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史実編 17話

ただいま戻りました。

柴田軍挙兵の知らせを受けた秀吉は七兵衛を呼び出した。


「日向殿、貴殿にはこのまま長島城を三介様とと共に包囲していて頂きたい。」


秀吉からの思いもよらない言葉に愕然とする七兵衛。


「なっ、何故にございます!」


「柴田勝家は日向殿の養父。その柴田を討つのは日向殿とて心苦しいのではと思いまして。何より長島に篭もる滝川一益は天下無双の将、三介様だけではちと不安が残りますので。」


「ふっ、ふざけるな!どうせ俺の事を心の底ではまだ信用しきれて居ないのだろうッ!?どうなんだサルッッ!」


七兵衛が激昂して秀吉を蹴り飛ばす。

その顔は信長その物だった。

それを見て秀吉の顔も変わる。


「ああ、そうじゃ!織田家の息があるうちは貴殿は信用出来ぬ!池田も丹羽も三介もじゃ!信用出来ぬで悪いかッ!?危険な橋を渡るより安全な橋を渡る方が得策じゃろうがッッ!」


「納得いかぬッ!俺も柴田討伐に参加させろ!」


「嫌じゃっ!日向殿はここで滝川一益と対峙せい!」


「キサマ、いい加減にしろよ……。この場で斬り捨て俺が天下人になってくれるわッッ!」


七兵衛が刀に手をかける。


「お待ちくだされ!」


と、そこで黒田官兵衛が割って入ってきた。


「我が殿は別に津田様を蔑ろにはしておりませぬ。ただ、策があるのです。そうでしょう、殿?」


「あっ、ああ。そうじゃ、ワシには策があってな。」


秀吉はそう言うと地図を指した。


「恐らくだが柴田の挙兵を知った織田信孝は動く。ワシらは近江に入り信孝が挙兵したら撤退するように見せかける。そうしたら必ず勝家めは仕掛けてくる。しかしどちらにしろかなり危険な戦になるのじゃ。それゆえ日向殿は後方にて滝川が動けぬように……そして柴田が片付いたら信孝を始末して欲しいのじゃ。」


「三七を俺が始末して良いのか?」


「ええ、恩賞も出しましょう。坂本と高島で如何ですかな?」


「分かった、飲もう。」


あまりの態度の変わりようにちょっとコケる秀吉。


「なら良かった。では滝川への備え、お任せ致しますぞ。」


秀吉がそう言うと七兵衛は出ていった。


「全く、信長様に似て乱暴な男じゃ。」


秀吉は裾を叩きながら言う。


「とはいえ旧織田勢力の中でかなりの力を持ちなおかつ才もあるのはあの男しかおりませぬ。しかしあの男が我らを裏切ることはありますまい。」


「そっ、そうなのか?」


「どうもかなり殿に従順です。恐らく利用価値を分かっているのでしょう。」


「なるほど、まあ我らも似たような者じゃが強かな男じゃのう。」


「だからこそ評価されているのでしょう。」


そう言って2人は笑うのだった。

その後秀吉率いる本隊は近江に向かい七兵衛は織田信雄と蒲生氏郷と共に長島に残った。


「んで七兵衛、どうやって落とす?」


信雄が聞く。


「左近は織田家随一の知将。そう簡単に落とせやしねえだろうな。」


「なら待ってろって言うのか?」


「オヤジが負けりゃ降伏するさ。無駄に戦うことなんてねえよ。」


その後、秀吉の予想通り信孝が挙兵し秀吉はそれに対応するために1部の兵を残して撤退、それを狙った佐久間盛政が中川清秀、高山右近に襲いかかり中川は討死し高山は這う這うの体で逃げのび黒田官兵衛の部隊にも猛攻を加えた。

しかし秀吉が異様なスピードで引き返しそれを見た前田利家、金森長近、不破直光が撤退すると柴田軍は壊滅、賤ヶ岳の戦いは秀吉の勝利で終わった。


そしてその報告を聞いた信澄は当初の約束通り信孝の籠る岐阜に向かったのだった。

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