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25話

天王寺編最終章です。


@mayu03miyy

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紀伊が片付くと俺は再度上様に呼び出された。

隣には蜂屋様と原田様もいらっしゃる。


「そなたら3人を呼んだのは他でもない。松永のことじゃ。」


「松永と言うと天王寺では知らぬ間に消えており今も怪しき動きをしておりますが……。」


「そうだ備中。奴らは本願寺と内通していた可能性がある。それを問いただしに行かねばならぬ。」


「しかし松永は暗殺でも何でもする男ですからなぁ……。」


蜂屋様は少し嫌そうだ。

やはり松永弾正は恐ろしいのか……。

いや、誰かがやらなければならない。


「上様、俺にお任せくださいませ。」


「なっ、藤堂殿は陪臣……。それは些か問題があるかと……。」


「面倒くさいことを言うな備中。そもそもお前は松永との交渉窓口。お前にも行って貰うぞ。」


「えっ、ああ、わかりました。」


こうして俺と原田様は松永久秀を尋問するために多聞山城に向かった。


「原田様、私は松永様とお会いしたことがありませぬ。あのお方はどのようなお人なのでしょう?」


「一言で言えば恐ろしい。何を考えているか分からぬ。」


「そりゃあ悟られたらだめでしょう。

しかし息子の右衛門殿からはそのような気配は感じられませんでしたが?」


「息子は凡人じゃ。父の言うことを聞いておるだけで今回のことを漏らしたのも奴だろう。ともかく、私も松永が大和を支配できるように尽力していたが此度で愛想が尽きたわ。」


原田様はかなりお怒りのようだ。

そうこうしているうちに多聞山城に到着した。

城門の前では松永久秀が満面の笑みで待ち構えていた。


「おやおや、原田殿にそちらは……。」


「津田阿波守が家臣、藤堂与右衛門にございます。」


「ああ、息子とともに天王寺で戦っていた男か。噂は聞いておるぞ。」


原田様が目でこちらに話しかけている。

乗せられてはならないということか……。


「それにしてもわざわざ原田殿がお越しとは何の騒ぎでございますか?」


「どうもこうもない。我らは貴殿に聞きたいことがあり参った次第。」


「はて、なんのことでございましょう?」


とぼけるなよ……。お前のせいで俺達は……。


「そなた、本願寺と手を結んでおるのではないか?」


原田様の率直な質問に対して松永は顔色を変えずに反論し始める。


「その証拠はあるのですか?そもそもあの現場に私はおりませなんだが?」


「お主の息子の右衛門にでも頼んだのだろ?そうでなければ私が砦を出た事など分からん!」


「ははっ。証拠もなしに言いがかりをつけに来るとは笑止千万!上様には呆れましたなぁ!」


「なっ、なんと無礼な!」


俺が思うよりも前に原田様が刀を抜いた。


「原田殿、ここはワシの城であるぞ?そなたが刀を抜けばここにいる兵達は黙っておらぬ。」


周りを見れば松永の兵がこちらを睨みつけている。


「原田様、ここは刃を収めるべきかと……。」


「くっ……!」


「ご用件は以上ですかな?ならば政務の方に戻らせて頂きますが。」


「松永殿、何をお考えかはわかりませぬが私が防いで見せますぞ。」


「ほう……。そなたのような小僧が。よかろう、その時は受けて立とう。」


松永は笑いながら城に戻って行った。

俺と顔を真っ赤にし未だ怒りの収まらない原田様は事の次第を全て上様に報告した。

怒ると思っていた上様だったが予想に反し大いに喜ばれた。


「はっはっはっ!流石は松永じゃ。あの者にはそなたらでは敵わぬ。」


「上様……しっ、しかし!」


「良い、原田。やつの牙が見えし時が始末する時だ。その時までは泳がしておく。それから藤堂。長らくの務め、ご苦労であった。そなたは清水山に戻れ。褒美については追って知らせる。」


「ははっ!有り難き幸せにございます。」


「うむ、これからも七兵衛のことを頼むぞ。彼奴は適当な人間だからな。」


「ははっー!」


こうして俺は清水山に戻ることになった。


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