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「なんでそうなる! 俺はもうこの世界に未練も目的もない! だから……もうこんな世界に居ても……」


「散っていった仲間達の思いはどうなる?」


「っ!! ……それは……」


 そうだ、ここで俺が死んだ、あいつらの犠牲まで意味が無くなってしまう。

 なんでそんな簡単な事を忘れていたんだ!

 

「だが、魔王と手を組むなど……」


「私自身がどんな魔王なのかは、先ほどその剣を使って証明したはずだ」


「レクトヘルム……」


 正しき心を持つ者にしか使えない聖剣。

 それを魔王は手にした。

 

「私ももう戦争はいやだ……だから私達でこの世界を征服し作り変えるんだ、魔族と人間が手を取り仲良く暮らせる世界に……」


「そ、それは……お前の本音なのか?」


 いくらレクトヘルムが持ち主として認めたとしても俺はまだ魔王を信用出来なかった。

 しかし、信用したいという気持ちもあった。

 魔族は人間よりも優しく、他者を思いやる心を持っていた。

 しかし、その反面で人間と同様に悪い心を持った魔族も確かに存在した。

 だから俺は魔王を信じるべきか否かを迷っていた。


「信じられないか? ならそうさな……信じられるようになるまで、お前を契約で縛ろう」


「契約?」


「あぁ、とりあえず一年、私と手を組むのだ、さすればお前の旅の仲間を生き返らせよう」


「なっ! そ、そんな事が出来る訳がない! あいつらはもうとっくに……」


「そうさな……では今すぐこの場にお前の仲間を復活させて見せよう。それなら良いだろ?」


「そ、そんな馬鹿なことが出来るか! 蘇生は肉体の死から五分以内で無ければ不可能だ! それに一度に三人の人間を蘇生なんて、かなり膨大な魔力なければ!」


「私を誰だと思っている?」


「なっ……」


 魔王はそう言いながら、大きな魔方陣を俺の前に出現させた。

 そしてニヤリと笑いながらこう言った。


「魔王だぞ」


 そう魔王が言った瞬間、眩い光と共に魔方陣の中からアルバス、エリン、カリーナが現れた。

 そして魔方陣が消えた瞬間、三人は目を開け。

 起き上がった。


「うーん、なんだここ? 地獄か?」


「てか、なんで私が地獄行きなの! ありえないでしょ!? アルバスが地獄行きは分かるけど」


「んだとぉ!? ってなんで俺裸なんだよ!!」


「きゃぁぁぁぁ!! ちょっとコッチ見ないでよスケベ!!」


「何がどうなって? って……お前、ラルじゃないか?」


「え? ラルまでいるの! ちょっとこっち見ないでよ!」


「アルバス……エリン……」


 俺は目から気づかずに涙が出ていることに気が付いた。

 二人とももう会えないと、言葉を交わすことはないと思っていた、なのに……。


「う、うーん……あら……ここは一体?」


 そして、俺はカリーナの声を聞いた瞬間、無意識にカリーナの身体を抱きしめていた。


「カリーナ!!」


「え!? あ、あの……ラル? 一体何があったのですか? と、とととというかなぜ私は全裸なのですか? あ、あの恥ずかしいので離れて貰えると助かるのですが……」


 夢じゃない。

 本当にカリーナだった。

 俺は情けなく涙を流して仲間との再開を喜んだ。

 だが、いつまでもこのままという訳にもいかない。

 俺は涙を拭き、魔王の方を向いた。

 魔王は得意げに笑みを浮かべながら話し始めた。


「どうだ? 私の力は凄いであろう。まさか偽物かと疑っているか? 安心しろちゃんと本物だ、機能を停止していた身体を蘇生し魂を呼び戻したのだ、まぁそう簡単に使える魔法ではないが、お前を手に入れるためなら……」


 そう話す魔王の言葉を無視して俺は魔王の手を握った。


「へっ!?」


「ありがとう! 彼が本物なのは見れば分かる! だから礼を言いたい。本当にありがとう!」


「あ、あの……信じるの早すぎないか? お前が契約をしないと言えば、私がこの三人を再びあの世に送ることだって出来るのだぞ?」


「契約は果たす。それに……魔王は正しき心を持つ者だ、そんな奴が簡単に命を弄ぶような真似をしないと思う」


 これは俺の本音だ。

 生き返して貰ったから信じるんじゃない。

 この魔王はきっと契約という理由付けがあれば、仲間を蘇生させることに俺が疑問を持たないと思ってわざと契約などと言ったのだろう。

 それに三人同時のしかも蘇生では無く肉体と魂の復活。

 それには大量の魔力が必要であり、簡単には行えないということも俺は知っている。

 そのせいで先ほどまで感じていた魔王の圧倒的な魔力を今は感じない。


「魔王、俺はお前を信じる。一緒に世界を征服しよう」


 こうして俺は世界を守る勇者から、世界を征服する魔王と手を組んだ勇者になった。


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