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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年夏
782/823

涼維の……

 ものすごく千秋兄に謝ったりしたい心境。

 知らなかったから。

 鎮兄がそんなこと突きつけたかもしれないなんて。

 ちょっと不安そうで無理してるかなと思っても、まだ新生活でテンションが違うんだろうと思ってた。違う。らしくない部分が見えても、見ないふりをした。千秋兄は立て直すから、すぐ落ち着くからと。

 俺は理由なんてわからないから触れない。ただ、鎮兄は鎮兄で思ったからってそれを否定していい理由がない。嫌だったなら状況否定はまだよくても、本人否定は絶対だめ。

「鎮兄、自分が言われてイヤなこと言っちゃダメだっていうのは基本だろ?」

 もし、自分が自分の片割れ、俺の場合なら隆維に『涼維じゃない』なんて言われたら、冗談でも、半泣きになる。想像しただけで泣きそう。

 ただでさえ無理してるっぽいとこにソレ?

「涼維?」

 あ、泣きかけてた?

 だってヤだったんだよ。

「ケンカしてんのにそんなこと言ったら仲直り難しくなるだけじゃん。仲直りする気ないってこと?」

 きっと、その時思ったことをポロっと言っちゃっただけだと思う。でも言っていいことと悪いことはあると思う。

「そんなことない」

 答えは早くてホッとする。

「千秋兄はちょっとスネてごねてもちゃんと説明すればわかってくれるし、父さんにヘンなこと吹き込まれたからおかしなこと言っちゃったんだよね?」

 ちゃんと父さんが説明しないから。

 兄弟仲にヒビ入れかねないこと言わないで欲しいよね。

『家族』が変わって欲しくない。

 ちょっと言葉足らずだっただけ。きっと誤解はとける。

「それが本音だったんだとわかったからいいんだよ。涼維も妙なとこに首突っ込まないの」

 冷たくふってきたのは千秋兄の声。

「千秋……」

「もうしばらくは会話したくないから」

 鎮兄の呼び声にばっさり系の言葉、そのままキッチンに入って冷蔵庫を確認。

「千秋兄?」

 だって落としどころ考えてるって。発言の矛盾に困惑する。

「隆維が見たらスネるぞ。いいのかぁ?」

 へ?

 スネるって、なにを?

 メモに何か書き出しながら、千秋兄が笑う。

「涼維が鎮兄に取られたって」

 スネるかな?

 ちょっと気になる。でも、それなら、

「千秋兄でもいいよねっ」

 鎮兄の下から抜け出して千秋兄に抱きつく。

「あー? 俺が隆維にごねられるだろー」

「ごねられちゃえばいいんだ。ヒマなのに遊んでくれないしー」

 大好き。不安にならないで。

「俺はヒマじゃないの」

「じゃあお手伝いするしー」

 べたべたはりついても邪険にされない。

「あ、そう。じゃあ買い物頼むな。メモ、コレな。追加であった方がいいものがあるかないかは伯父さんに聞いてから出かけろよ?」

 え、なにこの手際の良さ。

 抱きついてたから小さく千秋兄が呼吸を整えたのに気がついた。

「時間、あるんなら付き合ってやってくれる? 兄さん。補導されてもかわいそうだろ?」

 少し緊張してる。たぶん、鎮兄の反応を伺ってる。

「えー! 千秋兄がついてくりゃいいじゃん」

 一緒にいようと主張する。

「荷物持ちは体力ある方がいいだろ。俺は忙しーの」

 何気なさを装って会話を普段っぽく。

 コレは壁のある会話。

「えっと、千秋……」

「用事、あんの? だめ?」

 わざとらしい甘え声。

「ねぇ、兄さん」

 チラッと見ると鎮兄がなんと言っていいかわからない微妙な表情。

 兄さん呼びになぜ嫌がらせ効果が!?

「忙しい?」




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