2015年夏祭り 涼維視点
なんか、隅っこの方で鎮兄と挙動不審人物な逸美にーちゃんが話してる。気になるけど遠いなぁ。
祥晴情報で隆維のこっちでの生活ぶりに耳を傾ける。
どーしても情報偏るしねー。
「隆維の趣味は俺への情報操作だったりするもんなー」
「気のせい」
即座に否定されるけど、信ぴょう性は薄い。
「逸美にーちゃんと鎮兄って珍しい組み合わせだよね」
逸美にーちゃんは千秋兄とだけ仲がいい印象。
「りょーちゃんおかえり」
寄ってきたのは飛鳥ちゃん。
「飛鳥ちゃん。ただいまー。遊園地行ったんでしょー? いいなぁ」
「まぁほどほどに絶叫マシーン堪能かなー。帰った後で揉めたっぽいけどね」
「千秋兄の相手はどんな人だった? 話してくれてないんだー」
隆維の食いつきっぷりに飛鳥ちゃんが笑う。
「しーちゃんも気にしてたわぁ」
「だって気になる! 昨日は話楽しみにしてたのに帰ってこないしさー」
「恋人紹介の前に友達紹介は受けたけどねー」
「友達ー?」
「美芳ねーちゃん。旅館のお仕事があるから夏祭りには来れないんだって」
楽しいのに。
「千秋兄が飛鳥ちゃんと合うんじゃないかなって言ってたよ?」
「んん? まぁ、それほど外さないから会う機会を期待しようかな? なんか、その名前の人が残った男性陣ディスってたって菊花が言ってた気もするけど。あいつら基本だめんずやもんね」
飛鳥ちゃん、キッツい。
そのしょうがないって口調がまた切ない。
「内容は?」
知ってるの?
「んー、菊花も苦笑してたなー。否定しきれないからって。ほら、健はまともに仕事を求めている姿勢が見えないから」
うわ、そっち系のディスり?
「ちーちゃんはやる気になればできるだろって見守るタイプやからなぁ。たしかにもどかしーわ」
「ダメ出し激しーよ千秋兄」
あれはダメこれもダメ、ちゃんとしろ。ダメならさっさと改善しろって、自分は鎮兄との仲改善できてなくて苛立ってるけどねー。
「りゅーちゃんとりょーちゃんは家族でしょ。ちーちゃんのダメ出し嫌いなの?」
聞かれて隆維と顔を見合わせる。
「嫌いっていうか、千秋兄はこうるさいもんだと思ってる」
きっぱりと隆維が言い切る。
心配してくれてるんだってわかってるんだけどねー。
千秋兄がイライラこうるさいこと言ってるとちょっとホッとする。
「千秋兄がこうるさいのはデフォルトだよねー」
「言われずにすまそーとか思わないのかよ」
祥晴の言葉に疑問符が飛ぶ。
隆維と視線が絡む。
「なんで?」
家族で、心配して、良かれと思って口うるさい。
時々うざいと思うけど、居心地はいいんだ。
飛鳥ちゃんが苦笑してる。
「千秋兄も鎮兄も好きだし」
俺が言えば隆維も頷いてる。
「うろなもいろいろ花盛りなんだぞー」
隆維の言葉に首をかしげる。
浴衣姿の菊花ねーちゃんを指して、「ほのちゃんにアタック中なー」隆維のコメント。ほほぅ。
すっと指したのは早川のにーさん。「ミリセントのトコのマリージアにアタック中なー。いい線いくんじゃないかなー。あ。マリージアにはあんま近寄んなよ。気にすっから」気にする?
じっと見つめられて何となく理解する。
「そして、きっと秒読み中だと思うんだ。直樹にーちゃんが地味に落とされんのもな」
ニヤッと地味に嫌な笑い。
「胃袋つかまれたら早くね?」
その言葉を聞いて思う。
鈴音ちゃん、胃袋壊しにくるよね?
ふっと視線を揺らした先の人混みの中、千秋兄が見えた。
ああ、来たんだ。もうじき舞台はライブタイム。花火前の盛り上がりの一歩手前。
周囲をキョロキョロして嬉しそうに笑ってる。少しあげた手には田中先生の手が取られてる。誰かへの合図かな?
千秋兄が合図している先は澄にーちゃんがいた。
どこかホッとしたように笑った千秋兄が田中先生をハグした。あ。澄にーちゃんダッシュしてる。そのまま勢いでキスになる前に引きはがすため?
「あーゆー笑顔は珍しい気がする」
隆維の呟きに俺も静かに頷いておく。
「指輪?」
飛鳥ちゃんがぽつんと呟いた。
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
『うろな担当見習いの覚え書き』
http://book1.adouzi.eu.org/n0755bz/
『うろな2代目業務日誌』
http://book1.adouzi.eu.org/n0460cb/
高原兄弟、田中先生。お借りいたしました




