6.彼女の理由
これで最後となります。
「…ようやく終わったな。」
「はい、お疲れ様でしたローガン様。」
ローガンの言葉にリリーナは笑みを浮かべた。
「有難うリリーナ、お陰で少し気が晴れたよ。」
「いえいえ、お互い様ですよ。それに、まだ婚約破棄が出来た訳ではありませんからね。」
甘ったるい口調を止めてにこやかに微笑むリリーナを見て、ローガンは事の経緯を改めて思い出した。エレナがルドルフと会いに行っている事に気が付いていなかったローガンは、エレナが最近自分を構わなくなった事に不満を抱いていた。そんな時にリリーナが話しかけてきたのだ。
「エレナ・シュガー伯爵令嬢は彼女の姉であるアリアーナ・シュガー伯爵令嬢の婚約者、ルドルフ・パウダー伯爵令息に言い寄っているのをご存知ですか? 私、エレナ様を実際に見て思ったのですが…あの人はアリアーナ様から婚約者を奪いたかっただけなのだと思いますよ?」
最初は信じられなくてリリーナを罵倒した。しかし自分で確認して、それが事実なのだと思い知らされたローガンはショックを受けた。そしてエレナに対して強い怒りを抱いた。リリーナはそんなローガンを肯定し、エレナを苦しめてやろうと言ってきたのだ。何故ローガンの味方をしてくれるのか理由を聞くと、リリーナは微笑んだ。
「…私の母親が同じだったんです。エレナ様と同じ理由で、父と結婚しました。」
リリーナの母親は自分の妹が気に入らなかったようで、当時妹の婚約者であったリリーナの父親であるソルト子爵を奪ったそうだ。結婚後にソルト子爵は愛しているのが自分だけだと知り、リリーナの母親とリリーナに冷たく当たるようになった。そしてリリーナの母親は夫人としての勤めをまともにせず遊び呆け、リリーナに愛情を注ぐ事もなく病でこの世を去ったらしい…。ソルト子爵はすぐに新しい妻を迎え、2人の間にはリリーナの腹違いの弟が生まれた。リリーナとは違ってソルト子爵と義母から大切にされる異母弟を見て、リリーナは心の底から母親を恨んだとの事だ。
「…だから私、母みたいな女が凄く気に入らないんです。私の気分が少し晴れそうだから、この機会にエレナ様を苦しめてやりたいんです。」
ローガンを愛しているからでも、ローガンを助けたいという善意でもない。リリーナ自身の憂さ晴らしの為にエレナを苦しめたいというリリーナの提案に、ローガンは悪くないと思ってしまった。
「さてと、両家に婚約破棄の事を伝えなくてはな。」
ローガンはエレナに、素直に婚約破棄を認めるならエレナの行いは言わないと言った。しかし、そんな口約束を守るつもりはない。エレナは嘘を付いたと思って憤るかもしれないがローガンの知った事ではない。むしろ、ローガンを愛していると先に嘘を付いたのはエレナだ。だからこれは仕返しであり、当然の報いだとローガンは思っている。アリアーナとの婚約解消後、すぐにエレナと婚約破棄するとなれば当然肩身は狭くなる。しかしエレナの行いを知れば、ローガンを侯爵家から追い出す程の事にはならない。むしろエレナの方がシュガー伯爵令嬢としての立場が悪くなるのではないかと内心で笑みを浮かべた。
「ねぇローガン様。折角ですし、エレナ様との約束を守ってみるのはどうですか?」
機嫌良く今後の事を想像していたローガンはリリーナの言葉で我に返り、疑問を浮かべてリリーナを見た。
「ローガン様は意図しなかったと思いますが、“俺は、君が俺と婚約した本当の理由とパウダー令息に君が言い寄っていた事を話す”と言ったのです。俺は、とね。それはつまり、私から話すなら口約束を守った事になりませんか?」
ローガンの浮気相手であるリリーナの存在は当然隠す事は出来ない。そうなればリリーナに事実確認の為に両家から話を聞きにくるのは当然だ。だからその時に…
「ふはっ! あぁ、それは最高だな!!」
ローガンは心の底から楽しそうに笑い、リリーナも微笑んだ。ローガンとリリーナ、2人は愛の為ではなく悪女を陥れる為に手を組んだ者同士だ。ローガンとエレナの婚約破棄が成立すればもう関わる必要はない。けれどもしかしたら、リリーナと隣で歩いていく未来もあるのではないかとローガンは思った。
「…やれやれ、単純ですね。ローガン様は。」
ボソッと、独り言を呟いたリリーナは呆れた様子で機嫌が良さそうなローガンを見ていた…。
悪役達しかいない婚約破棄のお話でした。誰かを陥れる為、利益の為といった愛情以外の理由で結婚するのが悪いとは思いません。しかし結婚後に相手を大事に出来ないのであれば駄目ですよね。ヒロインの婚約者を奪った後に、ヒロインがさらに高スペックなヒーローを婚約者にするとすかさず奪おうとする悪女がいますが、今の婚約者大事にしなよクズだけど…と思う事がある作者だした 笑
最後まで読んで下さりありがとうございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです(*^^*)




