表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/356

第10話 温泉②

 居住地区の一画を整備するために大規模な工事に着手したが、そこから温泉が掘り起こされたことで人々に解放した。この異世界で温泉が掘り起こされることは珍しく、各国から温泉目当てに訪れる人もあるという。

 男女の脱衣所が設けられているので、キシャナはシェーナの手を引っ張って女性用の脱衣所へと入っていく。


「どうやら他に先客もいないし、私達の貸し切りだな」

「やっぱり俺は……」

「気持ちは分かる。でも今のシェーナが男湯に入ったら、パニックになるだろ?」

「それはそうだけど、何というか罪悪感が芽生えて……」

「私もここに何度か温泉に入っているけど、慣れてしまうものだよ」


 キシャナは一糸まとわぬ姿でシェーナの前に立つと、シェーナも覚悟を決めて後に続く。

 幼少の頃、シェーナは姉二人と風呂に入ることはあったが、前世で男子高校生だった浩太には刺激が強かった。姉二人からは恥ずかしがり屋な妹と見られて、騎士団に入団する頃には女騎士はシェーナ一人だったので風呂は人目を気にせずに入ることができた。

 シェーナが想像していた以上に広い露天風呂で開放感がある外の景色にうっとりする。男湯と女湯には仕切りが立てられて、男湯からは先客が誰かいるようで話し声が聞こえてくる。

 掛け湯を済ませると、二人は温泉に浸かる。


「なかなか気持ちがいいなぁ」

「ああ、異世界で温泉は初めてだよ」


シェーナは身体に溜まっていた疲労感が抜けて気分が高揚になる。

隣にいるキシャナは褐色の良い肌と縦長の耳を立てて、温泉を堪能している。

しばらくすると、キシャナは空を見上げてしみじみした声でシェーナに語りかける。


「本来なら修学旅行先の大浴場で浸かっていたんだよな」

「……そうだな。まさか親友が女ダークエルフになって温泉に入ることになるとは思わなかったよ」

「それを言ったら私もだよ。美人な女騎士とこうして並んでいるなんて思春期な前世の俺だったら羨ましい展開だな」

「今は違うのか?」

「さっきも言ったけど、慣れてしまったよ。十八年も女性をやっていると前世のような感覚はだんだん薄れてくるよ。最初は毎日鏡を見れば妖艶な女ダークエルフが拝めてラッキーだと思えたけどね」


 そんなものなのかとシェーナは思った。

 シェーナは異世界転生して、しばらくは自身の身体を鏡で見る度に恥ずかしさと罪悪感で現実を直視できない時期があった。時が経つにつれて自身が女性であることはある程度受け入れることはできたが、他の女性の裸体や男性からの告白や求婚は受け付けなかった。

 キシャナは温泉からあがると、シェーナにアドバイスを送る。


「しばらく私と温泉に通っていればシェーナも慣れるよ。経験者の私が言うのだから間違いないよ」

「その辺は努力してみるけど……」


 シェーナはキシャナの豊満な胸を見ると、温泉に浸かって赤く火照った顔に恥ずかしさを重ねて脱衣所まで駆け足で走り去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ