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城出姫の旅  作者: のん
君が残した忘れ物
8/30

08.引き離された時間軸




「さぁお着替えをなさってください。」

「え。ちょっケニー!!!」


ケニーに連れてゆかれ舞踏会のドレスの前に立つ。


そして気がついた。



「服が・・・・違う。」

「服、でございますか?ドレスでございますよ?」


私がさっきまで着ていたものは確かに。

カオスの妹、メリー様の洋服だった筈。

なのに・・・・。何故。

私が今身につけている物は正しく。

この城を出ていった日の服。


「・・・・何故。」


*** *



「エミィ様?」

「・・・・・・・・・・。」

「エミィ・モロガン!!!」

「・・・・・ハッ」

「私と一緒に踊って頂けませんか?」

「え。」


エミィ・モロガンは。

一人、ぼーっとしていた。


周りを見渡すと既に舞踏会は始まっている。


エミィの前に立ち、手を差し伸べるのは。


皇子の様な容姿を持つ男。


「ハラン・ブルー。」

「へ。」

「俺の名前。」


静かに囁く彼。

そんな彼は何処と無く雰囲気があの人に似ていた。


「一緒に、踊って頂けますか?」

「え、えぇ。」


ハランは妖しい笑みを浮かべエミィの手をとる。


「「・・・・・・・・。」」


無言で踊り続ける。


「まぁ。エミィ様ですわよ?それにあの方は・・・・まさか、ハラン様?」「何故、ハラン様が此処に!?」



「え。彼方は一体何者・・・・!?」

「俺?んーっと。皇子☆」

「何処の?」

「アロネダの。」

「・・・・・!?アロネダの皇女は私ですわ。」

「だぁかぁら。婚約者だっつーの。」

「え。えぇぇ?」


ハハっと。

彼は微笑む。

その微笑は何処か冷たい。


*** *



「あら。エミィ。」

「お母様。どういう事ですの?婚約だなんて聞いていませんわ。」

「いーじゃない。こーんな素敵な方。滅多に見つかりませんわ。」

「そんな・・・・・・・・・・。で、でもっ私はまだ14歳。婚約など・・・・」

「婚約は17。それまでの間、彼方には皇女として。きちんと勉強して頂きます。」


エミィ・モロガンは混乱する。


何しろ昨日までの光景と、180°違うからである。

昨日まで。

そう。

昨日まで・・・・。

彼女はカオス・ロリッタという。

一人の青年に恋に堕ちていたのだから。


いや。

昨日という表現は可笑しいであろう。

別の時で。

恋に堕ちていた。



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