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史実編 13話

「大変じゃ!!当主は三法師様となったぞ!!」


走ってきた佐久間盛政の口より会議の詳細が織田家の家臣達に伝えられた。


「おお、三法師様か!で、領土配分はどうなった?もちろんワシにも加増は……」


「バカ言うな内蔵助。俺たちは何もしていないじゃないか。」


「又左殿の申す通り北陸勢は叔父上が長浜13万石を手に入れただけ。その代わりに羽柴のサルは山城と河内を加増だそうだ!」


「山城……。あそこを取ったのは大きいですね。」


「ああ、猿が天下人だと公言しているようだ。」


冷静に分析する秀政と信澄。

その2人の元に佐久間盛政が走ってきて言う。


「お前ら喜べ!津田坊は亀山15万石、久太郎は佐和山9万石だ!」


「おおお!」


周りから歓声が聞こえる。

予定通りだったし既に秀吉と密約は結んでいたがそれでも信澄は高まる気持ちを抑えられなかった。


(明智殿……あなたの国を必ずや守り抜いて見せますぞ。)


「しかし羽柴殿が主導権を握っているとは驚いた。てっきり柴田様かと。」


と誰かが言うと皆頷いた。

確かに明智討伐の功労者とはいえ秀吉が勝家を出し抜くなど誰一人として予想していなかったからである。(信澄以外)

とにかく盛り上がっていると丹羽長秀がやって来た。

信澄以外は頭を下げる。


「皆の者、詳細は盗み聞きしていた者たちに聞いているだろうから説明はせぬ。早速、三法師様に拝謁するぞ。本丸に一刻以内に集まれ。」


「ははっ!」


皆が答え一刻後……。

本丸に上から下までの家臣が集まった。

最前列には柴田勝家、丹羽長秀、池田恒興、羽柴秀吉、滝川一益の席が用意されたが滝川一益は寝込んで秀吉は何故か来なかった。

そして次の列蜂屋頼隆やら国持ちの与力やらが座り上座の脇に信雄と信包と信孝、そして信澄が座った。


「七兵衛よ、サルは来てないようだな。」


「ええ、叔父上。三法師様も来られておりませぬ。」


「全く、何をダラダラしているのだ。めんどくさい。」


と表に出るのが信包は面倒くさそうだった。

そんな感じで諸将がコソコソ話していると扉が開いた。


「三法師様の御成です!!」


堀秀政がそう言うと諸将が姿勢を正す。

しかしその後入ってきたのは三法師を抱き抱えた秀吉であった。


「なっ……!!」


どよめきの声が聞こえるのを無視して秀吉は最上位に立つと声を上げた。


「三法師様の御前である。各々、頭が高い。」


「ふっ!ふざけるなぁぁ!織田家の当主になったつもりかッッ!」


と、顔を真っ赤にした佐久間盛政が刀に手をかけて言う。


「そうだ!いくらなんでも横暴が過ぎる!後見人と三七様に三法師様を渡されよッ!」


森長可も続く。

それにそうだそうだと武断派の諸侯が声を荒らげる。

羽柴寄りの者たちも頭を下げるのに抵抗していた。

それを見て纏まらないと察知した秀吉は信澄に視線を送った。

それを見て信澄は頷くと。


「ははっーー!」


と平伏した。


「しっ、七兵衛様が……。致し方あるまい!」


すると佐々成政や池田恒興らも頭を下げ最終的に残ったのは柴田勝家のみだった。


「柴田殿、頭が高いッ!」


秀吉がついに声を荒らげた。


「くっ!!!」


と、やっとの事で勝家も腕を震わせながら頭を下げた。

傍から見れば秀吉に織田家が屈したような光景であった。


そしてその日の夜、三法師の当主就任を祝う宴が秀吉主催で行われて諸将は秀吉に挨拶し始めた。

信澄も例外ではなく酒を持って秀吉に一礼すると酒を注いだ。


「先程は申し訳ない。わざわざ芝居に付き合わせてしまいましたな。」


秀吉も酒を注ぎながら言う。


「いえいえ、ああでもしなければ纏まりませんからな。それよりも約束の恩賞は……?」


「ああ、それでしたな。明智殿が亡くなら従五位下日向守の枠が空いておるのです。それに七兵衛殿を推挙しようと思うのですが。」


「それは忝ない。」


「はは。これで明智殿の後任として丹波を支配する正当性も出来ます。我が倅に色々とご教授してくだされ。」


「その役目、謹んでお受け致しましょう。」


そう言うと信澄は再度頭を下げ自分の席に戻った。


「すっかり丸め込まれてしまいましたな。」


隣に座る堀秀政が酒を飲みながら言う。


「ああ、見ろよ。蜂屋もあの勝蔵すらも頭を下げてる。五郎左や勝左はともかく俺たちはこうするしかねえよ。」


「ええ、そうですね。しかしこれで丸く収まるはずは無いでしょう。」


「ああ、オヤジも滝川も三七も黙っていないだろう。」


「いよいよ七兵衛様と三七様の決着ですな。」


「そうだな……まあ羽柴殿と思惑通りに進んだらの話だがな。」


そして翌日、七兵衛は大坂から亀山への移転のためにすぐに旅立つことになった。


「では茶々、達者でな。」


「七兵衛様……茶々は七兵衛様とご一緒しとうございます。」


「また近いうちに会えるさ。じゃあな。」


七兵衛は茶々の頭を優しく撫でると家臣を引き連れて旅立っていくのだった。

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