第26話 今後の方針
≪登場人物の紹介≫
〇魔法少女側
S4ku→妖精。人間界での名前は守里 咲。仕事に真面目。百合を見守りたい心がある。
草加部 日和→魔法少女名はマジカル☆チェルア。気弱な女の子。頼られるような自分に変わりたい。
雨宮 怜奈→魔法少女名はマジカル☆リリィ。日和の幼馴染。優等生の女の子。日和のことが好き。
半田 丸助→日本で妖精の面倒を見るバイトをしているため、咲の面倒を見る。
U3ra→妖精。まだ見習い。人間界での名前は夢見 琉亜。生意気。魔法少女を戦いに巻き込む妖精の国が嫌い。
管理官→妖精の国の偉い人。S4kuの上司にあたる妖精。
〇悪の組織セーフク側
ボス→敵のボス。中二病チックなことを言う。妖精の見た目をしているが……? 謎が多い。
雨宮 李依奈→組織内での名前はデラヴィ。明るいギャルだが、悪いことをするのがいいことだという歪んだ考えを持つ。
大上 久美子→組織内での名前はアロファ。顔とスタイルが良い芸能人で男女問わず人気がある。実はドM。
ころね→ボスに作られた人造人間。純真無垢で李依奈の悪の価値観が理解できないでいる。
今日の報告書を書き終えて書類の整理をする。半田が買ってくれたファイルというものは実に便利で整理をするのにとても役に立つ。
報告書に対する管理官からのコメントを日付順にまとめる。俺はまめに送るほうだと思うが、管理官だって律儀に全てにコメントをして返してくれるのだ。俺よりも圧倒的に忙しいだろうに。さすが、管理官である。
あ、一枚抜けてるな。さっき見返した時に机に置いたままなのだろう。
机で報告書を書く練習をしている琉亜に声を掛ける。
「琉亜、そこに管理官からのコメントの書類があったらくれ」
「了解です! ここにありますヨ」
琉亜が書類を手渡した。思ったよりも素直な反応につい目を見開いた。
妖精の問題児と呼ばれていた琉亜。人間界に来た時は誰彼構わずに噛みついていた。でも魔法少女の二人がダークモンスターと戦っている様子を見てから、前よりは落ち着いた気がする。
「咲センパイ、なんでじっとこっちを見るんですカ。いい加減キモいですよ」
生意気な態度は相変わらずだが。
「琉亜が前よりも優しくなったなと思っただけだ。気のせいだったみたいだから気にしないでくれ」
「っ、じゃあ何て言えばよかったんですカ!」
「冗談だ。気にするな、後輩」
「クソほど真面目な咲センパイの冗談マジで分かりづらいので禁止にしたいです!」
「俺だって冗談の一つや二つは言うこともあるよ」
頬を膨らませて睨んでくる琉亜の頭を撫でてやると満足したような顔をする。
「仕方ないから許してあげますネ!」
「良かった。ところで、琉亜」
「何ですカ?」
「改心したなら、もう妖精の国に戻れるんじゃないか?」
琉亜の動きがピタッと止まる。
琉亜の問題児加減に手を焼いていた魔法少女協会の偉い妖精たちは、罰という体で俺に琉亜の面倒を見るように命令を下した。
具体的にこうというのはなかったが、問題行動が落ち着いた今の琉亜なら帰れるのでは、と俺は考えた。そして琉亜なら、こうなれたら帰れる的な目標を何かしら言われてるかもと思って話を振ったのだが、……。この様子だと、帰りたくなくてわざと黙っていたのか?
琉亜が下から俺の顔を覗き込む。
「咲センパイは、ミーが元の世界に戻ったら寂しいんじゃないですか?」
「仕事だから仕方ない」
「やっぱりクソ真面目ですね!」
「琉亜がいないと寂しいとは思うけどな」
「……なんなんですかホント」
琉亜が俺を睨みつけてくる。そんなに怒られるようなことを言っただろうか。
「俺は琉亜は妖精の国に戻りたいと思っていたのだが、違うのか?」
「……まあ、帰りたくないですヨ」
琉亜が肩を落とす。
琉亜にもいろいろ事情があるのだろう。人間界に来てからまだ日が浅く、俺は琉亜のことは何も知らない。妖精の国で問題児扱いされていたことを考えると妖精の国に対して琉亜なりに思うところがあるのだろう。
少し考えてから、俺は口を開く。
「あいにく今はかなりの人手不足だ。琉亜がこちらにいる以上、俺の仕事を手伝ってもらうことだってあるかもしれない。それでもいいのか」
「ミーはもちろんいいですヨ。……戻ったってミーの居場所なんかないですから」
リアクションしづらい回答だ。
「俺は琉亜がいてくれたほうが助かる。まだこっちにいるなら改めてよろしく頼むよ、後輩」
「ハイ!」
琉亜は満面の笑みを浮かべた。
可愛い。俺とのやり取りじゃなくて、別の女の子とのやり取りだったらもっと良かったんだが、そこは仕方ない。慕われるのは悪くない気分だ。
「ところで、ミーは何をお手伝いしたらいいんですか」
「そうだな。情報共有も含めて、これからのことを少し話そう」
俺は紙と鉛筆を手に取り、文字や図に書いて見せる。
「まず俺が今預けられているのは“敵の組織セーフクの実態をつかむ”こと。だからやることは大きく分けて2つある。1つはセーフクに対抗する戦力を確保することと、もう1つはセーフクについての情報を集めることだ」
「セーフクを倒すことが目標じゃないんですか?」
「最終的にはそうだが、何の手掛かりもない今は難しいだろう。だからまずはセーフク側の実態をつかむことが大事になる。そしてその間に何か起こった時に対抗するために魔法少女の力が必要だ」
「なるほど」
琉亜が紙を覗き込みながら頷く。
「情報集めはともかく、魔法少女はもう2人いるから大丈夫なんじゃないですか?」
「確かに予定よりは早く確保できている。だが、正直足りないと思う」
「ええ!? どうしてですカ!」
俺は以前に書いた報告書を取り出して『その他』の欄を指さす。
「現在確認できている敵の人数が、3人。チェルアを挑発した人と、そしてダークモンスターと魔法少女が戦う様子を観戦していた2人。そいつらをまとめるボスは別にいる」
「んん~?」
「敵は少なくとも4人いるということだ」
「なるほどですネ!」
「対してこちらの戦力は、チェルア、リリィの2人。半田も一応ミクシアとして戦うことはできるけど妖精の国の事情もあるので、いざという時だけだ」
琉亜が数えるように指を立てる。
「敵が4体、味方が1、2、……戦える味方は半分しかいないってことですか!」
「そうだ。つまり俺たちがこれからするべきことは1つ」
琉亜の前に人差し指を立てる。
「魔法少女になってくれる仲間を集めることだ」
「というわけなんだが、日和、怜奈から見て仲間になってくれそうな人はいないか?」
カフェ“夕やけ”で魔法少女たちに琉亜と話したことを伝えると、二人は首を傾げた。
「う~ん、仲間になってくれそうな人たちかあ~……」
「私も思いつかないわね」
「そうか」
日和か怜奈の知ってる人で誰かいたらと思ったが、やはりそう簡単にはいかないか。
「そうだ。守里が学校に来て直接探したらいいじゃない」
「俺が?」
「確かに。お話ししたい時は生徒に化ければいいもんね。妖精の姿で私や怜奈のカバンの中に隠れていたらきっとバレないよ」
日和の提案を思い浮かべる。確かにカバンの中に入って教室に行けば、魔法少女の適性がある人を見つけられるかもしれない。
「それじゃあ明日、俺のことを学校に連れて行ってくれ」
「分かった。私が連れて行くよ」
「ありがとう、日和」
怜奈の細くなった目が怖いが、何も言わないということは許されたのだろう。ようやく俺が日和と怜奈の恋路を応援していると理解してくれたのだろうか。
何はともあれ明日から学校に行けることになったのだ。行動できる範囲が増えた分、きっと魔法少女も見つかりやすくなるだろう。
魔法少女が見つかりますように、と心の中で強く願った。




