「今さらどんなカオであたしの前に出てきたのよ!!」


 憎悪の言葉がぶつけられた。


「どこまであたしを苦しめたら気が済むのよ! お姉ちゃんなんか……!」

 渾身の力で叩きつけられた剣を躱し、サクラは地面を転げて逃げた。


「聞いて、リラ!」

「うるさい! 裏切り者! よくも!」


 逃げるサクラをリラの剣が容赦なく襲う。激高したリラは容赦がない。

 憎悪の限りを姉のサクラにぶつけている。けど、その顔は、その表情は苦しそうだ。


 八つ当たりの感情を姉にぶつけて対処する以外に、逃げ道がなかったんだろう。ずっと。耐えていたんだ。

 テントの中で、裸で、呪詛の言葉を呟き続けていたのと同様に。


「よくも逃げたわね! あたしを置いて! 一人で! ふざけんな!!」

 リラの両目から涙が溢れてこぼれた。


「違うの、リラ! お願い聞いて!」

「聞きたくない! 裏切り者だ! 一人で逃げ出した!」


 違う、違わない、の押し問答。その間にもリラの剣は何度もサクラを窮地に落とした。

 攻撃は跳ね返る、自身の命を削る、それでもリラは攻撃の手を休めなかった。


「お姉ちゃんなんか! お姉ちゃんなんか!!」

「話を聞いて、目を覚まして! 理穂!!」


 おそらくリアルの名前だ、ふたたび姉妹が激突する。

 サクラは不利と解かっても、何度でもその手の杖でリラの攻撃を受け止めた。

 そのまま押し込まれて斬られると知っているのに、だ。


 避ければ一瞬の時間、受ければそれだけ時間が稼げる。妹と話せる時間が。


「うっ!」

 また斬られた。

 躱せば、ノーダメで相手だけにダメージを与えられるというのに、受け止める。


「お姉ちゃんなんか! お姉ちゃんなんか!! 先に逃げて! あたしを残して! どんなけ酷い目に遭わされたと思って!!」

 リラが滅茶苦茶に剣を叩きつける。それをサクラは得物の杖で懸命に防ぎ続けた。

 回復すら掛けずに攻撃を続ける自棄の妹の命を、自身の命を削って支え続ける。時を稼ぐ。


「お姉ちゃんのせいだ!」

「ごめん、理穂、」

 泣きながらの戦い、姉妹がボロボロになって、ボロボロに泣いて。

 どうしてこうなっちまった、どうして。


 いつの間にか、ランスの野郎とエカテ姐さんの戦いも休戦になって。

 ヤロウは俯いて、ただじっとしていた。


「助けに来てくれるって! それでも信じてたのに!」

「ごめん、理穂、」


「待ってたのに……!」

「ごめん、」


 ついに、リラは自ら武器を手放した。

 ガシャンと重い音が響き、大地に大剣が転がった。


「ごめん。……遅くなっちゃったね、」

 近寄るサクラに、しゃくりあげてるリラ。


「助けに、来たよ……、」

 サクラが、リラを両手で抱き締めた。

 そして、堰をきったように、二人の泣く声が響いた。


 こんな事になった元凶の一角、ルシフェルの一味としては今、どんな気持ちだ? ああ?

 聞いてみたいとこだが、ヤロウはまるで逃げるようにその光景に背を向けて足早に去っていく。

 エカテ姐さんも何も言わずに見送った。


 互いをしっかりと抱き締め合う二人の姿が遠ざかる。

 リラを助けに行こうとしてたな。こっちで知り合いにでもなってたのか。

 コイツ自身は、悪い奴じゃないとは思うんだが、な。


 ルシフェルの一味なんだよな。


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