04.人々の変貌
1987年7月10日 15:28
エミィ・モロガン救出150ドル
エミィ・モロガンはナターシャの命令を知らない。エミィに賞金が掛けられ、カオスの命でさえも、狙われているという事も・・・・。
「ねぇカオス?」
「どした?」
「私、もう行かなきゃ。」
一刻も早く、城から遠い所へ。
「・・・・待って」
「え」
「もぅ少しだけ、居たい」
エミィに想いを寄せ始めたカオスはエミィの心を惑わす。
全てが初めてで、新鮮なエミィは彼の気持ちに気がつかない。
「ゴメンナサイ。さようなら。」
カオスに別れを告げ、走って来た道を引き返す。
城の者に勘付かれないように、ひっそりと。
夕焼けが彼女の頬をオレンジ色に染めた。
鋼鉄の中で14年間成長して来た彼女には、夕焼けという物が分からない。
「これ、は・・・・・・」
「夕焼けだよ?お嬢ちゃん」
「へ」
白い大きな帽子を被った叔父さんが、エミィに話しかける。
叔父さんはフランスパンを抱えており、パン屋さんだという事が分かる。
(何て、良い香りなのでしょう。そういえば私、2日間何も食べていなかったわ)
ーーーギュルルルルーーー
「お嬢ちゃん、腹減ってんの?食べてく?」
「いえ、結構です。急いでおりますので」
「そう」
愛想の良い叔父さんは店へと戻ってゆく。
此処は、私が居た世界とは、まるで違うわ。
温かくて、優しい世界。こんな世界を私は、幼い頃から夢見てた。
これからは、自由なのね。
この口調とも、お別れ。これからは姫という名を捨て、庶民として生活してゆく。
「あ、れ?お嬢ちゃんまさか・・・・・・」
「どうしました?」
さっきまでの笑顔は消え去り、変貌してゆく優しい叔父さん。
「エミィ・モロガン!?」
私のフードを無理やりのけ、叫ぶ。
「エミィ・モロガンだ!俺が見つけたぞ!150ドルは俺のもんだ!」
叔父さんは私を掴む。
「どういうつもりですの?離しなさい!」
「悪いねお嬢ちゃん、これも、生活の為なんだ。」
「やめなさいっ!」
いくら抵抗しようと、叔父さんは離さない。
ーーーバンッーーー
「オイコラ待てっ!」
瞬きをした瞬間。カオスが叔父さんの頬を殴り、私の手を獲る。
「え。カオス、何故此処に」
「いぃから。走るよ?」
「え」
カオスに連れられ、エミィは走る。人々を押しのけ、進んでゆく。
押しのけられた人々は、エミィの顔を見るなり、追いかけて来る。エミィは其処で、初めて気がついた。
叔父さんに外されたフードがそのままだという事に。
「カオスッ私の瞳を見て!!!」
カオスはエミィから顔を逸らす。
「私はエミィ・モロガンです。こんな事したら、貴方は・・・・・・」
「いぃんだ。」
「え?」
「今は、逃げなきゃ」
カオスはエミィを掴む手をより強くし。エミィを引っ張ってゆく。
その姿は、美しい姫を攫う、皇子の様であった。




