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史実編 10話

そう言えば僕の作品で始めて本作が6000pt突破しました。

ありがとうございます。

「なるほど、左近の代わりに七兵衛様を……。」


「はっ。このまま左近殿が来られぬ場合は七兵衛様を宿老としてですね。」


と佐々成政が柴田勝家に提案する。


「しかし左近の代わりより明智の代わりの方がしっくりするのう。左近の代わりは別に考えるべきじゃ。」


「お待ちくだされ、それでは七兵衛様が明智の娘と別れた意味が無くなります。あくまで七兵衛様と明智は無関係のものとして考えるべきかと。」


と前田利家。


「うーむ、しかしなぁ。やはりこう、いきなり今まで考えていたことを変えるというのはだな……。」


と中々まとまらない柴田勝家に対して秀吉は。


「孫平次、小太郎(堀尾吉晴)。ワシは宿老に池田殿を推そうと思う。」


「池田様、確かに上様の乳兄弟で尾張のご出身ゆえ問題は無いと思いますが……。」


「小太郎よ、何が気になるのじゃ?」


「そうなると津田七兵衛様のお立場が無いのでは?」


「堀尾殿。殿は津田様と内々に密約を結んでおられる。津田様は今更宿老などどうでも良いと思われているであろう。」


「そう、孫平次の言った通り既に七兵衛様はこちらの手の内にある。その中で池田殿を釣る餌も用意したのじゃ。すぐに呼んできて欲しい。」


「はっ。」


秀吉に命じられ堀尾吉晴が池田恒興を連れてきた。


「いやー、池田殿。山崎では見事な戦ぶりでござった!」


「相変わらず声が大きいな、そなたは。何の用だ?」


「実はのう、左近殿が中々到着されんのじゃ。そこで左近殿の代わりにそなたを宿老に推そうと考えておる。」


「ふん、自分の派閥の味方を増やしたいだけだろう。今のところ、三七様を推すオヤジ殿の派閥の方が圧倒的に有利だからな。」


「まあまあ、そう言うなて。もちろん、宿老に見合った所領は出しますぞ。孫平次、持ってきて参れ。」


秀吉が呼ぶと中村一氏が摂津国の地図を持ってきた。


「説明致します。まず摂津のうち中川殿と高山殿の茨城と高槻は手出しできませぬ。次に兵庫と尼崎の二群は確定で池田様に。それから大坂も殿は池田様に任せようとお考えです。」


「待て待て、大坂は七兵衛様のお膝元だろう。迂闊に動かせるほど軽いお方じゃないぞ。」


「安心してくださいな。七兵衛様は既に別の所領で納得されておりますのじゃ。」


「なっ!七兵衛様まで説得していたか。叶わないな、お前には。」


「はっーはっは。明日には池田殿の宿老就任が確定するでしょう。なら明日の夜はパーッとやりましょうや。」


そう言って秀吉が恒興に酒を注ぐ。


「おお、こりゃすまんな。」


こうして清洲会議一日目の夜は明けていった。

そして2日目。


「津田坊、昨日の夜から随分とご機嫌が良さそうだが何かあったか?気持ち悪いぞ。」


明らかに二日酔いの顔の森長可が顔を洗いながら信澄に言う。


「んー?いやーそれは言えないなぁ。そういえば君の奥さんは鬼嫁だそうだねぇ。」


「んぁ?確かにせんは……とんでもねえ女だ。それとお前の気持ち悪いのになんの関係がありあがる。」


「えー、いずれ分かるよ。それより会議はどうなるんだ?」


「さあな、左近様はまだ戻ってこないし河尻はどうしたんだ?あの野郎、真っ先に逃げ帰ると思ったが未だに情報が入ってこん。」


「そう言えばそうだな。何があったんだか。」


信澄は本で知ってるのだがあえて知らないフリをした。


「おい、毛利。河尻の野郎はどうした?」


「知らんのか。叔父上は一揆に襲われ自害されたぞ。」


「なっ。最後の最後で意地張りやがったか。しかしこれで平八郎に続いて河尻まで逝ってしまったか。」


「残念だな。河尻が生きていたら宿老候補になっただろうに。」


「あの野郎に任せたところで……。河尻の野郎……早すぎんだよ……。」


顔を洗っているのか泣いてるのか分からないが長可の目が潤み始めた。

そんな男泣きしている彼とは逆に信澄はルンルンである。

何せこの男、あの夜茶々と一夜を過したのである。

光秀との約束と今後の利用価値を考えれば妻には出来ないのだがとにかく信澄はルンルンであった。


その頃……信濃・福島城。


「ふっはっはっはっ。滝川一益よ。武田家を滅ぼした恨みを今晴らしてやっても良いが、その惨め姿で討たれたとなると末代までの恥と笑われよう。この器の大きい木曾義昌はそれは哀れだと思うのでな、何かくれるなら通してやろう。」


と髻を切り傷だらけの甲冑を着た滝川一益を見下げて木曾義昌が笑いながら言う。


「何かと行っても……今のワシには何も無い。」


「うーむ、なら通すわけには行かんなぁ。野垂れ死んでもらおう……む、待て。そなた信濃の国衆の人質を連れておるな?」


「なっ!人質を渡すなど出来ぬ!これは信濃の国衆達にとって大切な家族。其れを渡すなど!」


「なーにを言うか。ワシはこれより信濃を手に入れる。それには奴らが必要じゃ。お前にとってもあれはお荷物であろう。ワシが預かってやろう。」


「ならぬっ!それは断じて!」


「たーきーがーわ。お前は今や袋のネズミなのだ。お前をひっ捕らえて北条に差し出した方が容易く信濃の主となれる。そーこーを、人質を渡すだけで良いと申しておるのじゃ。どうじゃ、決めよ。」


「殿、ここは人質を明け渡した方がよろしいかと。」


と、脇に控える前田利益が進言する。


「くっ……仕方あるまい。ワシも権六のために早う戻らねばならぬ。しかし木曾義昌よ、そなたの野望が実ることは無いであろうな。」


「ふっはっはっはっ。そう言うておれ。いずれ信濃を手に入れれば甲斐も夢ではない。差すれば我が信玄公の跡を継ぎそなたらを滅ぼすであろう。アッハッハッハッハッ!」


こうしてやっとのことで滝川一益は信濃から出ることに成功した。

そんな一益の努力を他所にほかの宿老3人は一益の代わりを決めるべく集まっていた。


「ワシは七兵衛様を宿老にすべきと考えるが?」


「お待ちくだされ、オヤジ様。七兵衛様は御一門。宿老とは違うでしょう。ワシは上様の乳兄弟の池田勝三郎殿を推したいのですが。」


「勝三郎か……。確かに功績や経歴を考えれば問題は無いが……。」


長秀がそう言いながら柴田勝家の方を見る。


「ああ、勝三郎か!あれは確かに良き男じゃ。良し、勝三郎にしよう!」


と言うのであっさりと後任は池田恒興に決まった。

何故ここまで柴田勝家があっさり折れたのか。

それは池田恒興が派閥に無所属であるからだ。

例えば蜂屋頼隆は丹羽長秀の義兄弟だし森長可は滝川一益の派閥、前田利家や佐々成政などは自分の与力だ。

しかし池田恒興なら公平性かつ、利益で動く性格のため篭絡しやすいと勝家は考えたのである。

そうと決まったら勝家と長秀の行動は早かった(と言っても秀吉の方が先だが)。


「よお、勝三!宿老就任おめでとう。早速だがそなたにも宿老に相応しい立場を与えないとな!」


と勝家が恒興の肩を組む。

ちょっとめんどくさそうな顔をする恒興。


「あっ、ああ。ワシは所領よりも先ず織田家の行く末を案ずるべきだと思うのですが……。」


「そうだ、そうだな!とりあえず今日の夜は飲もう。ワシの部屋でな。じゃあな!」


とただ単に酒を誘った勝家であった。


「父上、確か羽柴殿も酒を飲もうと……。」


「庄九郎、お前オヤジ殿と飲んできてくれないか?」


「嫌ですよ、ちゃんと父上が行ってください。羽柴度の方は父上が来られるまでワシが代わりに行きますので。」


「くっそ……オヤジ殿とだけは飲みたくなかった……。」


と嫌そうな池田親子であった。


「なあ、七兵衛。あんたは俺か三七どっちが当主に相応しいと思う?」


信澄を呼び出した信雄が菓子をつまみながら聞く。


「お前らどっちにしても織田は滅びるんじゃないの?」


「なに?」


「当たり前だろう。お前らが伯父上ほどの傑物だとは俺は思えないね。」


「なら誰がいいんだよ。」


「俺くらいしかいないんじゃないか?武功は十分あげたぞ?」


「はは。確かにお前なら大丈夫だな。まあ三七は怒るだろうが。」


(こいつ本物のアホだ……。)


そう信澄が思っていると外から人が来た。


「津田様、中村でございます。我が主がお呼びです。」


「む、そういやもう夜か。わかった、すぐ行く。じゃあな三介。」


「おお、またな。」


中村に連れられて秀吉の部屋に入ると大方のメンツは集まっていた。


「おお、七兵衛様。もう皆飲んどりますわ!」


「そのようだな藤吉郎。にしても主役の勝三は来てないようだが?」


「父上なら柴田様のところに行かれましたよ。」


「ああ、可哀想に。あのオヤジと酒だけは飲みたかねえよな。」


と何故か爆笑する森長可。


「笑うな勝蔵。池田殿とて好んでオヤジ様の飲んでおられる訳では無い。」


「おお、忠三郎(蒲生賦秀)。お前いつ着いたんだ?」


「先程やっと着きました。いやぁ清洲は初めてなので中々に慣れませんなぁ。」


「そういや忠三郎は近江の生まれだから馴染みがないのか。近江に比べたら田舎だろ?」


「いえいえ、上様の故郷というだけで近江より素晴らしい所にございます。此度はお呼びに預かり光栄でございます。」


「ははっ。忠三郎は上様の婿。呼ぶのは当たり前じゃ。まあ飲まれい。」


秀吉が賦秀の杯に酒を注ぐ。


「藤吉郎、俺も頼む。」


「これは七兵衛様、失礼致しました。ささ、どうぞどうぞ。」


「よお、藤吉郎来てやったぞ。」


そう言って佐々成政と服部小平太が入ってくる。


「おう、内蔵助に小平太。待っとったで。ささ、飲んでくれよ。」


「小平太はともかく内蔵助は来て大丈夫なのか?」


信澄が不思議そうに聞く。


「俺はな、飲む時は賑やかな方が好きなんだよ。あっちはオヤジ様の五郎左殿と又左しかおらんしつまらんのよ。」


「はっはっは。内蔵助は賑やかな方が好きじゃからのう。お前の好きなもんも大量に用意しといたで。」


「おう、これは尾張時代が懐かしいな。じゃあ久しぶりに踊るか!」


「そりゃあいいね。桶狭間の後を思い出すぜ!」


と小平太。


「おう!ならワシもやったるわ!ささ、今日はどんどん盛りあがってくだせえ!」


「ワシ抜きで楽しそうだな……。」


「あっ、父上。楽しくない飲み会は終わりましたか?」


「ああ、とんでもなくつまらんよ。」


「池田殿ー!皆様、本日の主役の登場です!宿老に昇格された池田殿ですぞ!」


「おおおっ!」


一同が声を上げる。

こうして宴は大盛り上がりとなった。


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[気になる点] 佐々は秀吉とは犬猿の仲とか聴いてたけどこの時点ではそうでもなかったんですかね?
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