47話
明日から2日間休みます。
それと津田信澄について詳しく書いてるサイトで色々調べてたら色々と間違えてましたスミマセン。
南宮山 長宗我部信親隊
織田家に降伏したことで一見弱体化したように見られた長宗我部軍であるがデメリットばかりでは無かった。
むしろ織田家との関所を廃止したことにより国友や堺の鉄砲も手に入り旧式のものから最新式のものへと装備を更新していた。
「若殿、あれに見えるは奥州伊達の軍勢にございます。」
金子元宅が黒い甲冑で備えた敵勢を指さして説明する。
「確か当主はわしより二つ下の藤次郎政宗と言うらしいな。」
「はっ。しかし奥州は僻地ゆえあまり情報がありませぬ。」
「石高も年齢も近いとなると面白い!鉄砲隊前へ!」
大量の長宗我部軍の鉄砲隊が前に出る。
その後ろには軽装の足軽隊……一領具足が並ぶ。
「隼人に命を送れ!これより仕掛けるぞ!」
信親が指示を出すと長宗我部軍の先鋒が伊達勢に仕掛けた。
小規模な攻撃を繰り返し撤退を始めたのだ。
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東軍 伊達政宗隊
「殿、敵が仕掛けて参りましたぞ!」
「アホか、小十郎!あれは敵の罠よ!逃げる敵勢にあれを見せつけてやれ!」
「ははっ!」
「長宗我部め……四国は俺が頂くぞ。」
政宗が不敵な笑みを浮かべると鉄砲を持った騎馬隊が出撃した。
本来騎馬と鉄砲は別な存在であり組み合わせたところで精密射撃は不可能であった。
しかし政宗は精密射撃など求めていない。
騎馬による迅速な移動力で敵に近づき精神的に動揺を与えるのが目的なのである。
そしてその目論見は見事に成功した。
「若殿!騎馬が鉄砲を持って攻撃しており兵たちが動揺しております!」
金子が報告する。
「恐れるな!騎馬鉄砲など大したことはない!全軍俺に続け!」
そういうと信親は自ら信長より拝領した刀と降伏した際信忠より与えられた名馬に跨り自ら先陣を斬って伊達勢に突撃を始めた。
「小十郎!なんだあの突っ込んでくるデカイのは!」
政宗は想定外の突撃に少し慌てている。
「あの片喰紋の兜飾り……ッ!あれは敵の大将、長宗我部土佐守ですぞ!!」
「ほう!総大将自ら来るとは面白い!全軍撃ちまくれィッ!」
この時小十郎はあんたも突撃しないのかよと思ったがそこは内緒である。
対する信親は水流の如く敵の弾丸を交わしていた。
それほどまでに馬と彼の呼吸はピッタリだった。
「天下の織田家に逆らうとは笑止千万ッ!ここで俺が成敗してくれるッ!!」
立ちはだかる騎馬鉄砲隊はあっという間に弾き飛ばされる。
それを見て若殿を死なせまいとする一領具足も突っ込み一気に戦場は白兵戦へと持ち込まれた。
「クソっ!これでは竜騎兵が全く役に立たん!オレが自ら相手してやるっ!宴の始まりだァッッ!」
政宗自身も懐より日本の刀を抜き馬に股がった。
「お前ら!俺に付いてこい!」
こうして南宮山方面でも本格的な戦闘が始まった。
残るは七兵衛の布陣する松尾山である。
北では丹羽長秀率いる九州勢と柴田勝家率いる北陸勢が北条、佐竹、里見ら関東諸侯と激戦を繰り広げていたが松尾山の七兵衛とそのちょうど麓の穴山梅雪、真田昌幸らの率いる旧武田軍連合軍はただ睨み合っていた。
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「殿!何故動かれませぬ!」
吉継が机を叩く。
他の者も俺を厳しい目で見る。
「いや、なんか知らんがここにいるとやる気が出ないのだ……。」
「なんと優柔不断なっ!戦の前の威勢はどこに行かれたのです!先鋒の高虎は命を今か今かと待ちわびているのですぞ!」
「とは言ってもなぁ……」
ほんとに何でここまでやる気が出ないか分からない。
これが歴史の呪いってやつか?
そんなもんあるわけねぇよ。
と思いながらほんにゃへんにゃしていると足軽が駆け込んできた。
「殿!北畠宰相様がお会いしたいと!」
「なに、三介が!?」
そういえば三介は尾張を奪われて上様にぶちギレられて今回の戦は一兵卒程度の扱いを受けてたんじゃなかったのか?
「ともかく通せ。」
そう命じて入ってきた三介は今までの三介とは全く違うものだった。
覇気が違う。
「少将殿。頼む!ワシを貴殿の軍に加えてくれぬか!」
「なっ!少将殿って……。それにお前、雰囲気どうしたんだ!?」
「俺は……俺は……父上や皆の故郷を守ることが出来なかった……。だから今回の戦でせめて敵に一泡吹かせて散りたいのじゃ……。」
「しかしどこも入れてくれなかったのか?」
「そうじゃ。権六も五郎左も左近も俺を不甲斐ないやつと思うておる。あとはそなたしかおらんのだ!」
むむむむむ。
少しやる気が出てきたぞ。
三介を挽回させてやりたい兄心って奴か?
「よし!もうやるしかねえ!全軍下山し武田軍を打ち破れィッ!」
10年振りの武田軍。
どれほどの物か知らないが今の彼らはお家再興という志の元大いにやる気に満ち溢れているだろう。
うん?待てよ。なんで穴山梅雪がいるんだよ。
裏切ったじゃねえか。
「おい、源次郎!お前の親父や四天王当たりがいるのは分かるがなんで穴山が大将なんだ?」
「あのお方はそういうお方ですから……。」
「どうしようもないクズだな。討ち取ってしまうか。」
山をものすごい勢いで降りた俺たちはあっという間に武田軍の先鋒を叩きのめし第2陣の春日・内藤勢も粉砕した。
この頃になると東軍諸将に撤退の動きを見せるものが出始めた。
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東軍 佐竹義重隊
丹羽勢とそれまで激戦を繰り広げていた佐竹義重は元々家康に義理などなかった。
むしろ織田派の彼は周りが徳川に靡いたので仕方なく参戦していたのだ。
なら戸沢のように戦えば良い話だが義重は家康に着く道を選んだ。
それで来てみればどこもかしこも織田に押されている。
「もうそろそろ潮時じゃ。撤退するぞ。」
「何を申されます父上!まだまだここからが本番ではありませぬか!」
息子の義宣は16歳。
まだまだ戦い足りないようだ。
「馬鹿者。ここで兵を疲弊させてしまえば北条攻めに兵を出せんだろうが!我らは撤退し織田に降伏するぞ!」
そう言って佐竹勢が撤退すると北関東の諸将も我先にと兵を引き始めた。
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東軍 最上義光隊
「ちっ!何が坂東太郎だ!速攻で逃げておるではないか!」
義光は撤退していく佐竹勢を軽蔑の視線で見送った。
とはいえ義光自身もそろそろ自軍に限界が近づいているのに気づいていた。
棍棒はボコボコに変形し自身の兜飾りもひん曲がっていた。
対する毛利勢は大軍の甲斐あってまだまだ戦えそうである。
「ここは引くべきか……。」
義光はそう言って五分ほど馬を止めて考えた。
そして結論が出た。
「ここは逃げる!全軍撤退じゃぁ!」
だが最上の撤退は一味違う。
いわゆる史実における島津義弘のように捨て奸戦法を使って毛利勢に突っ込んだのだ。
まさかの先鋒に毛利勢は大混乱。
こうして最上勢も見事撤退に成功した。
これで戦場中央が空いたため中国勢総大将の羽柴秀吉は宇喜多勢らを北に動かし一気に北条軍は崩れこれも撤退を開始した。
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「見よ!敵が撤退していくぞ!」
崩れていく東軍の姿は俺の目にもはっきりと写った。
勝利……。その2文字が脳裏に焼き付く。
そしてついに眼前の武田軍も崩れ始めた。
しかし撤退していく武田菱の中にただひとつ、こちらに向かってくる旗があった。
「あれは……六文銭ッッ!!」




