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史実編 28話

信吉軍の壊滅の報は直ぐに田中吉政により堀秀政の元に届けられた。


「このクソたわけが!おめおめと大将を見捨てて逃げ出しおって!今すぐに孫七郎の所へ向かい討死して参れ!」


「な、何卒お助けくだされ!乱戦の中で我が主とも離れ離れになってしまったのです!」


予想外の雷を喰らい焦る田中吉政。

しかし秀政の方は彼に構っている時間はなかった。


「監物(堀直政)!孫七郎の所の敗残兵を即座に纏めよ。さっさと撤退するぞ」


「は?池田勢の救援は?」


忙しそうに動き回る堀家の家臣団に1人置いていかれた田中吉政が尋ねる。


「勝入を救援して死ぬくらいなら逃げた方がマシよ!お前も同じ考えだろうが!」


そう言われると吉政も反論できず堀勢は撤退を開始した。


「しっ、しかしこの先には榊原康政の軍勢がおります。凡そ五千ほどはおったはず。我が方は三千しかおりませぬぞ!?」


「ごちゃごちゃとうるさい男だな。その程度の差は差とは言わぬ」


「申し上げます!榊原康政の軍勢がこちらに迫っております」


「来たな。全軍迎撃準備!下馬し道沿いに伏せよ!」


秀政が命じると一斉に堀勢は散り散りになりそれぞれが配置に着いた。

そして間もなく、榊原康政率いる徳川別働隊が威勢よく進軍してきた。


「今ぞ!皆の者かかれぃ!」


秀政の号令と共に堀勢が榊原勢に攻めかかる。

突然の奇襲に榊原勢は耐えられず撤退した。


そこら中に転がる徳川兵の死体を見て田中吉政はウキウキしている。


「このままの勢いで家康の軍勢も打ち破りましょうぞ!」


「いや、もう良い。羽柴様への忠義は示せてたであろう。撤退するぞ!」


こうして堀勢は撤退。

長久手に取り残された池田・森勢に街道一の弓取りの刃が迫りつつあった。

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