表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】公爵家の料理番様 ~300年生きる小さな料理人~  作者: 延野正行
第五部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

180/290

第175話 思いがけない再会

☆★☆★ 好評発売中 ☆★☆★


『公爵家の料理番様』単行本2巻、好評発売中です。

BOOK☆WALKER様、honto様で1位を獲得し、Amazonランキングでも30位まで上がりました。

お買い上げいただいた方ありがとうございます。

同月発売の『劣等職の最強賢者』単行本3巻もよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 入学式も無事終わり、クラス分けが発表される。


 クラス分けは入試の成績の上位から決まり、それをA、B、C……という風に5クラスに分けていく。

 僕、リーリス、ユランは最上位のAクラスになった。


「良かった……。ルーシェルとユランがいて」


 リーリスはホッとした様子だった。

 家では活発なお嬢様だけど、僕と初めて会った時のように知らない人を見ると過度に恐れる傾向があるからだろう。

 でも、気持ちは僕も変わらない。初めての学校だ。山の暮らしが長くトラブルには慣れているとはいえ、それでも魔獣相手と人間相手は違う。それも同い年の子どもがこんないっぱいいるというのは、300年生きてて初めての経験だ。


 なんか意識するドキドキしてきたな。


「はあ……。我はもう疲れたぞ。早く家に帰りたい」


「まだ授業も始まってないのに泣き言かい、ユラン」


 ジッとしていられない性格のユランは、すっかりお疲れの様子だ。

 自分の名前が書かれた机に着くなり、突っ伏してしまった。


 しばし他愛もない話をしていると、いよいよクラスの先生が入ってくる。


「え?」


 僕も、そしてリーリスも目を丸くする。

 ユランだけがぼんやりと顔を上げるだけだった。


 まず目を引くのは、美しく長い髪だ。

 薄くもなく、濃くもない青――まるでそれは氷の削り出したように美麗な髪色だった。

 真っ白な肌に、大きな眼鏡。そのレンズの向こうに見えるのは、アメジストのような瞳だった。


(え? なんでこの人がここに?)


 そう。僕はその人を知っていた。


 先生は教壇に立つ、帽子を取って深くお辞儀した。


「Aクラスの担任になりましたアプラス・アー……じゃなかった、アプラス・フル・ルヴィニクです! よろしくお願いします」


 ニコリと笑う。

 すると、僕たちと目が合った。


「あ、アプラスさん!」


 間違いない。

 アプラスさんだ。

 今頃カーゼルスさんと屋敷でラブラブな生活を送ってるはずなのに、なんでジーク初等学校にいるんだ?


ルーシェルくん(ヽヽヽヽヽヽヽ)


「は、はい」


「アプラス先生(ヽヽ)ですよ。めっ!」


 アプラスさんは僕に目配せする。

 その姿があまりにチャーミングで僕は思わず固まってしまった。


 アプラス先生(ヽヽ)は何事もなかったかのように予定を進めていく。

 学校生活をする上での諸注意や、これからの予定を簡単に説明する。さすがカーゼルスさんを育てた家庭教師だけあって、子どもの扱いにも慣れている様子だった。


 僕は雪山での怖いアプラスさんと、ちょっとおっちょこちょいなアプラスさん、そしてカーゼルスさんとラブラブなアプラスさんを見ているので、教師のアプラス先生(ヽヽ)は何だか新鮮に見える。


 最初、大丈夫かな? って思ってたけど、優秀な生徒が多いAクラスをうまくまとめていた。


「じゃあ、ここからはみんなのお名前を教えてもらおうかな。自分の名前と、そうね……好きなことを教えてちょうだい」


 アプラス先生に促され、自己紹介が始まる。僕たちのグループの中で、最初に席を立ったのはリーリスだった。


「リーリス・グラン・レティヴィアです。……えっと、好きなことは薬草を育てることです」


 ちょっと頬を染めながら、リーリスは自己紹介をする。

 まだ周囲の空気に戸惑っているみたいだけど、周りの印象は上々みたいだ。


「かわいい……」

「お人形さんみたい」

公爵(グラン)って、公爵令嬢?」

「公爵令嬢と同じクラスなんて」


 早くも話題の中心になっていた。

 リーリスの可愛さと、その名前はさすがにインパクトがあるよね。


 次は僕に自己紹介が回ってきた。


「ルーシェル・グラン・レティヴィアです。好きなことは料理を作ることです」


「え? 同じ公爵家の人間が2人?」

「そういえば、どこか気品を感じますわ」

「剣術の入試試験で見ました」

「俺も見た。大人の騎士に勝ってたぞ」

「ちょっとかっこいいかも」


 僕が気品? かっこいい?

 公爵家の人間ではあるけど、300年も山で生きてきて、気品なんてないと思うけどなあ。


 さて、最後はユランだ。

 ちょっとけだるそうに立ち上がったユランは、ややぼんやりした表情で自己紹介を始めた。


「試練の竜ユランだ。……好きなこと? うーん…………肉を食うことだな!」


 何故か最後は自信満々に告げる。


 ゆ、ユラン!!

 最後はともかく盛大にネタバレしてる。

 試練の竜ってのいう必要ないよ。

 みんなにバレたら、大変なことになっちゃう。


「あっ……。しまった。試練の竜というのは言っちゃダメだったんだ。お主ら、全員今言ったことは忘れよ」


 もう遅いって、ユラン。


 みんな完全に引いてるし、今まで一番インパクトがある自己紹介だったよ。

 どうしよう……。かくなる上はみんなの記憶から本当に抹消しようか。

 一応、そういう魔法は持っているけど。使ったら怒られるかな。


 静まり返る中で、クスクスと笑い出したのはアプラス先生だった。


「自分が竜だなんて。ユランさんはお茶目なのね」


 笑い続ける。

 それに釣られて、生徒も笑い始めた。


「ユランさんって面白い!」

「ユランって名前だけ?」

「私もお肉好きだわ」

「やれやれ。エレガントからは遠いね」


 様々な意見が噴出する。

 良かった。うまく誤魔化せた。

 ナイス! さすがアプラス先生。こういう緊急時も冷静に対処するなんて。

 こう言っちゃもうダメなんだろうけど、僕より長く生きてるだけはある。


「違うぞ! ユランは本物のりゅ――がぼぼぼぼ!」


 僕はユランの口を塞ぐ。


 はい。それ以上は黙っておこうね。


 一波乱あったけど、Aクラスのみんなが優しい生徒ばかりで良かった。

 このクラスならやっていけそうな気がするよ。



 ◆◇◆◇◆



 学校の説明や案内も終わる頃には、昼を過ぎていた。

 もうお腹ペコペコだ。

 最後にクラス全員で長テーブルを囲み、昼食を取ることになった。


 ここではコース料理形式ではなく、パン、スープ、副菜、主菜、デザートなどが1度に出てくる形式だ。


 本日の料理はコッペパンに、蜊とベーコンのスープ、馬鈴薯と貝柱のドレッシングサラダ、主菜は豚肩肉と春野菜の蒸し煮で、デザートはバニラアイスになる。


 祝いの席のディナーと比べると、質素に思えるだろうけど、一般的な貴族の料理に近いものだ。

 特に今は冬も明けたばかりの春先で、材料も揃っていない。これだけの料理を作れるだけでも十分だった。


「うん。なかなかいけるな!」


 試練の竜ことユランの口にもあったようだ。

 夢中で食べている。その食べっぷりからして、どうやらお腹が空いていたらしい。


「びっくりしました!」


 僕はコッペパンを千切り、スープに浸しながら言った。


 横に座っているのは、アプラス先生だ。


「まさかアプラスさんが、僕の担任だなんて」


「私も決まった時は驚きました」


「どうして、ジーマ初等学校の教師を?」


 リーリスが尋ねる。


「実はカーゼルス様は正式にご子息様に家督を譲られたの。といっても、もう私が嫁いでいた時は実質ご子息様が取り仕切っていらっしゃったのだけど……。隠居にするに当たって、どこに住もうかという話になって」


 話の流れで、アプラスさんが今後何をしたい? ということになり、悩んだ挙げ句アプラスさんが下した結論は……。


「お仕事をしたい、と言ったの」


「それで教師を選んだんですか?」


「ええ……。ちょうどジーマ初等学校の教職が空いていて、ダメ元で入校試験を受けてみたら、受かっちゃって」


 アプラスさんは元々精霊人だ。

 今はその関係は断たれたけど、知識や魔法技術はそのまま残っているらしい。

 だとすれば、基礎学力はかなり高いはずだ。

 ジーマ初等学校は名門。その教職になるには、高い専門知識が必要になる。だけど、アプラスさんなら納得だ。


「今は王都にある別邸で暮らしているの」


「じゃあ、カーゼルスさんも王都にいるんですか?」


「ええ! カーゼルスも騎士団の教官に戻って働いているわ」


 2人とも働いているのか。

 カーゼルスさんもやるなあ。もう50を過ぎているのに、騎士団の教官なんて。


「ずっと2人でゆっくり余生を暮らすのかと思ってました」


「私もそう思っていたんだけど、ずっと家に引っ込んでいるのもお互い飽きちゃって」


 へぇ……。そういうこともあるんだな。


「ああ。そうだ。肝心なことを言い忘れていたわ、ルーシェル」


「はい? なんでしょうか?」


「学校司祭長がまた会いたいそうよ。後で校長室に着いてきてくれるかしら」


「学校司祭長……アルテンさんが?」


 なんだろ?


 もしかして、僕……早速なんか無自覚に何かやらかしてしまっただろうか。

 

☆★☆★ 8月刊告知 ☆★☆★


8月8日には『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』の単行本6巻が発売されます。

あと2週間で発売されますので、こちらもよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第2巻12月15日発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ版もよろしくお願いします
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シーモア様にて2巻発売!
↓※タイトルをクリックすると、シーモア公式に飛びます↓
『宮廷鍵師、【時間停止】と【分子分解】の能力を隠していたら追放される~封印していた魔王が暴れ出したみたいだけど、S級冒険者とダンジョン制覇するのでもう遅いです~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス9巻 5月15日発売!
70万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




3月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本3巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



最新作です!
↓※タイトルをクリックすると、ページに飛ぶことが出来ます↓
追放王子、ハズレギフト【料理】を極める~最強のもふもふ国家で料理番を始めます。故郷の国が大変らしいのですが、僕は「役立たず」だったので関係ないよね~



『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



<『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ