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城出姫の旅  作者: のん
月明かりが消えるまで
5/30

05.王宮の者と庶民の壁





1987年 7月10日 18:00



エミィ・モロガン救出1000ドル



「ねぇカオス・・・・。此処は、どこ?」


カオスがエミィ・モロガンを連れてきた場所は一面に野山が広がる所だった。

こんな所にエミィが来たことがある筈もなく、一人戸惑うエミィ。


「もうすぐで俺ん家着くから。」

「その前に。全てを説明してちょうだい。」

「・・・・分かった。

 ナターシャ・モロガン。つまり、君のお母様が、アロネダに命令を下したんだ。」

「命令?」

「あぁ。君をなんとしてでも誘拐犯から救いだせ、と。」

「誘拐!?私、誘拐など・・・・」

「分かってる。でも君のお母様は、君を信用している。

 君は絶対に王宮を逃げ出さないと。信じてる。」

「そんなっ・・・・。」

「そこで、君には賞金が賭けられたんだ。」

「賞金?」

「今は。1000ドルだ。」

「1000ドル!?そんな大金・・・・。」

「だから人々は、必死になって君を探している。」


「でもそこで、もう一つの命令が下されたんだ。よく聞いてくれ。」

「・・・・・・。」

「俺が、君を誘拐した事になった。」


カオスがエミィを連れ去っていたのだから、人々の眼にそのように映ったとしても、不思議ではない。


「俺の命は今狙われている。」

「どうしてカオスがっ彼方はただ、私を救ってくれただけなのに。」

「それでも!世間一般では通用しない。だから、一緒に逃げるんだ。」

「逃げる・・・・。どこへ?」

「分からない。ただ、誰もいない所へ。」

「・・・・・分かりましたわ。」


そしてエミィとカオスは共に、逃げ切ろうと約束した。


ーーーガチャッーーー


「さぁ入って?」

「おっお邪魔します」

「此処から、あるだけの食料と、洋服を持って行くんだ。

 ほら、ドレスじゃ目立つだろ?」

「でもっこんな事したら、彼方のご家族がっ」

「家族は。いないよ。」

「え」

「皆死んだんだ。王宮の奴らに。」

「え。」

「母さん、父さん、それと。妹のメリー・ロリッタ。」

「王宮・・・・。ゴメンナサイ。私と関わりの深い人物やもしれません。」

「いんだよ。もう、過去の話だから、さ。」


カオスの瞳は哀しみで満ち溢れる。

その瞳はエミィの瞳そのものだった。


「・・・・カオス。」


エミィには、カオスの苦しみが痛いくらいによく分かる。

何故なら彼女はいつも。

孤独だったから。

どんな偽りの愛でもいいから、欲しかった。

それがどんなに辛い愛であろうとも。

愛を求めていた。


「さぁエミィ。出発の時間だ。行こう。」

「ハイ。参りましょう。」




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