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38話

中津城と柳川城に行ってきました。

とても良かったです。

それから最近、皆さんの感想が多くて嬉しいです。

文章で表してもらえるのが1番の励みになります。

これからもよろしくお願いします。

中富川 長宗我部元親


いよいよ決戦だ……。

相手は土佐の豪族でも弱った三好でもなく織田家一の実力者の明智殿と天下に名高い津田阿波守だ。

数はこちらが三万五千、向こうは三万だが兵の練度も武装もこちらが遥かに劣る。

ひとつ有難いことと言えば紀伊の雑賀の残党がこちらに加わっている事だが。


「御館様。主力の弥三郎様、別働隊の安芸守様ら配置につかれました。」


側近の谷忠兵衛が報告する。

この男ははじめはこの戦に反対していが最後は私に最後まで付き従ってくれると言ってくれた。


「うむ、十兵衛殿なら見抜かれているかもしれないが……。」


「とはいえ明智勢はこちらとの撃ち合いに手一杯でしょう。恐らく別働隊の対処に回す兵力は少ないはず。」


「であろうな、それで敵が揺らいだところを一気に全軍で突き崩す。しかし戦いは続きそうだな。」


「此度も勝利すれば織田は懲りるでしょう。差すれば我らの勝ちでござる。」


「そうだな、大将の私が揺らいでいては指揮に関わる。全軍かかれい!」


元親が采配を振ると同時に長宗我部軍が動き出した。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「動き出しましたね。」


俺は聞こえてくる怒号を聞きながら言う。


「ええ、しかし問題は別働隊の存在でしょう。川を挟んでの戦いの際にあの方は別働隊を使うことを好まれます。」


「私が対処に当たりましょうか?」


「問題なく、既に部隊を配置しています。それに抜かれたとしても……。」


明智勢には何らかの策があるようだ。

俺にも教えてくれないとは相当のことだろう。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

中富川中央 藤堂高虎隊


「全軍撃ちまくれッ!土佐の田舎侍など恐るるに足らずッ!」


高虎の怒号とともに大量の銃声が響く。

しかし長宗我部軍も負けじと竹束の後ろから銃撃を食らわせてくる。

その光景は戦国時代とは思えないものだった。

しかし織田軍に比べて長宗我部軍は次弾装填の速さがかなり早い。

織田軍が1発撃つ度に向こうは2発撃ってくる。

それもあり先鋒の藤堂隊はじわじわと削られていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

中富川中央 長宗我部信親隊


苦戦する織田軍を相手に長宗我部元親の嫡男、信親は上機嫌だった。

信長すらも認めた器量を持つその青年は天下無双と恐れられた織田軍を自分が追い込んでいるのが嬉しくて仕方なかった。


「見事だな、雑賀の鉄砲というのは!」


信親は隣の武将に感嘆の声を漏らした。


「我ら得意の三段撃ちです。あれは織田軍にも真似出来ますまい。」


そう言うのは土橋信治、雑賀衆の指揮官のひとりで土佐に逃れていた。

元々鉄砲を大量に保有している長宗我部軍に最強の鉄砲集団の雑賀衆が加わったのだから弱いはずがない。

織田軍の先鋒は崩れ始めていた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

中富川中央 仙石秀久隊


淡路の領主として四国の反長宗我部勢力を率いて左翼方面を担当していた仙石秀久は中央とは逆に長宗我部軍を圧倒していた。


「ふははははっ!長宗我部など所詮は田舎武者よ!進め!進め!」


秀久が命じると左翼勢はさらに攻撃の勢いを強めた。

長宗我部軍は皆、浮き足立ち、討ち取られるもの、逃げだすもの、命乞いをするものなどまるで四国を統一したとは思えない弱さだった。

ここで思慮深い将ならこれが罠だと分かり、進軍を止めただろう。

しかし猪武者の仙石と長宗我部憎しで動いている左翼勢にはそんなに考えは全くなかった。


逃げる長宗我部勢を追う左翼勢はそのまま川を渡り突撃しようとした。

すると1人、また1人と川底に足を取られ倒れていく。


「なっ、なんじゃッ!」


仙石が馬の足を止めて水面を見る。

すると地面に杭が打ち付けられていた。


「まっ、まさかっ……!」


その時にはもう遅かった。

左翼勢を狙う大量の銃口が姿を現していた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

中富川西部 長宗我部元親


銃声を聞いた時、優越感に包まれた。

恐らく仙石は罠を見抜けないだろう。

そしてまもなく、伝令が訪れた。


「申し上げます、左翼の福留様より報告。見事敵は罠にかかり半壊致しました!」


ほら見た事か。

さて仙石は死んだか……。


「我々の勝ちのようだ、別働隊の弥七郎はどうだ?」


「はっ!まもなく右翼の明智勢に襲いかかるかと!」


この時、私は勝利を確信した。

鳥なき島の蝙蝠と罵った信長もあの世で悔いておろうな。

自然と笑みが毀れた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「申し上げます!仙石権兵衛殿ら討死!」


藤田伝吾の報告を受けて青ざめる俺に対し明智殿は表情を変えなかった。


「右翼に長宗我部の別働隊が現れました!迎撃隊は敗走した模様!」


「明智殿!撤退し上様の援軍を求めた方が良いかと!」


「いえ、その必要はありませぬ。この戦は初めから我らの勝ちです。」


いや、わからん。

どう考えても負けだろう。


「まあ見ておきなさい。」


さらに長宗我部勢は進撃し明智軍、本陣まで迫っていた。

しかし、急に撤退を始めた。


「こっ、これは!?」


俺は唖然とした。

こんな事があるのか?


「簡単なことです、私はあのお方のことをよく知っています。だからこそあの方が最も恐れることをやっただけです。まあここまで追い込まれるとは思いませんでしたが……。」


俺にはさっぱりだったが明智殿は満足そうだった。

こうしてよく分からないが阿波決戦は織田軍の勝利に終わった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 元々鉄砲を大量に保有している長宗我部軍 ↑ この大量というのは何に比較してなんだろう。 前後の文からだと織田家に比してとも読めるし、近隣の毛利とも全国基準でとも考えられる。 そして、…
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