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【書籍化】公爵家の料理番様 ~300年生きる小さな料理人~  作者: 延野正行
第五部

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第184話 ささやかなお返し

☆★☆★ 新作連載開始 ☆★☆★


新作「おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました」が、

BookLive、COMICメテオサイト内で連載が始まりました。

引退した勇者の幸せスローライフ生活となっております。

のんびりとしたお話ですので、是非読んでください。


挿絵(By みてみん)

「見つけたぞ、ちび教師!」


 高圧的な声が突然森の中で響き渡る。

 声を張り上げたのは、言わずもがなクモワースだ。

 周りには取り巻きの生徒たちもいて、ニヤニヤと笑っていた。


「やあ、クモワースくん。やっと来たね」


「随分と余裕だな。雑魚を捕まえて調子に乗ってるみたいだが、おれが来たからには、このくだらないお遊びも終わりだぞ」


「雑魚って……。もしかして、ここにいる同級生たちのことを言ってるのかい? そういう言い方はよくないな」


「ちびのくせに教師ぶりやがって」


「一応、教師なんだけどな。司祭長にも認められた……」


「うるさい! お前ら、行け!」


 自分が来たからには……とか言ってたけど、結局人を動かすんだな。人を動かせるのも器量の1つと、カリム兄様が教えてくれたけど、クモワースにどれだけあるか見ものだね。


 さてクモワースに指示されるまま、取り巻きの生徒たちが真っ直ぐ僕の方にやってくる。


 すると、取り巻きたちはあっさり罠にかかった。地面の糸を引くと、先ほどの女子生徒たちを絡め取ったネットが土の下から現れる。

 弾かれるように飛び上がると、その上にいた取り巻きたちを一気に捕まえてしまった。

 先ほどの女子生徒たち同様に、絡め取られてしまう。


「動けない〜」

「くそ! 出せよ~」


 縄で作った網の中でジタバタと暴れる。

 僕はやれやれと肩をすくめた。


「さっき女子生徒たちが捕まったのを見てなかったのかい? それとも罠はもうないと思った? 残念。これぐらいの簡単な罠なら10秒どころか2秒で作れるんだよね」


「そいつらを離せよ。罠なんて卑怯だぞ」


「さっきの生徒たちに説明したけど、魔獣がいる森ではトラップや騙し合いが日常茶飯事だよ。この罠だって、ツチグモアリがよくやる手だしね」


「だから調子に乗るな」


 ついにクモワースが僕に向かってくる。

 いよいよ真打登場かと思われたけど。


「うわっ!」


 その前に僕が仕掛けたトラップに捕まってしまった。

 森の中に現れた砂の地面。立っているだけで、どんどん深みへと入っていく。いわゆる蟻地獄だ。


「なんだ! こりゃ!」


「アントリアムのトラップを真似た蟻地獄だよ。一度入ったら、抜け出せない、大きな蟻地獄だ。本物なら蟻地獄の中心にアントリアムがいて、君を食べようと牙を突き出しているところだね。さて、どうするの、クモワースくん」


「舐めるなよ!」


 クモワースは手で砂をかく。蟻地獄から脱出しようとするけど、ジタバタすればするほど、深みにハマっていく。すでに膝まで砂に浸かり、動けなくなっていた。

 流石に降参するかと思ったけど、クモワースはいい意味で僕の予想を裏切る。


 掻いた手を止め、砂に向かって手を翳す。


【風弾】!


「え? 魔法??」


 次の瞬間、クモワースの手から猛烈な勢いで風が巻き起こる。

 風の塊を蟻地獄に叩きつけると、舞い上がった砂柱と共に、空へと飛び上がった。残念ながら着地こそ決まらなかったけど、僕が仕掛けた蟻地獄から脱出してみせる。

 教え子の対応力に、僕は思わず拍手を送ってしまった。


「見たか! ちび教師! お前のちゃちなトラップなんて、おれには通じないぞ」


「すごいすごい。クモワースくん。君、魔法を使えるんだね」


「なっ! な、なんだよ、それ。べ、別にお前に褒められたってうれしかないぞ」


「折角、人が褒めてるのに。素直じゃないんだから」


 なんか出会った頃のユランを思い出すなあ。

 まあ、向こうはクモワースの1万倍は過激だったけど。


「さて、いくらなんでも、もうトラップはないだろ」


「そうだね。じゃあ、そろそろ逃げようかな」


「あ! こら! お前、魔獣役だろ!! 戦え!!」


「戦ったら、君が怪我するじゃないか」


「け、怪我? そんなもんするか! お前、いちいち癪に触るな!」


「悔しかったら、僕を捕まえてみることだね」


「待て!」


 僕はクモワースに背を向けて本格的に逃げる。

 そのあと、クモワースは必死に追いかけてきていた。


(取り巻きに頼ってるのかなって思ったけど、この速度でちゃんとついてくる。それに意外と根性あるな。…………それだけ、僕のことが癪に触ったのかもしれないけど)


「くらえ!」


 走りながら【風弾】を放つ。

 かなり魔法に慣れてるようだ。

 走りながら魔法を撃つって結構難しいんだけどね。


 ただ精度が悪すぎる。

 僕は躱すまでもなく、魔法は近くの木の枝を貫く。


「クモワース、僕を狙うのはいいけど、周りに被害が及ぶのはダメだよ。生徒に当たったら危ないだろ」


「だったら、お前が当たればいいんだ」


(それじゃあ、八百長じゃないか。やれやれ、ちょっとお灸をすえる必要がありそうだ)


 僕は走りながら、手近にあった数本の木を叩きまくる。

 折るほどの力は入れてない。その代わり、大量の葉っぱが落ちてくると、後ろから迫るクモワースの視界を奪った。


「くそっ! どけっ!」


 クモワースは落ちてきた葉っぱを払いのける。

 やがて視界がクリアになると、僕がいないことに気づいた。


「ちび教師、どこへ行った? もしかして、あいつ。おれに恐れをなして逃げたな。ククク」


(ずっと逃げていたじゃないか。君が捕まえられなかっただけで。やれやれ)


 しばらく周辺の様子を伺う。

 その場を動かないのは、いいポイントだね。

 多分、僕のトラップを警戒しているのだろう。


「黒板消し?」


 やがてクモワースはあるものが木の枝の上に乗っていることに気づいた。森にあるはずのないものを見て、さすがのクモワースも目を点にする。

 すると、腹の底から笑い声を響かせた。


「なんだなんだ? 授業初日の仕返しのつもりかよ。幼稚くさいなあ」


(その幼稚くさい仕掛けを最初にしたのは、君だったはずだけどな)


「誰が引っ掛かるかよこんなもん」


 クモワースは木に登り、枝の上に置かれていた黒板消しを拾い上げる。

 次の瞬間、妙な感触に気づいた。


「ん?」


 黒板消しに糸が着いていた。

 それを思いっきりクモワースが引いた瞬間。


 スコンっ!!


 クモワースは顔面に木の枝の束が当たる。

 まるで金槌のようにクモワースの顔面をヒットすると、そのまま木から落ちてしまった。当たった衝撃に半分意識を失ったクモワースは受け身も取れず、落下する。


(やれやれ)


 僕は魔法を使って、落下地点の地面を柔らかくする。

 クモワースは地面に包まれるように優しく受け止められた。


「自分が知ってる罠だと思って、油断しちゃダメだよ。……って、聞いてないみたいだね」


「ハラヒレホラヒレ……」


 完全に目を回している。

 クモワースにはいいお灸になっただろう。


 そうこうしていると、罠から脱出した生徒たちがやってきた。

 後ろにはゾーラ伯爵夫人が控えている。どうやら夫人に助けてもらったらしい。


「結局、みんな僕の罠に引っかかっちゃったね?」


「いえ。ルーシェル先生、1人生き残ってます」


「え?」


 それは生徒の声に反応したんじゃない。

 何か殺気めいた気配に、一瞬面を食らったからだ。

 僕は冷静に気配の元の方向に、身体を向ける。

 すぐ視界に見えたのは、ひらりと舞ったスカートだった。

 完全に僕の背後を取ると、すかさず手を伸ばす。

 思わぬ奇襲と、その女子生徒の動きには驚かされたけど、寸前のところで僕は回避する。


「ふぅ。危ない危ない」


 顔を上げる。冷たい瞳と交錯する。


「確か、君は……」


 僕は目の前に現れた人狼の少女を見つめた。


☆★☆★ WT原作 最終回 ☆★☆★

WEBTOONの原作担当作「ごはんですよ、フェンリルさん」が無事最終回を迎えました。

最後までおいしくて、モフモフなお話ですので、また読んだことがない方は是非読んでくださいね。

30話までなので割とサクッと読めます。よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

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