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史実編 41話

岐阜城城下は荒れ果てていた。

信澄は正則らの出立を待っての出陣だった為に少しばかりゆっくりする時間が出来た。

それで佐久間信栄と共に青年期を過ごした場所を巡っていた。


「おお、これは懐かしい。ここでよく奇妙様や勝蔵らと共に武芸の鍛練をしたものですな」


信栄が刀の傷だらけになった柱を見ながら言う。


「ああ、そこの弾痕は俺が付けたものだろう。いやまさかこうして岐阜に来ることになろうととはな」


「ええ、それにしても皆亡くなってしまいましたなぁ。三左衛門(輝政)は少し年下ですし……」


「うむ……奇妙殿、久太郎、勝蔵、勝九郎、忠三郎、九郎右衛門、藤五郎……。どれもこれも先に逝きおったわ」


そう言いながら木に触れる信澄。

彼らの死を防ぐことも出来たがあくまで未来を守ることに固執してしまった……。

そんな後悔が押し寄せてくる。

腕を震わせながら仲間のことを思い出しているとふと次男の元信の声が聞こえた。


「父上、そろそろ出立しても良い頃合かと」


「ああ、すまんな。すぐに行こう」


元信、信栄と共に陣に向かうと既に兵たちはいつでも出陣できる状態であった。

彼らを見渡すと織田家の戦友たちの残していった者たちが並んでいる。


「皆の者!我が伯父の総見院様は尾張の守護代の被官から名を挙げ天下を制された!志半ばで倒れられたもののこれは源頼朝にも足利尊氏にも勝るとも劣らぬ偉業である!そしてそれらを偉業を支えたのは他でもないお主らの父であり祖父である!此度が戦国最後の大戦となろう!見せつけるのだ!豊臣や徳川の者達に織田家の意地を!武を!威光を!!!そしてあの世の総見院様や権六、左近達が驚く戦をして見せようぞ!!」


信澄がそう叫ぶ。

それを見て織田秀則も佐久間勝之も滝川一忠も声を挙げる。


「いざ、出陣!!」


こうして信澄の最後の戦いが始まるのだった。

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