史実編 33話
前田利家の要請に応じて大坂の前田利家の屋敷に集まったのは家康以外の年寄衆及び奉行衆に加えて織田秀信・秀雄、加藤清正、加藤嘉明、浅野幸長、小西行長、細川忠興、島津義弘、小早川秀包、立花宗茂、佐竹義宣らである。
しかしながら島津ら外様大名はそれぞれ取次の奉行衆に要請されただけで本気で家康と戦うつもりはなかった。
逆に家康の元には信澄を始め伊達政宗、最上義光、福島正則、池田輝政、黒田如水・長政、森忠政、堀秀治、蒲生秀行、藤堂高虎、織田有楽、大谷吉継らが集まった。
「結構集まったものだな」
信澄は辺りを回しながら義弟の細川忠興に話しかける。
「私や最上殿は内府様に関白様の事件の折にお助け頂きました。福島や池田らは内府様の娘を娶っておりますからのう」
「うむ、しかしお前は又左とも親しかっただろう。なかなか辛い決断をしたな」
「本気で戦になるとは思うておりませぬ。前田様もそこまで愚かではございませぬ」
そんなふうに話していると家康の側近たる本多正信がやってきた。
「甲府少将様、内府様がお呼びです」
「ん、相分かった」
官位上は信澄より上位の忠興に会釈すると信澄は家康の元へ向かう。
ほかの大名たちは具足姿だと言うのに家康と来たら呑気に私服で饅頭を食っている。
「ご無事で何よりです。前田らには困ったものですな」
「いや、あれに従う者共を炙り出そうと思ったのだが予想通りよ。加藤清正や浅野幸長も利家さえ黙れば大人しくなろう。残りは毛利輝元を除けば相手にならぬ」
「又左も大きくなりましたな」
「うむ、昔は信長公の傍で子犬のようにしておったものを……。で、貴殿を呼んだのは他でもない。前田利家を折れるように説得して欲しい。もちろん毛利や奉行共にバレぬようにな」
「なるほど、分かり申した。何とか取り付けましょう」
早速信澄は前田利長に密使を送りその日の夜に利家との密会を取り付けた。
そして指定された京坂間の小さな寺で利家と対面したのだった。




