年末の朝ごはん
「夢……」
グゥっと伸びをする。
心地の良い目覚めだと言える。
夢見のいい朝はいいことがありそうだ。
「機嫌いい?」
洗面所でかちあった兄さんが不思議そうに問う。
「おはよ。朝は作っとくからデートでも散歩でもしてきたら?」
出かける準備万端な兄を送り出して、朝のメニューを考える。
玉ねぎとじゃがいも入れたオムレツにでもしようか?
ベーコン炒めて、卵はあるっと。
久々に彼女の夢を見た。
圧力鍋でごはんを炊く。隆維は和朝食を好むからなぁ。冬休みだし起きてくるのゆっくりかなぁ?
「変な夢だったなぁ」
跳ねる髪、明るい笑顔。身体を伸びやかに伸ばして走って笑う。
きっと、どこまでも彼女は前にいく。
いつか、彼女より愛おしいと想うことできる人に出会うんだろうか?
「変な夢?」
つまみ食いしようとのびてきた手を軽く叩いて払う。
「玉ねぎスライスはサラダじゃなくて炒めようだ。減らすな」
ペロリとジークが舌を出す。
「んじゃ、早く早く、チーズとベーコン入りボリュームオムレツ希望!」
「はいはい」
夢の中で彼女は相変わらず笑ってて、にゃーにゃー元気いっぱい。そんな夢を思い出すだけでにやつきそうでちょっと困る。
変な夢だったという理由は彼女の姿がポンッと途中で可愛いわんこに変わったこと。
夢の中の彼女は僕の『わんこ』発言にぷりぷりと『オオカミにゃっ』と返してくる。
極上キューティなわんこはわんこじゃなくて特別なオオカミ。
もう、萌え死んでも後悔しない夢。正に至福!
抱きしめたいのに、夢なのに許してもらえる気がしなくて触れれない。
『どんな姿でも君は最高にかわいい』
ふわふわの毛並みをブラッシングとかしたい。専用ブラシの材質は、いっそトリマーの勉強でもしてみようかって夢なのに先走る。
そんな思考の先走りを感じたのか、君が黙って視線を泳がせる。
夢だから夢なのに、触れれなくて泣きそうで幸せな夢。
よかったって思う。
君の美しい毛並みに触れる者はいない。
たとえ、君に触れる資格が僕が僕に許せなくても夢に出てくれてありがとう。
「千秋〜まだ〜。飢え死ぬー」
「死ぬかっ。ちょっとぐらい待て!」
「マテは苦手〜。わっ!」
ジークがしゅんッと音を立てた圧力鍋にビビる。
「馴れろよ。毎回ビビってるだろ?」
ジークはむりーとか言いながら調味料の小瓶に手を伸ばす。
その様子をななめに見つつ、鮭の切り身をふた切れ火にかける。
隆維が遅くても冷え切る前にジークが食うだろう。
「パンかシリアルなら先に食っていいぞー」
「ごはんがいいーバターたっぷりで」
……冷や飯のバター炒めを朝から作れと言うかコイツ。
「おはよー。朝ごはん手伝う?」
隆維の言葉に「味噌汁よろしく」と一任せしておいた。
おかしいな。
夢見はよかったはずなのに。
『人間どもに不幸を!』
http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/
より鍋島サツキ嬢お借りしております。
オフ会での話題で出てきた妄想を形にしてみました!(夢です!)




