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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2015年夏
762/823

グループデート 有坂健視点。

 




 加藤の高笑いが聞こえるようだ。


「大丈夫? 健」

 実際に聞こえてきたのは飛鳥の声で最悪の気分が少し浮上する、同時に情けなくって落ち込みそう。

 なんだろうこの乱高下。

「……ああ」

「嘘つき。顔色ないよ」

「そっか?」

 ベンチに座って空を仰ぐ。光が目に痛い。

「しかたないなぁ。しばらく休んでなよ。他のみんなはそれぞれに行ってるし、昼に落ち合いましょうって」

 やせ我慢はバレバレで柳本には笑われるし、千秋には心配そうな視線を送られるハメになった。

 俺だけか?

 俺だけが苦手だったのか?

 ムカつく。

「いろいろ乗りたかったんだろ?」

「乗るわよ」

 あっさりと返ってくる。

「ホラートレインとか面白そうでしょ? 地味にミラーハウスとかトリックハウスとか気になるしね。お化け屋敷もあるみたいだし、絶叫系は昼以降に加藤さんや柳本さん誘うわ」

 しばらく後、飛鳥がチョコとバニラの二層ソフトクリームを舐めながら呆れた眼差し。

「お化けもダメだったんだねー。怪談系苦手? 入る前に言えばいいのに」

 うるせぇ。

 俺にだって見栄ってもんがあるんだよ。

「誰だって、ダメなものはダメなんだから無理しなくていいのに」

 ぽんぽんと頭を撫でられる? 叩かれたのか?

「がんばったねー」

 子供にするような仕草じゃねぇかと思う。

 ……笑ってて、言葉が詰まる。

「ん? どうかした?」

 見惚れる。

 きっと、飛鳥以外がそんな真似しようものなら怒るんだろうとは思う。

 ただ、そう。行動するのが飛鳥だから。

「惚れ直す」

「は? へ?」

 俺の言葉を受けて間抜けな表情を晒す様も愛しいんだと感じる。

 他に、その表情を向けさせたくないと思う独占欲。エシレが千秋にまとわりつく他の男の匂いを嫌がったように飛鳥が今着てるジャケットを千秋が着ていたことを俺だって覚えている。

 まぁ、時効なついでに別物も同然だよな。

 千秋が応援してくれてるのも知ってるし。

「なぁ、少しは俺のコト付き合う相手として意識しねぇ?」

「……してたら、ここにいない」

 すとんっと声は平坦だ。

 キッツいなぁ。

 男ってナーバスなイキモノなんだぜ?

「そっか。でもさ、何か出来る仕事を見つけて見せるし、高校だってちゃんと卒業する。そーだな、ついでにあと一年は禁煙禁酒もしとく。そしたらさ、もう少し考えてくれるか?」

 俺を選ぶ理由にできるか?

「期限を切ってそこで終わるなら意味ないんよ?」

 拒否なんだろうか?

 明確には約束にしない。

 そう、だな。

 怖いし、不安だよな。

 期待して裏切られればそれだけ痛いから。

「先のことなんか約束できねーよ。裏切りたくねぇって思うんなら最初から約束しねぇことしか出来ないだろ」

 他の相手にならいくらでも破る可能性のある約束くらい出来る。

 再会のつもりのない相手に「またな」だって、「愛してる。お前だけだ」といくらでも囁ける。だけど、お前には言えねぇ。

「裏切らないって選択肢は?」

「わかんねぇよ。それこそ先のことなんかわかんねぇんだから約束できねぇ。出来るのは、俺が今飛鳥に惚れてて、お前の出した条件だからこそやろうって思ったことと、同時に、出来るに決まってるって言った千秋にこたえてぇだけだ」

 嘘になりそうな約束を、俺は飛鳥にしたくねぇんだ。


 有坂健(おれ)だからと無条件にできると信じてくれる友人(ちあき)に応えたいだけなんだ。




「健、次は、ゲームコーナーで勝負しない? 負けた方がドリンク奢ること!」

「ドリンクぐらい奢ってやるって」

「勝負前から敗北宣言?」

「っざけんな。俺が勝つに決まってだろ」






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