グループデート 日生飛鳥視点。
ほのちゃんの冷たい眼差しを菊花ちゃんがスルーする。
取り分として渡されたチュロスを持て余したのは歩き食べのできなかったエシレちゃん。
ちーちゃんが三等分のさらに半分を食べている。
戻ってくる途中で合流した加藤さんと木野江君。木野江君は一歩集まりから遅れて、加藤さんは菊花ちゃんを注意しながらちーちゃんたちと合流した。
休憩所の一角、広げられたお弁当はきらきらと眩しい。
サンドウィッチとカットフルーツのセットとか、ラップで包んだおにぎりを詰めたお弁当箱だとか、一口サイズのミニバーグにから揚げ。海老のフリッター。タコウィンナーやカニウィンナー。可愛いピックが刺してあるコロッケ。卵焼きに温野菜ゾーンには茎の長いブロッコリーとか。
「こっちのピックは南瓜。こっちはじゃがミンチ。ミニバーグは色々混ぜてみた。卵焼きはこっちが甘めで、こっち側が甘くない方」
サラッとちーちゃんが説明。
「ピックのないコロッケは?」
「材料のあまりを適当に揚げた」
菊花ちゃんの問いに清々しくちーちゃんが答える。
逆になぜ、一部識別かけた?
「途中で隆維たちが手伝ってくれてさ、わかんなくなったんだよ」
「私はフルーツサンドウィッチとクッキーね。ドリンクは仄さんが」
加藤さんが追加で説明。
お礼を言って「いただきます」
サンドウィッチとカットフルーツはエシレちゃんらしい。
ちーちゃんがエシレちゃんに食べられない食品があるか、苦手があるか確認しながら選んで取り分けてる。
菊花ちゃんがほのちゃんに「とってあげる」と言って「いらない」とばっさり切られて、加藤さんはさっき配ってくれたおしぼりの残りを片付けて、木野江君に取り分けをしていた。うーん。ナチュラル。
……あんまりにもショックな出来事におはしの動きが止まる。
「ちーちゃん」
「どーした?」
乗った絶叫系の話題や後半戦用の話題が止まる。
「なんで、ハンバーグにシイタケ入ってんの?」
「他にもいろんなパターンあるよ? アレルギーなかったろ?」
「シイタケ好きやない」
「好き嫌いよくない」
「ちーちゃんだって納豆とかたまごかけごはんとか、お刺身とか好きじゃなかったやん」
「小学生時代を持ち出さないのー」
食感が好きじゃないって、同じことなのになー。
「お刺身も?」
「それまで生食材食べつけてなかったんだよ。果物とサラダ以外は」
菊花ちゃんの言葉にちーちゃんが返す。しーちゃんは平気だった気がするけどね。
「飛鳥ちゃん、とったんだから食べてね」
うー。
二口。最低限の咀嚼で流し込んで、ジュースで口直し。
「職場でのごはん、お弁当出るっていってたのにどーしてんの」
「除けてる……」
子供っぽいのはわかってる。
それでなくても完食してないしね!
中身不明は危険の香り。
から揚げうまうまー。
「今でも好きじゃないの? お刺身とか」
「ん? 今は好きだよ。それに住んでいるうろな町はお魚も野菜も鮮度よくて美味しいんだよ」
見つめてくるエシレちゃんにちーちゃんがにこやかに返す。
デザート頃にほのちゃんがアイスを買ってきてくれた。運搬役は健。
あとでいくらか払うって言ったら「未成年」とだけ言われた。
ちゃんと働いてるのに。
「今日、仕事は?」
「一応、有給休暇使って連休に。ちーちゃん帰ってきたら早いうちに一日遊びに付き合うって約束だったから」
「仕事あけそのままか」
若いから。
そのあとは女子(エシレちゃんは女子組)だけで絶叫マシンを堪能したり。ショップで使い道の悩ましいグッズを買ってみたりした。
観覧車に行こうかとなったのは健が学校に遅刻せずに済むように早め。
ふと、時間確認にスマホを見れば、着信。
「っあっちゃあ」
菊花ちゃんがほのちゃんに観覧車乗ろうと誘うのを止めてこっちを見た。
「どうかした?」
「んー。ちょっと、職場顔だした方が良さそうで。ごめんね」
緊急トラブルはタイミングが選べるわけじゃないからな。
抜けるねと伝えると、ほのちゃんが「町までタクがいいだろう。付き合うから少し仮眠しろ」と言ってくれた。
「すぐ、解決するといいな」
ちーちゃんがそう言ってくれてホッとする。
「また遊ぼうね。菊花ちゃん、ほのちゃん借りるね」
ぶんぶんと首が横に振られる。
「今日は楽しかった。また遊ぼうね。ほのちゃんしっかり送ってこーい」
加藤さんも大変ねぇ頑張ってねと送り出しモード。
「今日はありがとうございました。頑張ってくださいね」
にこりとエシレちゃんも応援してくれる。
うっし!
即解決を祈る!
だから、この後のトラブルを直接は知らない。




