ガラス玉 再喝
再喝です
ガラス玉の呪いにかかった女の子
二部
~男の子、彼、失恋~
僕が好きな人には好きな人がいた。その子がいつものあいまいな顔から笑顔を生み出すとき、
たいてい彼の話から始まるのだ。 正直退屈、 正直複雑、 、 どうして相談役なんて引き受けたん
だろうと今更に後悔する。 僕の名前は、 田中陽太。 どこにでもいるような平々凡々な名前を持
つ僕が、少しだけ失恋の話をしてもいい?
「相談役?…ですか?」
「そう。面白そうだから、田中君やってみない?」
どうして僕にこんな役目が回ってきたのかなんて、 考えなくてもわかることなんだけど、 まぁ
押し付けられてやったって正直に話していいならそう言おうかとおもう。 先生の話では、 相談
役=意見箱の案をパソコンにまとめる係らしいのだが、 生徒会の下請け業務者の間違いだ。 で
もまぁ…活動は月に一度、 昼休み二十分と放課後一時間にかぎるらしいし、 それがかかり活動
の代わりと聞いて引き受けてみた。 引き受けてみてその係の子に恋した。 名前と同じでありき
たりなのかもしれないけれど、仮に A 子さんとしよう。その子のことは多分一生、僕の胸に
失恋の記憶とともに刻まれると思う。 この話は誰かに話してもいいか問わなくても話さないと
いけないことなんだから、無理やりにでも話させてもらうね。気が変わりやすいたちなんだ。
一三年の僕と二年の君について
「田中先輩。今日からよろしくお願いしますね」
にっこりと笑う女の子をみて、 最初に抱いたのは気味が悪いだった。 田中陽太という人間は卑
屈でひねくれやだけれど、 裏を返せばそれだけ思慮ぶかく、 警戒心の強い人間だった。 だから
こそ、 その子の張り付けたような笑顔にうすら寒さを感じていたし、 最初は話しかけられても
絶対に一言でが終わるような返事ばかりをしていた。
「先輩。ここにまとめ終わった資料おいてますね」
「あぁ、ありがとう」
「帰られないんですか?」
「戸締りをして帰るから、先に行ってていいよ。さようなら」
とまぁ、 こんな具合。 A 子もさぞかし不思議で気味悪がっていただろう。田中陽太という人間
はとにかくそういう人間だった。 資料の紙を見てあとどれぐらいで終わらせられるのかを頭で
計算する。
-昼の二十分と放課後の一時間?じょうだんんじゃない。 この量を三人で終わるわけがない。
一人は働くとして一年は、 サボって寝ているし資料がうずたかく積まれている中、 のんきなも
んだ。
…所謂、 そういう汚れ仕事を任される集団まぁもうそういう三人っことでわかる人には
わかるだろう。。ため息をつきながら、無駄に水を飲みながらとにかくこっちは真剣だった。
生徒会の奴らにまた文句を言われても困る。
「田中先輩。いい加減ひと段落いれましょう?相川さんも疲れて寝てますし。」
「勝手に休んでいいよ。僕は後から休む」
「そういって、全然休みを取られないじゃないですか。ダメですよ」
「時間は有限なんだ。 生徒会のやつらにもまた、 資料が遅いといわれてしまう。 そんなの腹が
立つだろう?」
そうだろう。 腹が立つだろう…同じ年、 下手すら下の年もいるのに、 そいつらにぱしられるな
んて。 もんもんとそんなことを考えいやになっていると、 あのとほんとに不思議そうな声で僕
の名前を呼ぶ奴が一名。 めんどくさいけど、 顔を上げる…なんだ、 こんな顔もできるのかと一
瞬遅れて
…なんだと返事を一回。 終わらせるんじゃない返事なんて初めてかもしれない。 興味…そう、 ぎ
こちない笑顔をつくる、 見るからに自信のなさそうな少女が、 いきなり大人の女性のような顔
をするんだ。興味がわかないほうがおかしいと思う。
「先輩って何のために頑張るんですか?こんな押し付けみたいな仕事になんで感情をこめら
れるんですか?」
「…は。感情を込めるも何も、、、終わらせなきゃだろ。何言ってるんだ」
「終わらせますよ。 だけど、 田中先輩っていつも何に対しても全力だからすごいなぁって思っ
て。」
夏服の白い清廉・ 清潔に、 あわないぎこちない笑顔にまた戻る。 なのになぜかこの子にはえら
くお似合いなんだよ。 偽物で人形的。 それがぴったり。 こんな秘密がある女の子に興味がわか
ないはずもないだろう(二回目)
「なぁ…ずっと思っているんだけど、 笑顔がすこしぎこちなくないか。 係が一緒ぐらいのやつ
にそんなこと言われたくないとは思うけど…ほんとは笑ってないだろ?」
「そうですか?先輩って、 実は結構失礼な方なんですね。
…あぁ、 怒ってませんから。 そんな
本気で怒るようなことでもありませんし。 すこしの冗談というか、 うん。 私なりのユーモアで
すから」
「悪い。 ずけずけと失礼なことを言っている自覚はあるんだけど。 どうしても、 出てきてしま
うんだ」
「本当にまじめな方なんですね」
「なんだか。お前に言われるとうれしくないな」
「なんでですかぁ」
その時から僕らはよく話すようになったと思う。 A 子曰く。 私と先輩は似てると思うのだそう。
-だから、 ちゃんと話してみたかったんですよ?先輩なら、 私のことを理解してくれるって思
えたから…
とにかく彼女は、 A 子はよく自分の話をするようになった。 自信のないような顔をしているく
せにこういう一面もあるのかと思うと同時に、 もっともっと知りたいと思うようになっていた。
一年はほとんど相談役に参加はしなくなったから、 パソコンをうちながら会話をする。 その一
時間二十分が田中にとってはオアシスみたいなものだった。 多分、 いや確実にかのじょにとっ
てもそうだったと思う。少なくと三年の先輩に恋愛の相談をするぐらいには
「田中先輩。また、B君のこときいてもらってもいいですか?」
「あぁ、いいよ。で、その彼が今度はどうした?」
「そのB君なんですけど、最近なんだか仲がいい子がいるみたいなんですよね」
「ふーん。それで」
「…それで、その子がわたしのその…あれでして」
「あぁ、、、なるほど。」
「その子と仲良くしているのは、B君の勝手なんですけど。もやもやしちゃって」
「まぁ、いやな気持はわかるけどな…彼はその子のことはなんて?」
「うーん。ただ話すだけみたいな感じって言ってましたけど」
「なら問題ないじゃないか。」
「そうなんですけど、、、」
変に歯切れの悪いから慎重にきいてみると、 その子が自分に対して行っていることを彼は知っ
ているはずなのに、 どうして仲良くするのかと、 、、 まぁ、言えば女子の私が仲良くないこと
は仲良くならないで理論みたいなものだ。 男側からしたら、 それとこれとは別みたいな所ある
と思うけどな…話しかけられてるなら受け身なわけだろうから。
「まぁ、もやもやしても仕方ないことだって割り切るしかないだろ。今のところ A のほうが
距離は近いわけだろ。そう気にすることもないだろ」
「そうですかねぇ」
「案外、 そういうの気にしてないとこあるっていうのも誤解招くかもしれないけど。 何にも考
えずに話しかけられたから返してるだけみたいな。 相手が好意を持ってるからってその彼がな
びかないと結局意味ないもんだぞ」
「まぁ、そうですね。深く考えすぎですよね」
「それだけ、そいつが好きってことだろ」さっきの言葉は自分に効く案件だけど、好きな人の暗い顔はみたくないものだろう。だから、
そう、 その子の濃くなるあざだって見ていないかのようにしていたいし、 腕のきずだって彼女
は知られたくないだろうから、知らないふりを決め込むしかない。
-なんでそんな傷が増えてるんだ。
-切ったのか?
口で言うのは簡単だ。 だけど、 かのじょはいまだに、 自分にはあいまいな顔で…ちゃんとした
笑顔は向けてくれない関係で。 先輩後輩の立ち位置から踏み込めないでいるんだ。 踏み込んだ
らいけない…
。 A の口からはそういう事をされているんですよねとは聞く。 だけど、 どんなこ
とをされてるとかなんとか…それは一切くちには出してくれないし、 自分も出さない。 たぶん
彼女もそれをわかっている。 臆病な自分のことをわかっている。 から、 僕には期待をしないし、
世間話のような会話でとどめているんだろうな。だから、踏み込んじゃいけなかったんだ。
「彼が彼女と付き合うんですって」
「そうか…あの子だろ?」
「はい。」
「いやだろ」
「いやですね。でも、仕方ないですね」
「あぁ、仕方ないな」
いつものようにパソコンに向かって画面に吸い込まれているような会話を続ける。 カチャッ、、、、カタカタ…
「わたし、入院するんですって」
「へぇ、どこに」
「さぁ。
…私ってほら変わっるから?」
「お互い様だろ」
「ですね。」
カタカタ。 。 。
カタカタ…脳内に響くようなパソコンの音。 季節感もない描写もできない静寂と寂しい会議室。
エアコンの空気を吐き出す音が時々して、 、 、 何回か吐き出す音の後にその埃だらけの空気と
一緒に吐き出しちゃいけない言葉を吐き出した。
「…どこか悪いのか?」
「珍しい。先輩から疑問形が」
「茶化さずにさ、、、」
「…安心してください。体のほうはいたって健康ですから」
「…そうだな」
カチャカチャ…カタッツ
-あれ?ひていしないんですね
「私の傷のこと知ってましたよね?知らないふりしないでくださいよ」
「それは、悪かった。」
「今更ですよ。だけど、大丈夫です。全部わかってますから」
あーあ…一線を超えた後、待ってたのはやっぱり地獄じゃないか。
「先輩。 でも、 あなたも彼も…優しい人だから。 だから、 あなたには当たったらダメだって私
わかってますから。 だけど、 自分で言った責任だけはとってくださいね。 この平坦な関係を壊
した彼も、あなたも同罪ですよ。」
-あなたも彼も、とても残酷
A 子は、 パソコンにカタカタと何かを書き出して僕に見せる。 そこに書いてあるのが本当なら。
いや本当だから、彼女は壊れたんだろう。
「先輩。今までお世話になりました。」
「…元気でな。」
「はい。」
「あっそれと。ひとつ…二年からお前が好きだった二年間ほんとにありがとう」
「しってましたよ。それじゃあ…私よりいい人を見つけてください」
「あぁ。がんばるよ」
最後にちゃんとした笑顔をみてそれが、彼女とのさいごになった。完璧な失恋彼女の秘密。。
だから、この話をお前にしないといけない。
A 子-宮野を追い詰めたのはお前だろ?
宮野あきこがあの日話した秘密は、 俺の思っていた事と九十度違うものだった。 ここまで話し
て、
一つだけ言うと、 あいつはいじめられてあざができたわけじゃない。 切ったわけじゃない。
例えば、 罪悪感をかんじてあざを作ったなら、 自分の体を傷つけたなら…その責任は誰に行くのかな。
なぁ、B
終わり




