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番外 食後の秘密





以前、書いた短編番外です













(最近……アンナが何かを隠している……)






ジークフリートは自分の妃…アンナが夕食後、ちょくちょくどこかへ行っているのに気づいていた。

女中経由のグランドからの報告では…朝食後、王宮に出た後や昼食後もどこかへ行っているらしい。

そして、今日も…アンナはどこかへ向かう。



本人アンナは後めたいことでもしてるのか何なのか、尾行を気にしているみたいだが……全然、尾行している自分ジークフリートに気づいていなかった。



アンナは大広間から後ろを気にしつつ、中庭にやって来た。

ジークフリートは物陰からのその様子を見ていた。

(…………………何をしているんだ…?)

アンナは中庭の茂みの中でガサゴソと何かをしている。

(……………まさか…男と……?)

夕食後だけに関わらず、食事後…毎回、毎回呼び出されているのかもしれない。

だが…何故、食事後なのか?

男と逢瀬を重ねたいのなら、食事後じゃなくても…自分ジークフリートがいない時間帯は沢山あるだろう。

それとも…アンナはただ、呼ばれているから行っているのか?

アンナにその気がなくても、向かうがあって……素直な彼女はそれに従っているのか?

(…………まさか…〝また〟あの近衛兵か…?)

以前、中庭で逢瀬を重ねていた近衛兵。

アンナは友人だと言っていたが…やはりまた……。


そんな風に思っていた時、アンナがおもむろにその場所から立ち去った。

彼女は物陰にいたジークフリートに一切気づかずに後宮の中に戻って行く。

「……………」

ジークフリートは好奇心半分、嫉妬心半分でその場所に歩み寄る。





そして……その場所にいたのは…………。












◆◆◆◆◆







「にゃあ」




「…………なっ…⁉︎」

翌日の夕方ー…。

早めに仕事を切り上げたジークフリートの手の中には真っ白な子猫がいた。

瞳が綺麗なスカイブルー色の可愛らしい白猫だ。

自分の部屋に呼んだアンナは、その子猫を見て…ぷるぷると震えている。

その顔は真っ赤だった。

「ジッ…ジーク……その子は……」

「中庭で見つけたんだ…随分と人慣れしててなぁ?」

「………………ぅ…」

アンナは狼狽する。

彼女がどこかへと小まめに通っていたのは…この子猫のためだったらしい。

昨日の夜、夕飯で出たパンの欠片がこの猫の側に置いてあり……飼ってもらえないだろうと思ってコソコソとエサを運んでいたのか…と納得した。

「実はこの猫、飼おうかと思ってるんだ」

「えっ⁉︎」

アンナは分かりやすい喜びの色を浮かべる。

あくまでも爽やかに微笑むと、子猫を持ち上げて言った。

「勿論…俺の部屋で♡」

「………………げっ…」

(げっ…とは何だ‼︎)

声には出なかったが、思わず心の中で叫ぶ。

アンナの顔は今まで見たことがないような珍妙さを醸し出していた。

「名前は何がいいかなぁ〜…」

「にゃあ?」

こちらの言葉に返事をするように子猫が鳴く。

「…………っ…‼︎」

その瞬間、アンナの瞳が泣きそうな程にうるんだ。

その潤みがとても綺麗で…呆然と…目を離せなくなる。




(泣き顔に……えつを感じるなんて…変態みたいだ……)




そう思っても…もっと見たくて……ワザとらしくアンナに問う。

「アンナはどんな名前がいいと思う?採用するかは別だが」

「〜〜〜〜〜〜〜っ…‼︎」

あからさまな驚愕、絶望…。

その顔を見て…嬉しかったり、多少の罪悪感があったり。

「くくっ…」

「…ふぇ…?」

「あははははははっ‼︎」

結果として言えば…腹を抱えて爆笑した。

急に笑い出した彼を見てアンナは呆然とする。

「嘘だよ、バーカ」

「えっ⁉︎」

「ちゃんと面倒みろよ?」

そう言って子猫を床に降ろしてやると、一目散にアンナの側に駆け寄って行った。

「スノウ‼︎」

子猫にちゃっかり名前をつけていたらしいアンナは…子猫…スノウを抱き上げて頬をスリスリしている。

なんとなく…それが面白くない。





「ジークっ‼︎ありがとうっ‼︎」





だが、アンナが今まで見た中で一番の笑顔でそう言うから…さっきの面白くない気持ちがたちまち消し去ってしまった。

「………」

アンナを手招きした。彼女は疑いもせずに簡単に近づく。

ジークフリートはそんな彼女をグイッと抱き寄せた。

「ちょっ…ジーク⁉︎」

「お前がスノウを可愛がるなら俺はアンナを可愛がろうと思ってな」

「あっ…ちょっと……」

アンナの首元をスリスリと撫でる。

まるで…猫みたいに。

「やぁ…くすぐった…い………」

甘い声に歯止めが効かなくなりそうで。

小さく喉がごくんっと鳴った。

「………にゃあって鳴いてみ?」

怒るかもしれなかったが…本音を漏らしてしまう。

「にゃあ?」

でも、その言葉にスノウが反応して…ジークフリートは苦笑する。

「あぁ…スノウじゃなくて……アンナが」

「なぁっ⁉︎」

自分に言われていると分かってみるみる真っ赤になるアンナは、勢いよく腕の中から飛び出した。

「っ⁉︎」

スノウを抱えて真っ赤な顔で睨みつける。

「誰がやるかっ‼︎馬鹿ジークっ‼︎」

「あっ…ちょっと…」

バタンッ‼︎

アンナは部屋から飛び出していく。一人残されて…思わず苦笑してしまった。




「まるで…懐かない猫だなぁ」




(ーまぁ…そこが可愛いんだけど)

ご機嫌を損ねてしまったアンナを宥めるために、ジークフリートは王妃の部屋に向かう。








因みに…この後向かった王妃の部屋でアンナがスノウは超じゃれ合っていて……。


それを面白く思わなかったジークフリートが悪戯いたずらをして…また、彼女のご機嫌を損ねてことになるのだが……それはまた、次の機会にでも。







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