第16話 気になること
活動報告書 作成者:S4ku
【魔法少女について】
6月△日。二人目の魔法少女の人員確保に成功。
雨宮怜奈。13歳。日本○○県△△市□□町に在住。花園中学校の生徒。一年一組。日和の幼馴染で、日和の力になりたいという夢を持っているため、魔法少女適正あり。
魔法少女名はマジカル☆リリィ。水を出現させて自在に操るのが特徴。必殺技の時はステッキがシャワーヘッドに変化。
【セーフクについて】
佐藤和彦という名前の中年男性の負の感情が利用され、ダークモンスターが生成された。ダークモンスターは□□町の駅前に出現。魔法少女マジカル☆リリィによって浄化される。
中年男性はこの街に住む芸能人の追っかけをしていた模様。浄化後の中年男性の様子に異常はない。経過観察中。
【その他】
ダークモンスターを出現させた敵の幹部の姿あり。
女性。名前はアロファ。見た目は高校生ぐらい。スタイルが良く、禍々しい服に身を包んでいた。他にもデラヴィという名前の幹部がいる様子。引き続き情報を探る。
予定通り、怜奈を魔法少女にできた。本人からなりたいと申し出があったのは意外だったが、日和が既に魔法少女だと知ったからだというなら納得できる。怜奈の日和を思う気持ちはやはり尊い。
それにしてもあの幹部はいったい誰なのだろう。セーフクのボスについては魔法少女協会が既に把握している。しかし、幹部がいたというのは魔法少女協会からは聞いてない。伝えておいた方がいい事項だろう。
纏っていた衣装は赤や黒という禍々しい色を組み合わせて作られた露出の高いワンピースだ。服装は日本で通常見られるようなものではなかったが、着ていた人は日本人に俺には見えた。
もしかしたら、現地の人間で妖精に手を貸した人がいるのかも。半田だって魔法少女でもないのに妖精の存在を知る一人だ。同じような人間が他にもいるのかもしれない。
「咲、ご飯できたぞ~」
リビングから半田の声がする。作業はここまでにしよう。俺は半田の部屋を出てリビングに向かった。
テーブルには、様々なおかずが所狭しと並ぶ。半田が作ったものというよりは、コンビニで売られたものを買ってきたみたいだ。
「お腹が空いていたみたいだからいっぱい買ってきてやったぜ」
「……半田、ありがとう」
半田が笑いかけるが、俺は複雑な気持ちになった。確かにご飯をたくさん食べたいと俺はリクエストした。
コンビニというのは非常に便利でいろんな食材が置いてあり、どれも美味しい。だから味のクオリティに文句はない。むしろ半田の優しさが嬉しい。
ただ、それでも半田の手作りのご飯が食べたいと思うのはわがままだろうか。
魔法少女の家に泊まりに行くときは他の家族に妖精とバレないようにぬいぐるみの姿だ。人間の姿でずっと相手の家に居座るのは家族も気を遣うから魔法少女協会ではあまり推奨されていない。ただ、そうすると俺の分の食事は用意されないのでもちろんご飯が食べられない。
美味しいものを食べたいというのは俺の趣味の範疇なので、仕事をする上で考慮する事ではないのだが、どうせ仕事をするなら楽しいほうが良い。
「なんだよ、反応薄いな。咲ならもっと喜ぶかと思ったのに」
半田が顔をしかめる。俺のために買ってきてくれたのに何の反応もなしじゃ、半田が面白くないのは当然だろう。
言うべきか少し迷ったが、隠しても仕方ないので正直に伝える。
「俺にいろんなものをたくさん食べさせたいと買って来てくれたんだろう? 俺はその半田の気持ちは嬉しい。だけど、半田の手作りのご飯も食べたい気持ちも少しあった」
ご飯を作ると言うのは手間がかかると分かっているから気軽には頼めない。ただ、少しの間だが違う家にいたからか、半田のご飯が恋しくなったのだ。ホームシック、というものなのかもしれない。
「なんだよ。僕のご飯がそんなにおいしかったの?」
「ああ。半田の手作りご飯が一番好きだ」
半田は冗談めかして言ったが、俺は本気だ。半田のご飯は美味しい。
半田は目を丸くする。そしてふいっと顔を背けた。
「咲がそこまで言うなら、明日は僕が作ってやるよ」
「本当か!」
「……嬉しそうだな」
半田だって嬉しそうな顔をしている。わがままを言われて嫌じゃないかと思ったが、そうでもないみたいだ。半田は良い奴だな。
二人で手を合わせていただきますをする。俺はこの文化が大好きだ。改めて食べ物に感謝することで、しっかり向き合えている気がするから。
「咲、報告書はまとめられた?」
半田が話しかけてきた。俺は頷く。
「ああ。半田がパソコンを貸してくれるおかげでスムーズにできたよ」
以前魔法少女協会に申請したが、パソコンはまだこちらに届いていないので相変わらず半田のパソコンを借りている。
報告書のことを思い出して、ふと先程自分が抱いた疑問を思い出した。
「そういえば、どうして半田は妖精の存在を知っていたんだ?」
「……まあ、咲になら言ってもいいか」
半田は食事の手を止めて俺を見る。真剣な表情になった半田につられて、俺も食べる手を止めて半田の顔を見た。半田が口を開く。
「僕の兄貴が魔法少女だったんだよ」
「……え?」
頭が半田の発言の処理に追いつかない。
男が魔法少女になった? 魔法少女協会では男が魔法で変身するのを禁止していた。だから男が変身するなんてありえない。
「男だから、魔法少年? どんな姿で戦ってたのかは分からないけど、とにかく僕の兄貴は魔法で変身して、モンスターをやっつけてた。その時に兄貴の妖精が家にいたんだ」
「半田、それはいつの話だ」
「う~ん、兄貴は中学2年生で僕が小学6年生の時に要請に初めて会ったから……だいたい5年くらい前かな」
10年前。俺はまだ妖精として存在していない時だ。その時はまだ男が魔法を使って変身して良かったということか。
ふと半田が暗い顔をしていることに気付く。
「半田、どうかしたのか」
「え、なんで?」
「暗い顔をしていたから」
半田は少し間を空けてから口を開いた。
「僕の兄貴さ、高校1年生になってすぐに行方不明になったんだ。敵を倒して全部終わったって兄貴は嬉しそうにしてたのに、妖精がいなくなって変身しなくなって……普通の生活に戻ってからはだんだんと暗くなっていって……ある日急に家を出て行った。両親も生きてるってことは知ってるみたいだけど、どこで何をしているのかは分からないみたい」
「そうだったのか」
「今はどこで何をしてるのかなあ」
半田は笑みを浮かべたが、どこか悲しそうだった。




