2016年夏の兄弟会話
兄と思わぬ内容で会話をするハメになった。
誰だよネタもらしたの。
「ノータッチ推奨」
「ヤダ」
「ヤダって……」
あんまり自己主張することが不得意な兄だから聞いてやりたい気もするけれど、ことがことだからそうもいかない。
「学生だろ?」
「なんとかする」
いや、ならねーだろ?
確かに金銭のフォローはしてくれる周りだし、チビどもにはダブル甲斐性無し扱いされてて生活費ぐらい〜と屈辱的な発言は多々だ。それなら実父の実家にたかるけどね!
まぁ、さておき。
金銭面が補填されヤル気があったとしても。
それでも歪なことになる。
もともとが歪に育った家族なのだから。
たぶん、正しく家族のカタチを自分も兄も理解していない。
こうありたいこうあるべき理想と人が語る『正しい家族』のイメージ、それに対する憧れと反発。
自覚するべきは『普通』を知らない自分たちの歪さだ。
変わっていける。
変わっていけるだろうけれど、そこに至る苦痛は、苦難は自分たちだけのものじゃない。あと、ルール違反になる。
「ちゃんと選ばれるんだよ。審査だってある」
第一、最初の段階で僕の権利は一切ないというか、そういう契約だ。
その上で覆して無茶苦茶な真似をしたあの女の希望でもあるだろうなぁ。兄が動いたのは。面倒くさい。
知らないままでいればいいのに。
「でも、あの範疇だろ」
まぁ、研究対象的にキープはしときたいだろうからそうなるね。
その分、なにかあった時の治療は優先されると思うけどな。
自分だって属している場所なのにすっごい反発だなぁ。
「あのさ、兄さんがキツい思いしたのは……、母さんが親権放棄せず周りが容認してたせいだよ。ちゃんと決まった保護者がいたら違ったと思うよ」
どうかなんてわからないけれど、決まった保護者の有無はいろいろ違うと思うんだよね。
ちゃんと関係は作れるんだからさ。
おいといて。
「ちゃんと審査を受けた受け入れ準備している夫妻が子供として受け入れるんだから、少なくとも血縁関係しか主張できない学生が割り込む余地はないんだよ?」
冷静になって欲しい。マジで。
「だって、ヤなんだよ」
しつっこい!
「確かに兄さんには彼女いるけどね、ねぇ、コレって一人で決めるようなことじゃないよね?」
巻き込むのが当の子供だけじゃなく空ねぇもだってことをちゃんと考えている?
それとも、別れる気?
周りが面倒みるのを手伝ってはくれるだろうけど、それは好ましくないんだよな。
そこを思えば、ふざけんなとも思う。
僕はどうせなら両親の揃った準備万端待ち望んでいる家庭に受け入れて欲しいんだよなぁ。
「それとさ」
兄さんが不安げに僕を見てくる。
本当に兄さんがそう動きたいならきっと僕の意思は関係なくなる。
周りがそう動く。知ってる。
「結果として、兄さんがその子を受け入れるなら僕は町に帰らない」
「な?」
いや、驚かないでよ。
「僕にだって納得できないことくらいあるよ」
あの場所を変えるにはあそこのルールを破ることを受け入れる態度はとっちゃいけない。それに事実反対なんだよ。
「僕だけの問題でも、兄さんだけの問題でもない。兄さんの行動が空ねぇに及ぼす影響だってちゃんと考えるべきだ。それとも相談済み?」
待って。まだなの?
短絡的に答え出すなよ?
ちゃんと相談してなかったことにしとけ。
「あそこはよくない場所だと思う。だって、千秋だって……」
ん?
僕?
僕が嫌な目にあった大元は既に地獄に堕ちてらっしゃる実父絡みがメイン……、あ、奴は、まぁ、うん。どーでもいい。
金ヅル系はなんだかんだでギブアンドテイクだからな。
「あそこに希望が無いわけじゃないんだよ。変わらなきゃいけないけど、急激には変われない。兄さんもそうだろ?」
兄さんがワガママに動くなら僕はそれを不快に思っていることを隠さない。
その子供に出来る限り関わらない。
今だってチラ見はしても触らないようにしているし。
「まず、空ねぇに相談しなよ。欲しいのは空ねぇだろ」
兄さんが選んだのは空ねぇだろう?
他なんかいらないくらいに。
……そっか。
他にも欲しいって思えるようになった。とも言えるんだ。
「兄さん」
「なんだよ」
「幸せ?」
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』
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青空空ちゃん
お名前お借りしました!




