電話と朝掃除
『宇美、立て込んで盆に帰れないから』
暗に伝えてくれと言う父からの電話。
わかっている。実際に会話をすれば帰ってきたくなるからだ。
そして、帰ってきたら、一日一回も奥さん見れないなんて耐えられんとか言い出して仕事を辞めようか真剣に考え出すせいだ。
母さん、あら、かまわないわとか言っちゃうし。仕事にはもっと真摯にとも思うけど、ちゃんと向かいあってはいるんだろう。
帰ってこないし。
だから、隠しごと続行中だ。
毎日メールはしてるわよ。と母さんはにこにこ。隠しごとには触れないメール。
「あんまり、ぴりぴりするんじゃないぞ」
ポンと頭の上に置かれた手。
「信広さん……いいとは思えなくて」
「重も様子見に手伝ってるし、大丈夫だよ。……連絡は入れた方がいいと思うけどな」
苦笑する姿に息を吐く。
「そうよねぇ」
でも、したら間違いなく母さんはスネてしまうだろうなと思う。
どうしろって言うのよ!
「千秋兄が邪険にするっ!」
待合室の掃除をしながら涼維君が吠える。
「少し距離置きたい気分なんじゃないか?」
「鎮兄と喧嘩中だから? 鎮兄が悪いっぽいのに気がつかずに対応するのは千秋兄だって決めつけたから?」
「柔軟性は千秋の方が上だからなぁ。そのかわり、動けないまで追い詰められると身動きとれないのが千秋か」
普段の対応を千秋君に任せてしまう傾向はある。
「鎮兄は?」
「予想外の行動にでるなー。そーゆー時は善悪判断が希薄だからこわい。少なからず、追い詰められている時は思考の幅が減るからな。落ち着くのが一番だし、それしか道がないと思い込むのも危険だよ」
だから、よく戸津の家、ここに泊まりに来ていた。重が怒るけど、そういう時は信広さんが隔離してた。
「そーだよねぇ」
「あーやちゃんなんかは決めちゃって動けなくなるタイプ。千秋もコレだな。暁君はどうかなぁ?」
「うぅ。思い込み激しめの血が間違いなく流れてるっ」
楽しそうな会話。
なんだかんだ言ってあそこの兄弟はウチに入り浸りぎみ。
商店街の同年代と遊びに行く千秋君は動物好きで拾っては飼い主探しに奔走していた。拾わなくなったのは蛇が仔犬を食べちゃってから。
そこからはなんとなく寄り付かなくなっていた。
避けようと決めた場所は回避したがる癖がある。
鎮君は千秋君を見てる。
ただ、遊んでる輪には誘われても入らない。千秋君が呼ぶまで。
「ほら、掃除終わりだな。おもちゃ屋に次のプラン聞きに行っておいで」
「エアコンきいた場所から出たくなーい」
「ははは。そら、行ってこーい」
「ノブにーのばかぁあ」
捨て台詞を残しダッシュしていく涼維君。
いいの? と首を傾げれば、笑って様式美だなと告げられる。
理解できない。
『うろな担当見習いの覚え書き』
http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/
『うろな2代目業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
高原直澄くんちらがりしておりますー




