08.引き離された時間軸
「さぁお着替えをなさってください。」
「え。ちょっケニー!!!」
ケニーに連れてゆかれ舞踏会のドレスの前に立つ。
そして気がついた。
「服が・・・・違う。」
「服、でございますか?ドレスでございますよ?」
私がさっきまで着ていたものは確かに。
カオスの妹、メリー様の洋服だった筈。
なのに・・・・。何故。
私が今身につけている物は正しく。
この城を出ていった日の服。
「・・・・何故。」
*** *
「エミィ様?」
「・・・・・・・・・・。」
「エミィ・モロガン!!!」
「・・・・・ハッ」
「私と一緒に踊って頂けませんか?」
「え。」
エミィ・モロガンは。
一人、ぼーっとしていた。
周りを見渡すと既に舞踏会は始まっている。
エミィの前に立ち、手を差し伸べるのは。
皇子の様な容姿を持つ男。
「ハラン・ブルー。」
「へ。」
「俺の名前。」
静かに囁く彼。
そんな彼は何処と無く雰囲気があの人に似ていた。
「一緒に、踊って頂けますか?」
「え、えぇ。」
ハランは妖しい笑みを浮かべエミィの手をとる。
「「・・・・・・・・。」」
無言で踊り続ける。
「まぁ。エミィ様ですわよ?それにあの方は・・・・まさか、ハラン様?」「何故、ハラン様が此処に!?」
「え。彼方は一体何者・・・・!?」
「俺?んーっと。皇子☆」
「何処の?」
「アロネダの。」
「・・・・・!?アロネダの皇女は私ですわ。」
「だぁかぁら。婚約者だっつーの。」
「え。えぇぇ?」
ハハっと。
彼は微笑む。
その微笑は何処か冷たい。
*** *
「あら。エミィ。」
「お母様。どういう事ですの?婚約だなんて聞いていませんわ。」
「いーじゃない。こーんな素敵な方。滅多に見つかりませんわ。」
「そんな・・・・・・・・・・。で、でもっ私はまだ14歳。婚約など・・・・」
「婚約は17。それまでの間、彼方には皇女として。きちんと勉強して頂きます。」
エミィ・モロガンは混乱する。
何しろ昨日までの光景と、180°違うからである。
昨日まで。
そう。
昨日まで・・・・。
彼女はカオス・ロリッタという。
一人の青年に恋に堕ちていたのだから。
いや。
昨日という表現は可笑しいであろう。
別の時で。
恋に堕ちていた。




