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デスゲで俺は最強スライム  作者: まめ太
第三章 クレイジー ティー パーティ
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第十話 密談Ⅰ

「で、でも、ログアウトが最終目標には違いないんだろう?」

 狼狽えた様子で一人が答えた。


 イベントで入手できる高性能の鎧を着て、装備はランスだ。馬上槍っての? 馬鹿デカい槍を背中に背負ってる。装飾が為されていて、黒光りする槍身に銀色の獅子が彫刻されたものだ。俺のナックルと同じ、レイドボスのドロップ。

 有名な奴だ、効率厨として。武器に装備、持ち物まで指定してくるって。


 総じてこっちの連中はイケメン率が高いようで、この場の四人全員が絵に描いたような美男子ばかり。全員揃って日本人離れしたソース顔だからな、弄ったことは丸わかりだ。しかも特徴のない似た顔が四つだ。髪型、髪の色、装備の違いでしか見分けられない。

 全員が似たようなデザインの格好良い鎧甲冑で固め、それぞれランス、大剣、双剣を得物にしている。


 狼狽えたランス騎士は他のメンツにも意見を求めるように、周囲を見た。

「ログアウト以外にって、何かあるかな? ゲームのことだし、この中で何かやり遂げたとしても、あまり意味があるとは思えないけど……、」


 言い訳のような台詞を受けて、ルシフェルがそいつを睨みつけた。


「バカか。この状態になって、何日閉じ込められてると思ってる? 二か月だぞ、二か月。この調子でいけば、脱出する頃には優に一年近くの時間が流れてることだろうさ。」

「そ、それは……しかたないじゃないか、事故なんだから、」


 黙らせるように、奴は強い口調で相手の言葉を遮る。

「このまま無事にログアウトできたとしても、社会的には詰んでしまってるって事に気付いてなかったのか? ゲームしてての事故だ、最初は同情的かも知れんが、そのうち手のひらを返される。待遇が変わる。そんな事例は幾らでもあるって知らないのか?」


 知らなかったけど。

 なんか拘るところが斜め上すぎて、むしろ感心しちまったぜ。状況、解かってんのか?


 まぁ、ヤツの言いたい事も解かる。学生が多いだろうし、一年の遅れは社会人以上に深刻だ。

 俺もこのままいけば留年は確定だろうが、その原因がゲームの事故っていうんじゃあまり同情もされない。世間が、こうなるかも知れないと解かってて続けてたって見方に落ち着くのは、当たり前っちゃ当たり前の感覚だ。


 良識ある大人の判断は、解かってるならやるな、だろう。(現に辞めた奴も多い。)


「そ、それじゃ、どうすれば……、」

 他の連中もヤツが何を言いたいのかよく解からないんだろう、疑問符が頭の回りを回ってるみてぇな顔だ。

 奴は声を落とし、畳み掛けるように論弁を続ける。


「ただログアウトすればいいだけなら、俺だってあのチート野郎にすり寄ってるさ。だが、それじゃ手柄は全部奴に持っていかれるだけだ。社会的に失ったものを埋め合わせるには、俺たちがヒーローになる必要がある。人々を救い出すことに成功した、ほんの一部のプレイヤーだけが、リアル社会での信用を失墜させずに復帰出来るんだ。」

「じゃあ、あの野郎は……、」


「早めに始末しないといけない。なんなら、このデスゲ状態の責任をおっかぶせるってことでもいい。そして、多少の犠牲を払ってでも、多くのプレイヤーを脱出させるんだ。なぁに、新人たちなんざ無視していい、こっちに分けた連中だけでも、八割だ。それだけ救えりゃ、英雄だよ。」


 あの時の顔だ。酷薄そうな、残忍そうな笑み。

 やっぱり、お前の本性はそっちだったんだな。


「奴らに出し抜かれる前に片付けないといけないな、それじゃ……。」

 何か言い返すかと期待したが、あっさりと裏切られた。


 一人くらい反発するかと思ったが、どうやら俺のが甘かったらしいな。ゲームの中で、リアリティが奇妙な偏りを見せている。人の命が極端に軽かったり、リアルの地位が重要になっている。捩じれている。


 奴の微笑みは冷酷そのものだった。


「そうだ。お前たちは俺が見込んだ連中だからな。頭の回転がよくて助かるよ。」


 けっ、同じ穴のムジナってだけだろうが。

 密談はすべてテントの中、か。テント内は運営ログが取れないバグがある。知ってやがったな。


「お、おい……、」

 さっきのランスか。さすがに気が咎めたんだろう、何か言いたげな表情に現れている。

 ヤロウの周囲にも、少しはマシなヤツが居たってことか。


「ルシフェル!」

 突然の闖入者が、意を決したランスの言葉を遮ってテントの中へ侵入した。

 俺じゃないぞ。


 入ってきたのは、なんだか見覚えのあるような人物だ。ステ欄の名前には憶えがないんだが。


「なんだい? 今、取り込み中なんだけどな。」

「ほ、本当にこの仕事をこなせば、不問にしてくれるんだな!?」


 なんだ? 話が見えない。

 見えないんだが、妙に嫌な予感をビシビシと感じさせる台詞だ。


「ああ、約束するさ。この仕事は重要なことだ、けど危険が大きくてやりたがるヤツが居ない。やってくれたら、誰も文句言わなくなるさ。それどころか、皆感謝するよ、英雄だもの。」

 奴は冷酷な笑みを浮かべたまま、猫なで声で答えやがった。


「悪いな、向こうを抜けるよう誘っておいて今さらなんだけど。チート使いだって話すわけにもいかなくてさ、黙ってた俺も悪い。騙したことに、皆怒ってしまって……。だから皆を納得させる方法を考えたんだけど、これしかなかったんだ。」


 ぬけぬけと、言いやがるぜ。


 きっと、チート使いってのがバレて責められたんだろう。追い出されたら、俺達のとこへ来るしかないが、アイツ等はこっちを出てったヤツ等か。別に気にしやしない、そのまま戻って来い、そう言ってやりたいが。

 恐らくは洗脳状態だ、俺の言葉を聞くかどうかは解からない。帰る場所はもうないと信じ込まされている。


 隙をみて助けないと。


 きっと命に関わるような危険を冒させるつもりなんだ。

 何をさせる? いつ? 俺だけで阻止できるか?


 彼はルシフェルを睨みつけて、そのままテントを出て行った。



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