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水着コン7


「さてお次の美女は夏限定海の家。ARIKAの歌姫。空姫である」

ばさりと大きく翻るマント。きらきらと輝く何かが見えた気がするが、誰も気に留めない。

ちなみにマントを翻すついでに瞬間冷却材をマントにかけただけである。



「海の家、ARIKA。夏限定でわれらがうろなに訪れる美人家族。三女にして麗しき歌声を持つたおやかな女性。セイレーンかローレライの化身か空姫」

ゆったりとしたペースでエスコートするノワール。

ほんのりと羞恥に染まった頬。ゆったりした動きは優雅。白のセパレート水着にかかる黒髪。

パッチリした瞳は今、かすかに伏せられ、遠目にも潤んでいるのが見えるようだった。


「うむ。相応しきはセイレーンだな」

カラスマントがそう言いつつ手を取りひざまずく。

「ローレライは河を生きる人魚。セイレーンは海をゆくもの総てを魅了する海鳥の姫たち。そう総ての魂を」


「歌っていただけませんか? セイレーン」

ノワールも便乗する。



すべてを魅了する歌声がビーチに広がった。






「それではトリを飾る美女の紹介となります。どうか、暖かくお迎えください」

ノワールの口上、カラスマントに連れられてきたのは白く細い少女だった。

途中でなぜか立ち止まったかと思うと、カラスマントが軽々と抱き上げる。お姫様抱っこである。

鮮やかな花をプリントされたワンピース水着、病的に白い肌、足が少し赤くサンダルが脱げている。

カラスマントに何か囁かれ、手にしていた日傘をポンッと差す。

「うろな中学校から萌ちゃんである」

「萌です~」

ノワールも萌の笑顔に笑顔で返す。

「うろな中学の萌ちゃん、ついこないだまで入院してたんだよね。退院おめでとう」

「ありがとうございます」

ほんわかと蕩けるような笑顔に会場内が和む。

「今日は萌、梅原先生の代理できましたー」

「代理?」

カラスマントが首をかしげる。

「梅原先生、体調を崩されてるんです。だから萌が代理なんです」


「そうか。えらい……」

褒めようとしたカラスマントが言葉を途切れさせる。



「萌からはなれろ! ロリガラス!!」



「えー。ロリガラス定着しそうで最悪ー」


ぼやくカラスマント。


乱入してきたのは鹿島茂。萌の兄にしてショッピングモールの営業課長。

怒鳴られても萌ちゃんを抱いているので無茶な動きは一切しないカラスマント。

「鹿島さん、落ち着いてください」

ノワールが落ち着き払った口調でカラスマントと鹿島兄の間に割り込む。

「落ちつけだと!?」

「はい。カラスマントはそーゆー意味では非常に安全なセイブツです。ご心配には及びません」

「いや、ちょっと待てノワール。酷くないか?」

「しかしだな」

不満そうな鹿島兄。

「きっと萌ちゃんは入院している間、優しくされているばかりで嬉しい反面、もどかしかったのではないかと思いませんか?」


「知ったようなっ」


視線が外れてるのをいいことにカラスマントがこそこそと萌ちゃんの耳に何か囁く。


こくんと頷いた少女の思いつめた表情に会場も息を飲む。

「おにいちゃん。萌もみんなを応援したいの。先生の役に立ちたいの。おにいちゃんは萌にはできないって思ってるの?」



「いや。萌ならできる」


鹿島兄がほぼ間をおかず答える。


「おにいちゃん。だいすき」


ほのぼのした空気が流れる。



「では、ココで少々CMです。今コンテストの参加賞はモール側から提供していただいたアクセサリー作成キットとなります」


「あ。カラスマントさんの縁飾りのもですか?」

「鋭いな。試作品である」

萌ちゃんとカラスマントの会話を挟みつつ続けるのはノワール。

睨まれるのはカラスマント。


「プラスパーツのアルファベットか」

そうカラスマントの仮面の縁にはシンプルに「URONA」と入っているのである。


「萌ももらえるんですかー?」

「無論だ。参加したすべての美女に贈られるぞ?」

「萌、上手にできるかしら?」

「確かモールに教室もあるし、海の家ARIKAに来たら高確率でいるから手伝うぞ?」

「カラスマントさん、ほんとですかー ありがとーですー」


鹿島兄が考えている間に進んでいく会話。

なにやらいとしの妹とカラスマントとの友好度がどんどん上がってゆく様を見せ付けられる。



「提供していただいてる上にで申し訳ないのですが、萌ちゃんのように作成に不安を感じる方もおられます」

「コンテスト参加者の方が作成に悩まれた折はぜひモールの方へいらしてください。作成のお手伝いをさせていただきます。もちろん、この夏話題の美女にきていただけるのですから料金はお気になさらず」

「ありがとうございます」


「では、萌ちゃん、ライフセーバーの皆さんに応援の言葉をかけるのだ」


「はい!」



そっとカラスマントの腕から抜け出し、まっすぐ会場に向けて立つ。


「萌は今までいろんな人に優しくしてもらったり応援してもらったりしてきました。今でも助けてもらってばかりです。そんな萌でも応援ができるということが嬉しいです」

一息ついて、にっこり。



「がんばってください」



審査発表までいたらなかった・・・・がふ


空ちゃん歌を強要される。


鹿島兄、同様に妹を持つ二人に翻弄される。

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