33話
こっから特にイベントがないので麒麟がくるの如くハイスピード展開です。
兵糧戦に移行してから数週間、本陣には珍しい客が来ていた。
「土佐家長宗我部当主長宗我部宮内少輔にございます。」
この男は土佐の一条家を乗っ取り今や土佐国主である。
「長宗我部殿は今や土佐を制し昨年阿波と伊予にも侵攻を始められました。そのご報告にとの事で。」
明智殿が説明する。
やはり四国担当は明智殿になったか。
「で、あるか。三好長治と細川真之の戦においての真之の支援ご苦労であった。」
「上様のお力添えがあったからにございます。これより三好を討つために更に阿讃両国に兵を出しまする。」
「ふん、鳥なき島の蝙蝠もなかなか使えるではないか。」
「あの、兄者。鳥なき島の蝙蝠というのは?」
俺の横に座る奇妙殿が小声で聞く。
「鳥なき島とは四国のことで蝙蝠は長宗我部殿のこと。つまりさしたる武将のいない四国では蝙蝠の長宗我部殿でも威張ることが出来るということです。」
「なんと、かなり煙を巻かれましたな。」
奇妙殿も含め意味を理解した連中が冷や汗を流すのに対して宮内少輔は余裕なようだ。
「私はホウライキュウのカンテンに候。必ずや上様のお役に立ちましょう。」
「ふん。気に入った。阿讃は切り取り次第といたす。それから倅の弥三郎に信の字を与えワシが烏帽子親となろう。」
流石の俺も宮内少輔の返しはさっぱり分からず何でも烏帽子親になったのかも分からなかった。
しかし明智殿は理解されていたようで嬉しそうだった。
会談が終わり俺は明智殿の所に行ってホウライキュウのカンテンの意味を聞くことにした。
「あの明智殿、先程長宗我部殿が申されたのはどういう意味なのですか?」
「ああ、ホウライとは唐に徳に優れた皇帝が現れた時に訪れる鳥、キュウは丘の事で岐阜のことを現しております。カンテンは鸛と鷆という鳳来と同じような鳥でござる。つまり長宗我部殿は蝙蝠と皮肉られたことに対して自分は鳳来だと皮肉で返し上様には気に入られたということです。」
なるほど、超人すぎる言葉の掛け合いだろ。
「ともかく四国は長宗我部殿が相手にしてくださるおかげで我らは中国と丹波に集中できる。それから婚儀のことですがな。」
「ああ、上様から明智殿に聞けと聞きましたが。」
「はい、年明けに行おうかと。婿殿もそれでよろしいですな?」
「はっ。楽しみにしております。」
そして年明け、遂に婚儀の時が来た。
姫の名前は海未と言い大層美人で礼儀正しい女子だったのが特に本筋に関係はない。
ともかく、これで俺は明智殿と義理の親子になり明智殿としても織田家の身内になれたので誰も損しなかった。
そしてその年の春、新婚生活が順調な俺は伯父上に呼び出された。
「七兵衛、只今参りました。」
「よう来た。まずはこの地図を見よ。」
そう言って伯父上が地図を広げる。
そこには畿内を中央とした諸大名の配置が事細かく記されていた。
「見ての通り丹波、有岡、三木と本願寺に与する勢力は既に我が軍が包囲しておる。先の木津川での戦で毛利には物資を送る余裕はなく雑賀のほとんどは根絶やしにした。いよいよ本願寺を叩く時が来たのじゃ。」
「はっ!であればその先鋒は私におまかせを。」
「いや、そなたは大将じゃ!」
「なっ!?」
本願寺攻めの総大将など大役中の大役だ。
一気に緊張感が漂う。
「なーに、そんな緊張するな。河内、山城、和泉、紀伊、大和の五カ国の兵を全てお主に任せるし何より力攻めにせよとは言うておらん。」
「えっ、力攻めにするんじゃないんですか?」
「向こうもこちらも被害が大きくなるのは望んでおらぬ。まず周辺勢力を叩きそのうえで講和する。それまでお主は本願寺を見張っていて欲しいのじゃ。」
「なるほど、そういう事でしたか。」
「左様、そしてそれが終われば長宗我部と共に阿波の三好を徹底的に潰す。それ故顕如めが退去した後の大坂にはお前が入り三好攻めの拠点とせよ。」
「はっ!では摂津は私に?」
「いや、大坂はいずれワシが本拠を築く。そなたはそれまでの城代よ。」
ちっ、つまんねぇと思ったら伯父上が笑いながら言う。
「その顔ではつまらんと思ったであろう。いずれそなたには畿内にもう1カ国与える。それまで我慢せい。」
えっ?もう1カ国!?でも前に大和頼んだら断られたしなぁ。
そう思いながら俺は伯父上に頭を下げ新たに高虎の縄張りで本拠地とした飯盛山城に戻った。
「はい皆さん、集まってください。」
俺が手を叩いて家臣たちを招集する。
ちなみにあまり紹介できていなかったので紹介しよう。
弟の信糺と信兼、重臣の渡辺兼重、堀田秀勝、赤尾新七郎。河内の国衆の池田教正、多羅尾右近といつもの3人。あとは別に話に出す必要は無いしなんならいつもの3人以外必要ない。
「皆の者よう聞け。本願寺攻めの大将を俺が任されることになった。」
そう言うと家中が一気に沸きあがる。
うるせえな。
「だが!戦はしないし大坂を荒らしてはならん。あくまで包囲網の指揮官だということだ!」
そう言うと一気に落ち込む家中。
こいつら単純すぎだろ。
「と、に、か、く!この戦が終われば俺は大坂城代といずれ畿内に1カ国頂ける。それまで我慢するように!」
「はっ、はぁ……。」
ちっ、めんどくせぇ。
こいつらには頑張ってもらわないと困るので俺は1人1人に喝を入れ出陣した。
そして包囲している最中に息子が生まれたりしたのだが有岡、三木、丹波が落ちたことであっさりと本願寺は降伏した。
あまりのしょうも無さに唖然としている俺のところに顕如とその一行が頭を丸めて出てきた。
いや元々丸めてるか。
一行は深深と頭を下げると二度と織田に逆らわないことを誓いそのまま大坂を出ていった。
こうして10年にも及ぶ石山合戦は終わりを告げたのだった。




