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 とある城にて……。


「勇者様からの連絡が途絶えただと!?」


「はい陛下、昨日から勇者様との連絡が途絶えました!」


「確か最終決戦が近いと言っていたはずだな、まさか魔王にやられたとでも言うのか!!」


「ま、まだ分かりませんが、勇者様との連絡が途絶える少し前に大司教様の孫娘であるカリーナ様の命が途絶えたとの連絡が!!」


「なんだと!? そ、それでは勇者様一人で魔王に!?」


「恐らく……」


「馬鹿な! 魔王は勇者様とて苦戦を強いられる相手、だから仲間を集め城に向かったはず!!」


「旅の道中で仲間の二人の反応も消えています……もしかしたら勇者様は仲間の仇をうつために一人で……」


「なんと愚かな……あんな変わり者ばかりを仲間にしたのが間違いだったのだ!」


「戦士はどこの馬の骨ともしれない傭兵、魔法使いは呪われた少女と言われた娘……国が選んだ優秀な人材には見向きもしませんでしたね」


「全く! 歴代最強の勇者などと言われているが、本当に大丈夫なのか? このままでは勇者を選んだ国王の私の面子が立たんぞ!」


「し、しかし陛下。あの勇者は国民からはかなりの信頼を集めていました。貴族や平民など身分など気にせず分け隔てなく接し、決して勇者であることを鼻に掛けませんでした。勇者様の人気のおかげで国王様の支持率も近年ではうなぎ登りです」


「だからこそ、魔王を討伐してもらわねば困るのだ! これで勇者がやられてみろ! 国民は不安と恐怖に襲われ、行き場を無くしたうっぷんは王家に向けられるのだぞ!」


「そ、そうですが……今は勇者様を信じるべきではないかと……」


「くそっ! 二日間連絡を待つ! それでも連絡が無ければ王国から増援を向かわせる!」


「ぞ、増援ですか?」


「そうだ、この際魔王の首さえ持って来れればそれでよい! 勇者など死んでいた方が好都合と言うものだ! 魔王との戦いの果てに勇者は魔王と引き分けた……それなら国民も納得するだろうて」


 そう言いながら、陛下と呼ばれた男は不敵な笑みを浮かべながら玉座に座った。




「くそっ! あの愚王が!!」


 私は国王陛下に使える宰相のアーガレイス。

 今しがた国王陛下に勇者様の近況を報告したのだが、どうにも私はあの国王の言動に腹が立って仕方がなかった。

 勇者バエラル様、歴代の勇者の中でも群を抜いた実力があり、国民の人気もあるこの国の象徴とも言える人物……。

 私は魔王を討伐した後こそバエラル様がこの国には必要だと考えていた。

 あのような自分の事しか考えない愚王ではなく、国民皆を平等に扱うバエラル様こそが王になるべきだと思っている。


「陛下はあの調子だし、勇者様からは連絡がこない……もしかして」


 本当にやられてしまったのだろうか?

 そうだとしたら嘘だと言ってほしい。

 バエラル様はこの国の光なのだ、それに魔王にやられて良いお方ではない。

 通信の旅に勇者様は私の身や国民の安全を第一に私に尋ねてきた。

 自分の方が大変だというのに、他人を心配しているようなお方なのだあの方は!!

 

「バエラル様、どうか生きていて下さい! この国にいや世界に! 貴方は必要なのです!!」


 拳を握り私は天に祈った。

 私は神と言うものをあまり信じてはいない。

 しかし、神と言うものがこの世にいるならば頼む。

 どうかバエラル様を生きてこの国に……。


「アーガレイス様!!」


 私がそんな事をしていると部屋の戸がいきなり開いた。


「何事ですかノックも無しに」


「も、申し訳ございません! し、しかしいてもたっても居られず!」


「それでどうしたのですか? 勇者様から連絡があったのですか?」


「い、いえ連絡ではなく帰ってきたんです!! 勇者様が!」


「な、なんだと!!」


 私はこの世に神は居たのだとこの時始めて思った。

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