再喝2
夏の続編 Bの回想
「ねぇ、私好きな人ができたの。祝ってくれる?」
付き合って数か月後、彼女はそういった。
「だけど、俺が好きだって…」
「うん。もちろん、好きだよ。だけど、あんたより好きな人ができたの。」
明るく笑顔ではきはきとした話しぶりで、その男性のことを話していく彼女。相手は最近選ばれた委員の先輩なのだそう。
「何回か相談に乗ってもらううちに、好きになっちゃった。だけど、あんたに好きな人ができるまでは、このままでいない?その先輩にも彼氏のことで話してしまっているし」
どうやら、その先輩にすぐ乗り換えたやつだとおもわれるのは嫌らしい。だから俺たちは期限を決めた。今度の夏祭りまで恋人関係を続けてふられたことにしようと…正直ほっとしたさ。俺にはその時好きな子がいたから。二年五組彼女と同じクラスの明るい子、山内佐紀さん。きっかけは一年で同じクラスになったこと。
「大丈夫?また片付け中に置いて行かれたんだ。」
「あっ、ごめん。」
筆記用具の片付けでよく手間取っている俺をよく手伝って待ってくれていた子。山内さんに会いたくて、よく彼女のクラスを訪れていた。だけど夏のあの時、見てはいけないものを見てしまった。彼女は必死に隠していたけれど、机にはたくさんの落書きが書かれていた。よくみると彼女の制服は少し湿っていて。汗とは思えない水滴が腕をツーっとつたう。
「なぁに?人の腕ばっかりじろじろ見て」
我に返ってみれば泣きそうな顔に笑顔を張り付けた彼女。ノートの端にはお願いだから出て行ってと一言。
「なぁんにも。じゃっまたな」
「うん。また」
彼女との最後の思い出となる夏祭り。その前にあんなこと知らなきゃよかった。またねと帰った後姿を思い浮かべてまたため息を一つ…。彼女は知らない、僕が付き合った当初好きじゃなかったこと。それから、今になって恋愛感情を抱いていることを。だから、明日で最後だと思うとホッとするような寂しいような気持ちでいっぱいだった。好きな男がいると彼女から言われて、俺も好きな人がいることを告げた。それから、かのじょをすきになったことをつたえられずにここまできてしまうなんて…。
「いまさら言ったって遅いだろ…あぁ、俺なんて馬鹿なんだろ」
彼女にはもう好きな人がいて、たとえ今言ってもおしまい。もともと、だましてしまったのは俺で、彼女を責めることなんてはなから考えてなんていないけど。じゃあ、どうするってなったってなんにも思い浮かばない。完全なる詰み。
「今までありがとう。しあわせにね」
「…おぉ。あきもしあわせにな」
結局出せたのはこの答えだけ。ほんとに情けなくてどうしようもない。その当時どれだけ自分のことを責めたか…あの時あぁしていればなんて、こういう時に使う言葉なんだと思う。
夏祭りの後すぐ、あきこが入院した。




