第24話 新たな三人目
活動報告書 作成者:S4ku
【魔法少女について】
6月〇日。新たな魔法少女の確保はなし。本日は魔法少女として動けるように特訓をした。
【セーフクについて】
田中裕子という名前の中学生の女子生徒の負の感情が利用され、ダークモンスターが生成された。ダークモンスターは□□町の中心部に出現。魔法少女マジカル☆チェルアと魔法少女マジカル☆リリィによって浄化される。
中年男性はこの街に住む芸能人の追っかけをしていた模様。浄化後の中年男性の様子に異常はない。経過観察中。
【その他】
魔法少女曰く、敵側と思われる二人の女性がいた模様。一人は高校生ぐらいの女子、もう一人は中学生ぐらいの女子とのこと。二人とも禍々しい服に身を包んでいた。高校生のほうの女子は中学生の女子にずっと話しかけているようだったが、内容までは分からず。
半田の魔法少女化については管理官のお目こぼしなのでさすがに報告書には書けない。それにしても、敵のセーフク側の動きが気になる。女の子二人でいったい何をしていたのだろう。魔法少女の二人曰く、前にあったアロファと名乗る敵とは違う人たちだと言っていた。もしかしたら他にもいるのかもしれない。
こっちはまだ魔法少女が二人。半田を含めても三人だ。敵の数が未知数な以上、魔法少女の人数はもっと確保するべきだな。
俺は部屋の端っこで横になっている琉亜を向く。
「琉亜、今までの活動報告書は読んだか?」
「……読みましたヨ」
「横に散らばってるところを見ると読んですらいなそうだがな」
「ミーだってちゃんと読みましたよ、1行ぐらいは」
「それは読んだって言わない」
「だって、咲センパイの活動報告書多すぎるんですよ~!」
琉亜が起き上がり、活動報告書をまとめたファイルをばしばしと叩く。
「まだこっちに来て1カ月たたないのになんですカ、あの量! 何かあった時だけでいいはずですよね! 毎日書くとか狂気の沙汰ですよ!」
「そりゃあ、小さいことでも書かないとな」
「咲センパイのは小さすぎるんです! もはや魔法少女の観察記録じゃないですか! なんですか、怜奈の恋心を事細かく書いたあの報告書! 純粋にキモイです! あんな恋愛小説みたいな報告書、誰も読みませんよ!」
「管理官は面白いっておっしゃってたぞ」
「それもはやただのファン! 報告書関係ないじゃないですか!」
部屋の向こうで半田の呼ぶ声がした。
「琉亜、ご飯ができたから行くぞ!」
「なんで急に元気になるんですカ。まあ、行きますけど」
琉亜と二人で部屋を出る。今日の夕食はそうめんのようだ。俺は席に着いて手を合わせる。
「いただきます」
「え、咲センパイ……?」
琉亜は不思議そうに見る。俺たち妖精は人間に化けたところで、本当の人間と同じくお腹が空くわけではない。だからなぜ俺が食事をしているか不思議なのだろう。
妖精によっては、食べなくていいのに毒が入ってるかもしれないものを食べるだなんておかしい、という食事絶拒派もいる。だから妖精で好んで食事をするのは、変わり者なのかもしれない。
俺だって、ここにくるまでは食事を好きになるなんて思わなかった。だから琉亜が驚くのも無理はない。
「琉亜、俺は食べるのが好きだから食べてるだけだ。いらないなら俺が食べるから無理しなくていい」
「ああ、そっか。咲が食べるから忘れてたけど、妖精はお腹空かないんだっけ」
琉亜は戸惑った顔で俺と半田を見比べる。
「まあ、それもありますけど……魔法少女担当の妖精なら、魔法少女の家に住み込むのが定石じゃないですカ。真面目な咲センパイなら、そこもきっちり踏襲してるかと思ったんですけど」
「……琉亜も勉強してるんだな」
「だって妖精の国の常識みたいなもんじゃないですか。習ってなくても知ってますヨ」
琉亜が謎にドヤっとした顔をしてるが、勉強していないことは誇らしいことではない。とはいえ、なんて答えよう。百合を邪魔したくないから、だと俺の欲望に忠実すぎる。
ふと、半田と目が合う。――そうだ、その手があった。半田が何かを察したようで嫌そうな顔をする。
「琉亜、実は半田も魔法少女なんだ」
「……え、でもこの人男ですよね? まさか、女の子なんですか?」
「そういうわけじゃないんだが、ほら」
俺は手を叩いて緑色のステッキを半田に渡す。半田は嫌そうに小さな声で呟いた。
「……変身」
ステッキから光が放たれ、半田を取り囲む。そして光が消えるとすっかり魔法少女
へと変身した半田がそこにいた。
「な、な……な、なんで男の人が……魔法少女に…………?」
姿かたちが全く変わった半田に、琉亜は空いた口が塞がらない様子だ。
「ほら、半田も魔法少女だろ? 魔法少女に何かあった時の助っ人みたいなもんだから普段は変身しないけどな」
「……咲ぅ、もう変身解いてもいい?」
高くなった半田の声は頼りなさげだ。そんな半田を琉亜は目を丸くして見ている。
「男が魔法少女になるのはご法度だって聞いていたのに……」
「そうなんだが、なりゆきでこうなった」
「……なんていうか、いろいろキモいですねセンパイ」
琉亜が顔をしかめる。なんで罵倒されたのかよく分からないが、納得してもらえたのなら良かった。
「そうだ。せっかく人間界に来てるんだから、琉亜が魔法少女の家に泊まりに行ってもいいんだぞ」
「ミーが?」
「ああ。見習い妖精だから俺と同じ業務はさせられないけど、少しは経験するのもありだと思うんだ。俺は悪の組織セーフクについて調べるから意外と時間がないし、琉亜が手伝ってくれたらかなり助かる」
今日の様子を見るに日和のところにしか行かせられなさそうだが、俺が行くよりは、怜奈も安心するだろう。
琉亜は俯いて、考えるような間を置いた。
「行きたくないなら無理して行かなくてもいいからな。僕のバイト代は増えるし」
いつの間にか変身を解いた半田の言葉に、琉亜はまた顔をしかめた。
「ちょっと考えておきまス」
「ああ、頼むぞ後輩」
琉亜の頭を撫でると、琉亜は顔を背けておとなしく撫でられた。
琉亜がこの家に来た時はどうなるかと思ったが、案外こっちでもやっていけそうだな。俺は琉亜の横顔を見て、ほっとした。




