史実編 36話
前田利長の反乱未遂に対して家康は加賀討伐を決定。
信澄にも出陣命令が下るものの、利長が母を人質に差し出した為この戦いは回避された。
続いて発生した宇喜多家の御家騒動も家康が仲裁。
こうして大老のうちの2人を黙らせた家康が標的にした……と言うよりも自ら標的になったのは会津の上杉景勝であった。
「上杉景勝の謀反は明らかにござる!何卒上杉征伐を!」
江戸城内にてそう叫ぶのは越後の堀秀治の家臣の堀直寄である。
近国の緊急事態ということもあり、信澄も下野の蒲生秀行と共に江戸城に呼び出されており、耳をほじりながら聞いている。
「さすれば上杉討伐しかありませんな」
家康は大坂にいる為、代わりを任せている徳川秀忠の側近の土井利勝が言うと他の側近達も頷く。
「父上に確認致す。戦となれば蒲生殿に先鋒が任されよう」
「はっ。お任せくだされ」
秀忠の指示を受けた秀行が頭を下げる。既に家来のような振る舞いに秀忠は気を良くする。
「上杉と近い連中が心配にござるな。小田原征伐やそれ以前に上杉と行動を共にしていた連中めが」
秀忠の弟の松平忠吉が言うと信澄も頷く。
「前田、佐竹、真田にござるな。されど前田は内府殿に屈し、佐竹も父親は内府殿と親しく真田も嫡男が本多殿の娘婿ならば問題は無いでしょう」
「そう、織田殿の申される通り。越後侍従殿には公儀は全面的にそちらを支援すると伝えられよ」
秀忠がそう言うと直寄は平伏する。
こうして秀忠経由で伝えられた上杉謀反の疑いは直ぐに上方に広まり家康も上杉征伐を決定。
が……この動きを好機と見なす者達が動き出すのだった。




