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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年夏
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涼維のコイする心

 買い物は鎮兄と。

「あー」

 ぶらり歩きつつもなんか言いたそうな鎮兄ははっきりしない。

 父さんから追加もされたメモを確認しながらモールで済ます買い物にする。

 遠いとこは暑いし商店街は昨日行ったし。

「俺、現状、千秋兄の方につくからね」

 それだけ鎮兄に伝えとく。

 本当はどっちの味方とかおかしいから確かに知らんぷりで不干渉が正しいと思う。何もできないなら。

 でも、味方なんだと千秋兄に示しておきたい。一番愛してるのが隆維でも五本の指に入るぐらいに大好きだから。

「言っちゃったのにそれだけの理由あると思うけどさ」

 そう、それを兄達が俺に伝えるとは思えなかった。

 知りたいけど、教えてはくれない。たぶん、俺を守ろうとして。

「まぁ、聞けなかったんだけどね」

「ふぅん」

 自室でわざわざ床に寝そべる隆維の声は興味なさげ。

「わかったのは鎮兄が千秋兄のお付き合いに反対だってこと。個人の自由だよねー」

 あとはモールでやってる料理教室で逸美にーちゃんと美芳ねーちゃんが参加してるのを見たくらい。逸美にーちゃんがすごく挙動不審だった。

 ベッドに上がっておいでよと手を伸ばす。

「俺は涼維がミリセントにかまけすぎんの反対だよ?」

 ゆっくりした動きで見上げられる。俺の方が日焼けしてるなぁととりとめなく思う。

 じわりと入ってきた言葉を咀嚼して理解?

「え? ヤキモチ?」

 いつも俺ばっかな気がするからちょっと嬉しい。

「マリージアが気に病むかもしれないからな」

 マリージア?

 確かミリセントについてるメイドさん?

「カルロのねぇさんだよ。覚えてるか?」

 カルロ……、あ!

「小さいころ遊んだ!」

 ラフの家でラフを父様と信じてたころの遊び相手!

「カルロは帰ってこれなくて俺たちは帰ってきた。な、わかる?」


 潮騒が耳を過る。


 潮騒に混じる啜り泣き。これは現実? 幻聴?

 罵声銃声油の匂い。木箱はザラザラささくれだって。

 暖かく冷たい液体はきっと海水。

 ぎゅっと隆維を掴まえる。

 どこにもいかないで。

 きゅっと息苦しくなる。

「りゅーい」

「ここにいるから。俺はここにいるから」

 抱きしめ返してもらって撫でられても心細くてしょうがない。

 いなくなりそうな隆維がこわい。大丈夫だと言われても一度ついた不安は簡単に引かないんだ。

「大丈夫だって言ってるだろ?」

 隆維の声とキス。

 でもさ、でもさ。

「だって、ミリセントが好きなんだ」

 そこは本当だから、どう、振る舞えばいい?

 ミリセントが好きなのが、俺じゃなくて隆維だって知っても好きじゃなくなれるわけじゃないんだ。

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