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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年夏
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子供は遊ぶ

 朝食を終えてから末の弟と娘を連れてショッピングモール方面へ向かう。まだ開いてなくても海を娘に見せるのもいいだろう。馴染みだった場所もあるし。両手がふさがると動きにくいな。

 ん。両方が疲れたと言いだしたらどうするかなぁと少し悩む。

「パパ、ひろいわ!」

 まだ本番ではないとはいえ、それとなく人のいる浜は娘にとって魅惑の場所だったらしい。

「海だよ」

 サンダルと水着、も買った方がいいのかな。

「あぶないから水のそばには近づいちゃダメだよ。アンジェリーナ。武蔵も」

「はい」と力強く返事をする娘の横でわざわざ言わなくてもわかってるしとちょっとシラけた表情の弟。どうも(いずる)よりしっかりした性格らしい。志狼と出は結構甘えただったからな。そーいえば恭や宗は物分かりのいいこっち系の対応の幼児だった気もする。たぶん、大人人気がいいのは出や志狼の方なんだが。

 途中で弟を抱き上げて娘の手を繋ぐ。

「ムサシさんがちいさいですものね」

 おねえさまだものと頑張る気満々に水をさす気はないけれど、体力はないからなぁ。

「おや、いらっしゃい久しぶりだね。総督いるよ」

 水族館だった施設をいつでも使える環境を維持、時折最新設備を更新しているという物好きな彼が迎えてくれた。あの父はまだその妙なアダ名で呼ばれてるのか。ああ、調子に乗って喜んでるんだろう。

「やぁ可愛い娘さんと息子さんだね」

「アンジェリーナという。そしてこっちは弟だ」

 わかっててからかう男に釘を刺しておく。

 夏場はいつものバイキングをしめて休憩所のような運営をしているらしい館内は相変わらずの先払いワンコイン制らしい。

「はい。本日限り有効の再入館カードね」

 娘と弟を休憩させつつ周囲を見回す。バイキングコーナーはなく、カウンターで有料軽食とドリンクを注文するスタイルのようだ。

「あっちには雑魚寝スペースがあるよ。で、あっちがプレイルーム。ウチは託児所じゃないから小学生未満は保護者必須だけど、まぁムサシくんのパパ呼び出せばいいしなにか用事があるなら言ってね」

 という言葉に甘えて弟を一時置き去りにすることにした。この町に来る理由に兄には保護者役が欲しいと頼まれたけど、父は対象外か。さもありなん。末の弟は父に返しておく。


「奥さんも一緒?」

 サービスと笑いながら飲み物が差し出される。

「いいえ。ありがとうございます」

 ひと休憩した後、娘とショッピングモールへと向かう。動きやすい服装は大事だろう。

 今持っているものは少し生地が多い。

 いつからだろうか、あの子がオカルトめいた未知との遭遇への興味を沈殿させたのは。いや、宇宙人とかにはまだまだ興味があるようだけど。遭遇した宇宙人っていうのは役場の人だったと思うんだよね。たぶん。まぁ、本当に未知との遭遇にお熱なままだと色々困ることもあるから現状が正しいというか、現実よりの世界に興味が持てずにいるんだろうなと過去の自分を振り返る。家族と絵にしか興味を持てなかったから。

「パパ!」

 おもちゃ売り場で見つけた衣装に娘はキラキラと目を輝かせる。ふわふわひらひらで長時間着てると暑いんじゃないかな?

「リーナの好きなものはなんだい?」

「お花とかリボンとかかわいいもの」

 ご機嫌で答えてから「それからパパ」と付け足すのは可愛らしいだろうと思う。

 撫でているとくすぐったそうに笑う。

「パパもリーナがママににててうれしい?」

「んー? リーナがパパを好きで嬉しいかな」

 小さな体はあたたかく勢いがいい。

 ぎゅっと抱きついてきた娘は別に言葉を求めているわけではなさそうで、気持ち安心して抱きあげた。

 あんまりママには似てほしいとは思わないのが本音だし。

 着替えを何枚か、好きそうなものも好みから外れそうなデザインでも機能性を重視して選ぶ。気にいった服はどうしてもヘビロテになるし、同じだろうと言っても色と模様が違えばイヤがる。つい、着れさえすればイイだろうとも言いたくなるが、そこは禁句だ。

 娘が好む服はなんというか、洗濯がめんどくさそうなのでシンプルデザインで肌にやさしく洗濯しやすい材質のものがいい。娘は選んでくれないけれど。

 あんまりアイロンは得意じゃないんだよな。





「似てない双子?」

「あの二人血の繋がりはないですよ?」

 赤毛の子供が二人、娘と遊んでいる。遊具の上で跳ねている子を娘が手を叩いて喜んでいる。もう一人はじっとこっちを見ている。

「リナもこっちこいよー。セスもー」

 遊具の上で跳ねていた男の子が娘ともう一人を呼びつける。

「ファイ、リナはスカートなんだからあぶない。あと呼びながらそこで跳ねるな」

「ちぇー、つまんないのー」

「リーナ、のぼれるからっ」

 誘われてのぼるための足場と自分の服の間でオロオロしていた娘がキッと少年をにらむ。

 跳ねている少年はやんちゃな性格らしくへへんとばかりに笑っている。

 娘、ふわふわひらひらのスカートで遊具よじ登れるほど運動神経あるのか?

 結論を言えば運動神経は発達途上のようである。

 姪が集めている人形を娘に見せて「遊びましょうか」と誘ってくれたので泣かずにすんだようだった。末の弟とセスと呼ばれた男の子が一歩身を引いた気がした。手製の凝った服を着ている人形。顔を描いてある和人形。ぬいぐるみのような人形に視線を感じそうな気になるグラスアイを嵌めた人形。

 姪の人形はどこかオカルトめいた雰囲気がある。

「夜、動きそう」

「こっちをずっと見つめてきそう」

 少年二人の言葉に娘がびくりと人形を見つめる。

 姪が不思議そうに首を傾げて娘を撫でる。

「いじわるしなければ大丈夫よ?」

「なにが!?」

 少年二人が声をあげた。

「みんな、いい子だもの」

 姪。それは答えになっていない。

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