水着コン2
まだ四人。。。。
蓮華嬢がカラスマントのエスコートで舞台裏の休憩所に案内される。
その様子を審査員席で見守る審査員。
審査基準は個々の好みに任されている部分と、観客の盛り上がりを分析する部分に分かれている。
店の宣伝をうまく果たした、クトゥルフのリトルクイーン。
ボランティアであるライフセーバーたちの心を掴んだ蓮華嬢。
二人の個性は強いものだった。
しかしコンテストは始まったばかり。
「あの子達熱中症とか大丈夫かしら?」
秋原女史がぽつりと司会の二人を見ながら呟いた。
「さぁ次なる麗しき宝石を紹介しましょう。今回のエスコートはカラスマント」
ノワールが一礼し、舞台端を指し示す。
「うろなの移動の要、日本総合鉄道会社っからのエントリー働く乙女エレナさん」
微妙にかみかけるカラスマント。
励ますように、軽くその腕に触れながら一歩踏み出すエレナ。
「われらが日常の足、『日本総合鉄道株式会社』ですべての乗客が気持ちよくすごせるように配慮してくださっている駅員さんのお一人。気遣いの出来る働く女性。普段は結びあげられた髪をさらりと下ろし、いつもと違う魅力に胸の高鳴りを押さえるのに一苦労です。おねーさま」
ノワールが口上を終えて一歩下がる。
堂々と惜しげなく黒のビキニ姿を披露するエレナ。
かむカラスマントを励まし、堂々と笑顔を振りまく。大人である。
「こんにちはーー」
「こんにちはーー」
エレナのかけた挨拶に会場から大きな声が返る。
「今年もよろしくー」
「おおーー」
「海も駅もルールを守って気持ちよくー」
「おおー!!」
カラスマントとノワールも拍手を贈る。
「おねーさまかっこいい」
「うむ。ノワールはおねーさまタイプが好みか」
「さぁ、お次のエントリーの方をご紹介しましょう!」
ゆっくりとカラスマントにエスコートされてきたのはしろがねの髪を持つ少女。面積は多めな水着はセパレートタイプ。
何よりもその表情が緊張でも戸惑いでもなくしぶしぶと言うか、いやいやと言うか、不満げなものだった。
それをエスコートするカラスマントは「どこか」どころか「思いっきり」心配そうでお兄ちゃん属性を発揮しているのが見て取れる。
その様子にノワールは腕を組み、つかの間悩む仕草をとる。
「う~ん。誰かに推薦されちゃったかな? ちょっぴりご不満そうな美少女レイちゃん♪ 流れるしろがねが真珠の肌の上を跳ね、その瞳は月や海を思わせる最近うろな町にやってきた中学生~おにーさんたちは脅かしちゃダメですよー」
「脅すかー」とか「見かけたらしばいとくわー」とか声が飛ぶ。
ノワールは「ありがとー」と返しながら舞台の端に置かれているパラソルをとり、軽く振る。
ポンと広がるパラソル。
「眩しい日差し。それは乙女の柔らかな真珠の肌には大敵。レイちゃんはお肌弱そうだし、日差しを遮ろう」
「あ」
突如出来た日陰に少女が見上げる。
その仕草のあどけなさに観客席から「かわいいー」と悲鳴が上がる。
「ハイ♪ ちなみにこのパラソルプラスパラソル固定用のグッズはビーチそばのレンタルショップでレンタルか、モールのアウトドアグッズ売り場にありまーす」
パラソルの位置調整は途中からカラスマントが引き継ぐ。
「おぅ。カラスマント上手だね」
「無論。容易いことだ。恥ずかしいのならパレオもあるからな」
作業しつつさりげなくレイにも言葉をかける。
「カラスマント声が優しい」
観客席からぼそりと誰かが呟く。
「ろり?」「レイちゃん逃げてー」
「誰がロリコンかーーー!!」
カラスマントが声を荒げる。
会場は笑いに包まれる。
「レイちゃん、この舞台に上がってくれてありがとう。今のレイちゃんの笑顔はライフセーバーの皆さんへの何よりもの応援で活力になったと思うから」
「えっと、ボク」
「無理をすることはないが何か激励の言葉をかけてやってくれると嬉しいぞ?」
軽くマントを捌いて服装を整えなおすカラスマント。
観客席のライフセーバー、観光客、町の住人から見れば、カラスマントだけでなく、ノワールがそれとなく世話を焼く姿はダブルおにいちゃんだったがそこは生ぬるくスルー。
「みなさん、がんばってください! よろしくおねがいしますっ!」
一気に言って頭を下げた少女に胸を撃ちぬかれた観客席はシンッと静まり返る。
「え、えっと?」
失敗したかと戸惑うレイの肩を軽く大丈夫とばかりに叩いたカラスマントが一歩前に出る。
ばさり
大きくマントが翻り、観客席からレイの姿が隠される。
マントが落ち着き、再びレイの視界に観客席が見える。
一拍おいて歓声が上がった。
行谷エレナさん、如月澪さんステージに立つ




