史実編24話
免許試験で更新が遅れました。
すみません。
犬山城には既に多くの諸将が集まっていた。
幸いまだ戦いにはなっておらず信澄はギリギリのところで到着できた。
「此度の参戦が遅れた事、面目次第もございませぬ」
信澄は秀吉への着陣の挨拶の際にそう言って頭を下げ謝罪した。
「否、蘆田の一揆は秀勝が不甲斐ねえからじゃ。弟殿にワシの馬廻が無礼な真似したのも謝罪するでな」
「はっ。過分なご処置、恐悦至極にございます」
秀吉に平身低頭の信澄を池田勝入は不愉快そうに見ている。
「日向守殿、貴殿は信長公の甥御。左様に頭を下げては織田の名折れぞ」
この池田勝入という男、近頃では織田政権のNO.2と自負しておりかなり調子に乗っている。
実際、娘婿の森長可と三好信吉の所領を加えれば恒興の勢力は丹羽長秀に匹敵し、なおかつ長秀と違ってピンピンしている。
「なれば勝入殿こそ、織田の御一門に随分と偉そうな口を利かれるものじゃのう。三法師様後さがこれを見られたらどう思われるか……」
と、言い返すのは堀秀政。
賤ヶ岳の戦いの後には従五位下左衛門督に任ぜられており、官位の面では他の織田家臣を引き離し更に三法師の守役という事で三法師の代弁者のような振る舞いをしている。
「まあまあお2人ともその辺りで。日向守殿も参られた事ですし軍議を始めましょうぞ」
睨み合う二人を見て羽柴秀長がニコニコしながら宥める。……が内心ではかなり呆れていた。
「某は小牧山城に一斉攻撃をかけるべきと存ずる。兵数ではこちらの方が圧倒的に優位故に確実に家康と信雄を葬れましょうぞ」
と、末席の細川忠興が立案する。
「相手は徳川家康ぞ。左様な力技で倒せる相手では無かろう」
そう言って浅野長吉が舌打ちする。
2年前までは秀吉旗下の侍大将でしか無かった長吉も今では秀吉一門として織田家の武将達に嫌味を振りまいている。
仮にも陪臣に無礼な口を利かれ顔がみるみるうちに赤くなっていく忠興を見て横の丹羽長重はオロオロしている。
「まあ確かに力攻めはようはありませぬな。暫し様子を見るべきと存ずる。されどそのような口ぶりをされるなら浅野殿は何か良い策があるのでしょうか」
と高山右近が忠興に助け舟を出す。
長吉の方は何も良い策は考えていなかったのか右近を睨んだまま黙り込んだ。
「まあここは伊勢方面の軍勢と足並みを揃えつつじわじわと徳川の首を絞めていきましょうぞ」
秀長が言うと諸将も頷く。
これで纏まったかと思いきや加藤清正と福島正則が飛び込んできた。
「市松、虎之助!ここはそなたが来る場では無いぞ!」
尾藤知宣と神子田正治が叱責するが2人はお構い無しに前に出て秀吉に木板を差し出す。
「こちらをご覧くだされ」
そう言って顔を真っ赤にした2人から受け取った木版を見た瞬間、秀吉の体がプルプルと震え出した。




