グループデート 柳本菊花視点。
おー。
ホントにゲームコーナーにいたー。
「飛鳥ちゃーん、一緒にコースター行こー。健は昼準備手伝ってこーい」
「ぁあ?」
ガンくれてる場合じゃないからさっさと行け。
「ほら、千秋、ちょっと、潰れてるから」
「え? ちーちゃん、大丈夫なん?」
「お。行ってくる」
情報を流せば飛鳥ちゃんの反応の方が早い、けど健も即行く気にはなったようでホッとする。
「飛鳥ちゃんは気にしなくて大丈夫。女の子に気を使わせたって思ったら余計落ち込んでうっざいしぃ」
「私、女の子じゃ……」
飛鳥ちゃんは想像して苦笑。エシレちゃんが気にする。
「年下のデート相手心配させるぐらいなら治ったフリするから、今は一緒に楽しもー。午後はゆっくりコースを行ってあげてねー。千秋、体力はないから」
ちょっと安心させれたかな?
それと体調良くないっぽい情報を聞いてた気もするから、ゆっくりコースを推奨っと。
「女の子の方がいいんでしょうね」
エシレちゃんにじっと見られてる。飛鳥ちゃんと視線を交わす。えー、なんか誤解されてる~?
千秋のことは好きだけど、恋してるかって聞かれたら「ない」恋愛対象にしようとは思わない。健はそれ以前だな。
確かに。
「千秋は女の子好きだよ?」
コレはホント。
後腐れない相手と町の外で遊んでた時期もあったみたいだし。
「でもね、男でも女でも気にしないって言ったらたぶん、それもホント。試してあうんなら『いっか』って、軽いとこはあるからさ」
第一おにーさんそっち系みたいだし。
その傾向があるから紬ちゃんが気にするんだしなぁ。彼奴ら話し合いできてるのかな?
「そう、ですか。……あのっ」
薄い青。氷みたいな水色。まっすぐ見られると不思議な感じだなぁ。
「千秋さんの特別って、……その、えっと、……いい、です。ごめんなさい」
意気込んで、言おうとして、挫折する様がなんとも言えない。
泣きそうだし。
「千秋の特別って、鎮? 双子の兄の」
恋愛じゃないけど、特別はどう転んでも鎮か。
「同学年の女子じゃないの? 名前までは聞いてないけど一時、ほぼ週四ペースで電話してたけど? おかげで定額プラン申し込んだしね」
飛鳥ちゃんからのコメント。
千秋。そんな電話してたの。
「あれ? どうだっけ?」
「ダメになったらしいとは聞いたけど、詳しくは沈黙の闇に沈んでるからなぁ」
「ぅうーん?」
応援してた気はするよーな気もするんだけど、なんか曖昧?
「ま、健もちーちゃんもしーちゃんもダメんずジャンルだしなぁ。ほのちゃんもジャンル別ダメんずだと思うし、木野江君もアレ、ダメんずでしょ?」
飛鳥ちゃんの言葉に笑うしかない。否定しきれないんだもん。
でも!
「ほのちゃん、アレで優しいんだよ?」
「優しいからってダメんずには変わんないの。そこに引っかかるのもダメなんやけどね。エシレちゃんはご家族反対しない?」
うー。
優しくて、ちゃんとしっかりもしてるんだけどな。ほのちゃん。
打てば響くように返答が早すぎてうまく返せない、口惜しい!
ちょっとダメくらいが完璧より親しみやすいと思うんだけど、コレ言い訳って言われちゃう?
いやいや、蓼食う虫も好き好きって言うじゃない!
って、誰が虫だぁあああ!?
「反対しないよ?」
エシレちゃんがにこりと笑う。
ハタッと正気に戻る。
「おお、理解ある親御さんだ!」
えぇっとまいのりてぃだからなかなか理解されないジャンルだもんねぇ。
我が子が好きな相手なら反対しないんだね〜。
「二年前、事故で」
空気が、固まった。
「だから、千秋さんがいてくれて嬉しかったの」
ぎゅっと握られた拳が思い詰めてて無茶苦茶痛い。
事故で被害にあったのは親御さんかエシレちゃんか、どっちだ!?
いないから反対されないのか、事故があったから生きてるだけでいいと思われてるのか……、くぅ!
つっこみニクい。
「彼がいたから、外を見ようって思ったの」
ぉお。
恋ゆえの前向き!
がんばれせーしゅん!
どう転んでも前をむいて生きることに積極的になるのはいいこと!
「だから、特別になれなくてもいいかと思って、でも、……やっぱり、気になっちゃって、ダメですねぇ」
泣きそうに微笑まれるとああ!
胸が痛い!
よし!
もうなんでもいい。
「よし! がんばれ! 気にならない相手を必要以上に構わないから! 千秋なんか懐に入っちゃえばなんとでもなるから!」
あ、もしかして、
「私や飛鳥ちゃん、紬ちゃんもだけど、ライバルにはならないから嫉妬は無用よ!」
するとしたら当て馬利用だ!
ほのちゃん相手じゃ使えなさそうだけどね!
祝福されたら泣くわ!
「ところで、フリーフォールとU字コースター空いてるっぽいけど、どっちに並ぶ?」
飛鳥ちゃん、選択肢はその二択なのか!?
「あの、あっちの屋内型コースターも空いてます」
三択からドレがいい!?




